「......本当。僕ってカッコ悪いね。」
そう思わずにいられない、溜息をつかずにもいられない。手を額に当てて、改めてそう口に出しても何かが変わるものでもない。しんと静まり返った夕方の部屋の中で、ただひたすら時が流れるのを感じることしかできないんだ。まだ裕太は寮に入ってるし、母さんも姉さんも帰っていないことがさらに静けさが濃くなり、その静けさの中でただ1人無力な自分を責めることしか.....できないんだ。
この状況を180度ひっくり返せる力を持っているなんて自惚れてないけれど、それでも....ゲームの一員として、何かをしなくてはと焦りすら感じる。
「まずは謝罪から。本当にごめんなさい。あたし、フラれたけど先輩のことまだ好きなんです。迷惑ですけど、こればかりは譲れません」
「ありがとうございました。先輩」
「あたしにいい恋をさせてくれました。あたし、先輩を好きになってよかったです」
人は悲しくなりたくて、恋をするんじゃない。でも、恋をすると悲しさは必ずついてくるモノじゃないだろうか?
............それでも、僕だってそんな風に人を好きになりたかった
好きな人がいる人を好きになっても、そう言える人間になりたかった。彼女が僕を決して好きにならないと分かりきって諦めようとしている自分みたいな人間じゃなくて、真っ直ぐに人を好きになってよかったと純粋に心から言える人間になりたかった。
ありがとうと言える人間になれるものならなりたいよ。
今すぐに....。そしたら、少しは状況が変わっていたかもしれない。きっと...変わっていた。
それに、ごめんなさいとも言えたらもっとマシな状況だったのではないか?
「...........ごめん。、英二......」
この声は決して届かない。その理由は決してその3人と離れているからではない。届かないけれど、届かない場所じゃないと僕はごめんと言えないから、今は許して欲しい。
それに、謝らなきゃと気付いたのは、恥ずかしいけど崩れた直後。...早く気付くべきだったね、全く。
ごめん......。知らない間に...傷つけてしまったみたいで本当にごめん
ごめん......英二。いろいろとしんどい思いをさせてしまって、本当にごめん
ごめん......。君を苦しめることばっかりしてしまって、本当にごめん
そして...........好きになってごめん......
あれから時間はただ流れていった。早く流れるわけでもなく、ゆっくりと流れるわけでもなく。
それでも、あの日のことは鮮明に覚えている。全部....私が悪いんだってこと。みんなは全然悪くないのに、私のせいで今こんなことになったんだ。みんな我慢してたのに、私だけ耐えられないなんて......最悪だよ。応援してくれてた人の前で弱音を吐くなんて......もっと最悪。最悪すぎて自己嫌悪どころじゃ済まないよ。もっと、自己嫌悪よりも醜いもの。
私、これほど自分が自分のことを嫌になったってことない。.......私、どうすればいいの?
.....ダメ。ここで甘えちゃいけないの。自分で考えなきゃいけないのに、他の人に頼ってばっかりでどうするの?...こんなのだから痛い目見ないと気付けない。気付けなかったから、とんでもないことをしてしまったんだ。私はジェンガを崩した負け犬だ。
「..............どう...したらいいのか....もう分かんないよ」
自分で考えろって話だけど、どうしたらいいのか分からないっていうのは事実。....というより、私...まだみんなに話し掛けられる権利を持っているのかな?
あんなにヒドイことをして
あんなに無神経なことを言って
こんなにも....自分のことばかりを考えてる
そんな私が、みんなに話し掛けるのは....図々しい気がするよ。虫が良すぎる話に過ぎない。そして、そんなことを期待する私自身に腹が立つ。
また、あの頃みたいに話せたらいいなあ
私が壊す前より少し前の頃の私たちに.....戻れたらいいなあって
そう願ってしまう私は、なんて.....自分勝手なんだろう。自分で崩しておいて、そう望む。こんな奴、バカにしないでっていう権利もない。バカにされて当然だ
直感が良くなった?――――ふざけないで。本当はもっと早く気付くべきだったんだから
教えてくれてもよかった?―そんなの他人に頼ることじゃない。自分で考えることなんだよ
初恋は実らない?――――..........それは、そうかもしれない
「.........そうだよね。....そうだよ。」
わたし
こんな人間を好きになってほしいと思うのも、我侭な願いだったんだよ。.......周ちゃんが私じゃなくてを選ぶのは当然のこと。だって、は.....本当にいい人なんだもん。いつも私の相談を親身になって乗ってくれたり、励ましてくれたり...がいてくれて良かったと何度も私が思ったくらい、いい人なんだもん。だから...当然。周ちゃんが好きになるのは当然。
.....そしてそれに気がついたのは喫茶店に行った日。と英二と別れた後、周ちゃんと2人で帰ってた時だったんだ。歩きながら、何気ない会話を楽しんでいて話題がの話題になったんだ。
その時の周ちゃんの顔.....どんな顔か分かる?
すっごく優しい顔してたんだよ
周ちゃんは誰にでも、私にも優しいけど私には見せたことのないくらい優しい顔をしてたんだよ
............その時、気付いたんだ。やっと.....
やっと気付いたんだ
でも.....それは
「遅かったんだよね。気付くのが....。もっと早く気付いてたら...良かったのに」
それに今ごろ気付くのも、遅いよね。本当に、遅すぎて笑っちゃうよ。もっと早かったら、私.....まだ諦めがついてたかもしれない。.......でも、何度も言うけど、もう遅い。
ビギナー
初心者なりに人を好きになりすぎた
だから......と周ちゃんのキスシーンを見た時、苦しくて、苦しくて、耐えられなくなって.....酷いことをして、崩してしまったんだ
今まで築き上げてきたモノを犠牲にして.....自己主張を押し付けてしまったんだ
......もう取り返しのつかないことを....してしまったんだ
「あたし、邪魔な所に突っ立ってたよね。本当にごめん!大丈夫?」
もし、私が真っ直ぐに手を差し伸べられる優しさを持っていたのなら....崩すというミスを犯さなかったのかもしれない.....でも、残念ながら
そんな優しさを持っていなくて、そんな自分が....嫌を通り越して、悲しいよ
時の流れが早い、そのことを改めて実感した。俺は、の話だけど。
とにかく早かった。しかも何も過ぎていった日々には存在しない。その間、みんなと一緒にいることはなく、俺は休憩時間の度に1人で屋上へ行ってた。酷い時にはそのまま授業もサボっていた。
....要するに、逃げてたと言う訳だ。教室にいると、や不二、がいる。軟弱男の俺は、とてもじゃないけど気まずい雰囲気に耐えられる神経を持ち合わせていなかった。それに...気持ちが重くてそれを支えるのに精一杯。話し掛ける勇気も持ってないし、余裕も....ぶっちゃけた話なかった。
接触といえるのは1回だけが話し掛けてきた、それくらいだ。それっきりは俺に話し掛けてきていない。は俺と目を合わせようともしないし、不二は同じ部活だけどどこか俺に距離を置いていた。俺も俺で、何も行動しないまま日々は過ぎていった、簡潔的に言えばそういうことだ。
でも、俺だってこのままでいいって思ってるわけじゃない
こうなったのも、全部とはいかないけれど俺のせいだと思う
それに........みんなにつらい思いをさせてしまったことも悔いなければいけない
今までを振り返って....みんなに良くしてもらったことも忘れてはならない
自分の部屋にて、ベットに仰向けになりながら俺はそう思う
だから..........俺は..........
「動かなきゃいけないんだ。何か......しなきゃいけないんだ」
今の状況の中で、きっと俺が一番楽に違いない。そりゃ、俺も苦しいし、つらいよ?だけど、みんなのつらさに比べたら.....比べるのも失礼なくらい楽してると思う
には、頑張らせすぎた。きっと、あの時いつもの笑顔を作るのにたくさんのエネルギーを使ったんだろうな。そう考えると.....いつも、そんなことをさせてしまっていたんじゃないか?もしそれが本当だったら.....気付いてやれなかった俺は、バカだ。というよりバカよりもっとタチが悪い
不二には、無神経すぎた。情けない話だけど、俺が不二に何をして傷つけたのか、何を言ってつらい思いをさせてしまったのかは分からない。でも、事実は変えられない。俺のせいで、不二はつらい思いをしているということ。
には...自分の気持ちを押し付けすぎた。の気持ちを知っていて、自分の気持ちを押さえきれず、を傷つけてしまった。にとってはこの気持ち、迷惑にすぎないのは分かってる。を困らせることも分かってる。....それでもこの気持ちを棄てることはできないから...それは分かって欲しいな、と思うんだけど.....俺の我侭に過ぎないよな。うん
とにかく、だ。俺が言いたいのは.....俺が動かないといけないということだ。それに、俺は...頑張れるよ。というより今まで頑張ってなかったから、頑張れる。
もっと言えば、今頑張らなくて、どうするんだ?俺
「........仲直りしないの?」
すごくしたい。けどさ.....
「......悪いことをしたのなら尚更仲直りしなきゃ、ね?」
........そうだよね。けどさ、の続きなんか言い訳で通用しない
悪いことをしたのなら...謝らなきゃいけない。
.......仲直りしなきゃ、なんだ
「いつまでもこのままじゃ....ダメだって分かってるよね?菊丸君も」
うん。それは痛いくらい、よく分かってる。
いつまでもこのままじゃダメだって........
いつまでもこんな俺じゃ.....ダメだって
「頑張って。きっと上手くいくよ」
――――――――――――――――――ありがとう
「.........よし!」
俺の中で何かが弾けた。それはベットから起き上がる勢いとなった。そして、急いで押入れを開けて中のモノを漁りだす。.....確か、あったような記憶がある。この前、兄ちゃんと部屋の掃除をしていて、こんなのもあったんだなぁって兄ちゃんと言ってたはずだ。うん、確かに自慢の目でアレを兄ちゃんが押入れにしまってたのを見た.....そう、たぶんこの辺....
「....おっ、発見!」
お目当てのモノを見つけ、俺はそれを押入れの中から取り出す。せっかくこの前片付けたところなのにまた散らかしてしまったことはこの際無視。大分前に買ったもんだから...古いなぁ。かぶっている埃も払い落とす。.....まぁ、使うに当たっては問題ないよな。うん
「............決行は明日だ」
善は急げ
善といえるのかは分からないけど、俺的には善だと思うから善は急げということにしておく
......急がば回れ、は俺がずるずると日にちを引き延ばしてしまう恐れがあるので却下
これから
明日............俺たちの運命を....決めようじゃないか....