何も考えずに抜くと、ジェンガは崩れてしまうように


人間にはある程度のバランスというものを考えて行動することが必要である













































































BALANCE GAME









































































タンパク質、カロチン、炭水化物その他いろいろ。それらをバランスよく摂取することで、あたし達は健康を保っていられる。もっと言えば、今の地球は自然と人工のバランスが悪いからさまざまな問題が起こってる。そう思うと、バランスっていかに大事かが分かるよね。少なくともあたしは大事だと思う。おそらく世の中もバランスが大事だってことですか。ことですね。はい。




あ、もちろんそれは健康とか地球のこととかだけじゃなくて、自分の身近にある人間関係にも同じことが言えると思う。少なくともあたしはね。








「あ゛ー......」
「何が言いたいの?。その声、変だよ」
「若さがないよ?若いくせに精神年齢50歳以上なんじゃないの?」
「だまんしゃい。菊丸英二」
「..........今、声のトーンが明らかに低くなったよね」
                             







                                     バランス  
そう、例えばこんなバランス。昼休みの屋上にてのあたしたちの雰囲気。



あたしが英二の言葉でいう『訳分からないコト』を言い出し、手を口元に可愛らしく持っていき可愛らしくクスクスとが笑う。そして、英二がにっと口元を上げて俗にいう『余計なコト』を言うから、あたしはぴしゃりと鉄の門を閉めるようにきっぱりと愛想のない声で相槌を打つ。その後、しばらく沈黙が流れ爽やかな風が吹き抜けるごとく、周助がさらりと紛れもない事実を言う。すると、またはクスクスと笑い、英二もきゃらきゃらと笑う。あたしも一応........笑っとく。それでもその笑いが、太陽の温もりと同じくらい温かいからとても不思議だ。



で、そんなバランスってかなり大切。あたしにとって。それがあるからこそ、こうして笑ってられるのだから。この4人で。あたし、菊丸英二、不二周助の36仲良しグループで、笑っていられる時間があたしはすごく好きなんだ。



別に気を使わなくてもいいし、4人でいて心から楽しいと思える。耳に響くのクスクス笑う声とかぱっと目に付く英二の屈託のない笑顔、それを見守るような優しい周助の笑顔。どれもこれもあたしを心地良い気持ちにさせてくれる。そんな人が身近にいるあたしは、なんて幸せなんだろうなんて思うときがある。こんなに幸せでいいのだろうかとも考えるときもある。ま、返事が帰ってきたことはないから、あたしには何とも言えないけれど。



あと、この幸せがいつまで続くのだろうとかも考えてしまう。そんな後ろ向きな発言はあたしらしくないし考えたくもないことなんだけど、やっぱり考えてしまう。幸せすぎて怖いってこういうことを言うのかな?きっとたぶんそうだ。だから幸せすぎると怖くなってくるんだ。現に今のあたしもそうだから、それは間違っていないと思う。たぶん合ってもいないけど。



それに、残念ながら今の幸せを自分で壊すことも出来てしまうから。それは、あたしだけじゃなくて英二にもにも言えること。......周助にも一応言えることだ。あたし達の言葉には、この関係を壊わすことのできる力があって、それを下手に使えば今のような幸せは壊れてしまう。この関係がジェンガのように崩れて、幸せの後の虚しさだけが残ってしまう。望んでいなかったとしても、ね。



簡潔に言えば、あたしたち4人の関係をそれぞれ壊そうと思えば壊すことが出来てしまうということ。言葉という1つの銃弾で、一瞬のうちで太陽が氷に変わる。そう言っても過言ではないかもしれない。








「うぎゃっ!?」
「もう、英二。驚かしちゃダメじゃないー」
「え、そうなの?が驚くのって珍しい」
「アンタがいきなり抱きついてくるからでしょー!!英二」
「だって、全然話聞いてくれないんだもん。だから驚かそうと思って」
「あたしはアンタに構ってる余裕なんかないの」
「全くだね」
「分かってくれるのは周助だけだよ」








突然背中に体重とまた違った種類の温もりがのしかかり、あたしは思わず変な声を出してしまった。そして、叫んだ後気づく。あたしは今、英二に抱きつかれているのだと。そんなあたしは知らない間に深く考え込んでしまっていたらしい。そのせいで、英二に抱きつかれるという日常的なことに驚いた。



でも、それが深い深い穴の底にいたあたしを引き上げてくれた。現実を思い出させてくれた。現実は、こんなに幸せでこんなに温かいものだと。









「そろそろ英二、から離れたら?」
「ほえ?」
「そうだよ、英二。、困ってるじゃん。」
「困ってるというより、ウザいというかー.........。」
「ひどっ!。これは、英二が可哀想だよー。」
に嫌がられた....。」
「英二!ファイトだよ!!こんなのでめげちゃダメだからねっ!」








そろそろ英二の体重を支えきれなくなってきたあたしは、思わず顔をしかめる。確かに英二は華奢だけど、残念ながら男の体重を支えられるほどあたしは頑丈に出来ていない。だってあたしは女だからね。すごい洞察力の持ち主の周助は、あたしが顔をしかめた瞬間を目で捕らえてたみたい。すぐさま、周助は助け舟を出してくれた。それに、うんうんと同意しても英二にあたしから離れるように言った。2人ともすごく優しいのに、あたしから出たのは少しどころじゃないキツイお言葉。



で、それに気づいた時には、もう後の祭りで英二はしょぼんとしていた。そっとあたしから離れた英二は、の傍に行き慰めてもらっていた。そんな英二とはまるで犬とご主人様の様。は励ますように、英二の頭を撫でている。撫でてもらっている英二は........心底嬉しそうだ。英二はすぐに顔に出るタイプだから、あたしにも丸分かり。もちろん周助にもね。








「あ、そーだっ!ねぇ、周ちゃん」
「何?
「あのねー」








は英二を撫でるのを止め、ころっと周助に話題をふった。何をしだすのかなと思い、あたしはじっと様子を窺ってみる。どうやら、は鞄から何の写真かは見えなかったから分からないけど写真を周助に見せているようだ。は、最近写真を撮ることにはまっているらしく、よく何かの写真を取っては同じ趣味を持つ周助に見せていた。



あたしも一度だけの写真を見せてもらったことがある。それは素人のあたしを圧倒させるくらい綺麗な空の写真だった。ほんのりとしたオレンジ色と透き通った淡い紫色が重なって色づいた幻想的な空はすごく綺麗で、よくそんな写真が撮れたねぇと感心したものだ。ほわーんとしているだけど、そういうチャンスは逃さない。人には驚くべき才能が秘められているとあたしは改めて確信した。



そんなことをしみじみ思い出しながら、あたしはふと目を横にやる。ちなみにあたしはまだ若い。それはおいといて、あたしが横に目をやるとふてくされた猫の姿があった。それはかまってもらえず不満そうな顔を隠そうともしない英二の姿のことだ。英二がつまんないと思っているのは、見て分かる。大きくて綺麗な瞳のきらめきが欠けてしまったことが何よりの証拠だ。そんな瞳で、英二は楽しそうに話す周助との2人を羨ましげに見ていた。ついさっきキツイ言葉を言ってしまったあたしだが、あまりにも英二が可哀想にに見えたので、話し掛けてみた。








「英二」
「....ん、何?。」
「いや、つまんなさそーだなって思って」
「うん。面白くないとも言う」
「あー..........そうね。英二にとって面白いわけないよね」
「うん。だって、さっきまで構ってくれてたのにさー」
「アンタって本当に気分屋」
「はは、よく言われる」
「全く。分かりやすいのよ、英二は。はたから見たらバレバレよ?ただ....あの子が鈍いだけで」
「うっ」
「頑張れ、青少年よ」








あたしが英二の名前を呼ぶと、ちょっと間が合って英二はいつもの顔に戻り、あたしの方を向く。声もいつも通りだったから少し安心し、あたしは言葉を繋げた。



英二は本当に正直だから、あたしの言葉を素直に肯定する。ああ、そういうとこ英二らしいなと思って、笑っちゃいけないんだけどあたしはふと笑みを溢してしまう。それにつられたのかどうかは分からないけど、英二もふと笑みを溢す。



英二は正直者、そして気分屋でもある。さっきまでぱっと花が咲いたように明るく嬉しそうな顔をしていたのに今では花が閉じ、夜の暗さを我慢するごとく寂しそうで面白くなさそうな顔。見ていて、全然飽きることがないくらいころころと変わる英二の表情。あたしがうっと詰まるような言葉を言うと、英二は言葉のとおりにうっとなり、口をぱくぱくさせている。それに今度こそ笑えてきたから、口元をあげてあたしはそう言った。その言葉を聞いた英二は、うんとこくりと頷いた。おっしゃー、と小さな声で呟いて手をガッツポーズにして気合も入れていた。そして、サンキューなっ!ともにっこりと笑ってあたしに言ってきた。



だからあたしも笑う。そして、どーいたしましてとおちゃらけた風に返事を返す。心の影を隠し、あたしは光だけを見せようと必死な素振も隠しながら。



.......そう、お分かりのように英二はのことが好き。英二曰く、つい最近意識し始めたとのことだった。そして、それを一番に打ち明けた人物があたしらしい。英二が照れくさそうに言ってきた時、あたしを頼りにしてくれるんだと嬉しくもなった。とにかく、英二からそのことを告げられた時からあたしは英二の応援団だ。頑張れとかしか言うことができないけれど、英二はあたしのその言葉を本当に嬉しそうに受け止めてくれるから、頑張れとしか言えないことに自己嫌悪を感じることもない。



だから、あたしは躊躇いもなく言い続ける。『頑張れ』と。って、は本当にぽわーんとしていて人一倍鈍い子。だから英二は相当頑張らないといけないんだけどね。それにあともう1つの問題点があるし。








、すごく綺麗に撮れているね。まだ始めたばかりとは思えないよ」
「え、そ、そうかな?」
「うん。僕はこの写真が一番好きだな」
「あ、この写真はねー....」








こんな和やかな会話。あたしは、その会話のする方にふと向いてみる。そこにはやっぱり楽しげに話す周助との姿がある。横目で、またふてくされた猫がいるのが見えたけどこの際おいといて。



周助とは写真の話題で盛り上がってるようだ。一つ一つ、丁寧に写真を見て周助は一つ一つ感想を言う。それを真剣に聞いているはなんだか可愛い。そして、周助はふと写真をめくる手をとめた。ちらっと見えたんだけど、一番上には若葉の写真があった。瑞々しくて、今の季節らしい写真。周助はその写真が気に入ったようだ。周助はさらりと笑って、に褒めの言葉を言っていた。



言われたは頬をかぁと紅潮させた。とても嬉しそうだ。周助はたぶんそれに気づいてる、気づいてると思うけど気にしていないかのように、言葉を続けた。それを聞いたはこれもまたぱっと花が咲いたように明るくなった。言葉は人を明るくさせられる力を持つことも改めて実感する。



これが、英二がもう1つ頑張らなくちゃならない理由。それは、が好きなのは周助だということだ。これもまた最近自覚し始めたらしい。からそれを聞かされたとき、あたしの驚きといったら..。しばらく頭が真っ白になって、顔の前で揺れているの手なんて目に入らなかったくらいだもん。それくらい、鈍感なが人を好きになることに気づいたのは珍しいことである。



その瞬間、周助を少しすごいと思った。それと、きっとこれはの初恋だと思うからあたしは素直に心から親友の恋を応援しようとも思った。英二には悪いけど、は大切な親友。親友の恋を応援しないわけにはいけないでしょ。っていうか、それは英二も承知済み。哀れだけど英二、に相談されたらしいんだよね。本当に気の毒な話で、涙を誘う話だよね。これにはさすがのあたしも同情するよ。本当に。









「あ、もうすぐ昼休みが終わっちゃう!!急がないとっ!!」








物思いにふけっていると、の高い声が聞こえた。の目線は自分の腕時計。どうやら、の腕時計は昼休みの終りの時間を示そうとしているようだ。の言葉を聞き、あたし達は教室に戻る準備を始める。



次の授業は確か化学だったなーなんて思いながら、あたしは立ち上がりスカートについたほこりを払った。すると、「じゃ、教室戻ろっか。」と英二は明るく言ってくる。...........でも、あたし分かっちゃったんだよね。声はすごく明るいけれど、本当は化学が嫌でここでサボりたいなーって思ってること。英二の瞳がそう言ってるし。.......ま、サボりは優等生のあたしが許さないから、気づかないふりをしておくけどね。









「どうかした?周助」








あたしが屋上から出ようとした時、周助があたしに話し掛けてきた。ちらっと見るとあたしの前には、英二とが仲良さげに話している姿があり、今回は英二の方を応援してやるかと思ってあたしは周助の方に振り返る。



あたしがどうかしたかと周助に問うと、周助は意味ありげな微笑みを浮かべた。綺麗だけど、綺麗すぎてあたしはホラー映画を見て感じる恐怖と違う種類の恐怖感を覚える。これでも付き合いは短くないから、あたしは悟ることが出来る。



周助がこういう微笑みを浮かべる時は、きっと何かがある。その何かとはきっと言われて嬉しいことじゃなくて、言われて痛いことの方が多い。そのことから推測していくとある程度周助の言いたいことが予想できた。..............うん、大丈夫。心がまえは出来てるよ。









「.............あのさ...」
「だから何?英二とにおいてかれちゃうじゃん」
「その方が好都合。英二とに聞かれたら困るからね。が」
「.........へえー」








ああ、やっぱり



周助は気づいてた。そりゃそうだよね。周助の洞察力はずばぬけて優れている。付き合い短くないからこれも100の承知済みのことだ。ああ、今ごろ気づいても遅いかもしれない。でも、いつかは気づかれると思ってた。周助にはね。だって、周助に隠しとおせる自信なんて最初から持ってなかったんだから。だから、仕方がないことなんだと自分に言い聞かせる。言うなら言ってみなさいよ。と強気にも思ってみる。




っていうか、もう言われちゃったけどね。事実を。









「いつまでそうやって我慢するの?だって....英二が好きなんでしょ?」









.........やっぱり痛いことだった。ってか、周助それを分かっていってるあたりがムカツク。いつまでってアンタ.........そんなの、分かってるくせに聞かないでよね。








「ずっとだよ。これ聞いて、満足した?」








きっぱりとあたしは周助を真っ直ぐ見据えていった。誰が、この幸せなバランス。自分から壊そうとなんてするもんですか。あたしが我慢すれば、幸せを保てる。じゃあ、あたしは幸せを壊すより我慢する方を選ぶよ。



あたしがそんな人間って分かってて聞いてるんだよね、周助。全く。天使のような微笑みと悪魔のような心をもっている男だよ、周助は。








「まだだよ。だって、僕は.......」
「?まだ何かあるの。早く行かないと、マジで授業に遅れるんだけど」
「僕は、が好きだよ」
「..........人の話聞いてないし」
こそ全然人の話聞いてないじゃない」
「そんなめんどくさくなりそうなこと、あたしは聞く耳持ってないから」
「都合のいい耳」
「あたしは都合のいい女だよ」








.............ったく、周助。めんどくさくなること言わないでよ。それに、もうチャイムが鳴っちゃったじゃん。化学教師に怒られたら、周助のせいにするからね?



それに、その言葉。悪いけど、壊す道具になるから...........あたし、聞かなかったことにするから。



そこんとこ、よろしく。周助。

































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