ゲームが始まる直前の緊張感


それにぴったりな擬態語なんか、思いつかない...そんな気持ち





































































































BALANCE GAME


































































その時、あたしは図書室のカウンターにいた



図書委員というめんどくさい委員になってしまったあたしは今日の放課後、カウンターの当番に当たっていた。と言っても、仕事は全然ないため、かーなーり暇。



だって、うちの学校のほとんどの生徒が部活動に入っている。よって放課後という時間は、生徒達が部活に励む時間。あたしみたいな帰宅部って逆に貴重だから、ここに用アリの人も貴重である。ざっと見ても指で数えるくらいしか人がいないもん



........ぶっちゃけ、さっきから言うようにかなり暇。暇すぎて、カウンターに頬杖をつくあたし



ふと窓の外を見てみると、外はいいお天気.....ほんと、何であたしはこんな部屋の中に閉じこもってるんだろうと思う。こんな日には外で身体を動かして、思いっきりはしゃぎたい。キラキラと光る木漏れ日の中でもいいし、瑞々しい空気に包まれたトコロでもいい。とにかく、ぱぁっと遊びたい!!!



......って言っても...一緒にはしゃいでくれる人はいないんだけどね



.....わぁ、なんてあたしらしくない言葉。でも、咄嗟にぱっと頭に浮かんでしまった事実は消せない。そして、その事実に溜息をつくことしか出来ないのも.....また事実








「.........なんでこんなに上手くいかないんだろうね」








いつも一緒にはしゃいでくれてた人達



その人達がいない



そんな簡単に言えることが、どうしてこんなにも............寂しいんだろう?








「.......ったく、やってらんない....」








世の中、上手くいかないこともある



人がよく口をそろえて言うのを、あたしはよく知っている



そんな分かりきったことが、どうしてこんなにも............腹が立ってくるんだろう?








「..........ちきしょー.....」
















































そんな、その時だった














































その時、僕はテニスコートにいた



まぁ、それは当たり前のことなんだけどね。今は時計の針も放課後をさしているし、放課後は部員が部活をする時間。



というわけで、テニス部部員の僕はテニスコートにいた。とは言っても、軽く打ち合いしているだけで。打ち合いの相手を務めてくれる海堂が返してくるボールを、ただ打ち返していた。何も考えずに、ただひたすら返ってくるボールを打っていた。



この、空間で。テニスコートという言わば、僕たちテニス部の『戦場』で、ボールは僕らの思うがまま僕らの手によって踊らされている。僕が返せばあっちに、海堂が返せばこっちに....ボールのやりとりはどちらかが折れるまで、いつまでも続く。今はただの打ち合いだけど、これが試合になれば折れた方が敗者なんだ.......。理由はどうであれ、ボールを返すことができなかった方が敗者



..........ダメだ。こういう何も考えずにいい時間なのに、何かが僕の頭を埋め尽くそうとしている。....白紙の状態にしたいのに、汚れは消えないし、逆にその汚れは....みるみるうちに広がって、僕は認めずにはいられなくなる。



......そうだ。敗者は........僕だ








「.........っ!!」








思いのあまり、手に力が入ってしまった。加速、そして力の込められたボールはフェンスに当たって、ガシャンと音を立てる。そして、虚しくポトリと落ちて、コロコロと何処かへ転がろうとしているボール。



それが誘うのは、なんとも言えずに静まり返ってしまう雰囲気。テニスコートにいて球出しをしている1年達、隣のコートでアップをしていた2年の部員達、そしてテニスコートの外で見ていた3年の部員達、それらの視線が一気に僕に集められる。もちろん、相手をしてくれていた海堂の驚いたようなその視線もだった。痛い視線と沈黙と、そして今自分がしたことを顧みる。



ヤツアタリ



...........僕はこんなことをするまで、カッコ悪い男だったのか。しかも....同じ部員の仲間の前で








「........不二.....大丈夫か?」








沈黙を破ったのは、大石。テニスコートのフェンス越しにいる僕に、心配そうな声をかけてくれる。それが、僕の罪悪感を一層濃くした。.....大石には何も僕を心配する理由はないのに、それなのに心配をかけてしまった、それほど惨めなことはない。








「ごめん。大丈夫だよ。ちょっと力を入れすぎちゃっただけで」








大丈夫だ。そう自分に言い聞かさなければ、いけない。



たとえ大丈夫じゃなくても、他人に心配をかけては.....ダメだ。



だから、平気なふりをする



.....誰かとは違って下手な演技をどこまで貫きとおせるかが僕の課題








「.......本当か?」
「何だい、大石。僕が嘘をつくと思う?」
「....いや、そんなんじゃないけど....」








大石は本当にいいヤツだ。僕の言葉を信じてくれる。僕を信じようとしてくれている...



でも、それが出来ないのはやはり僕の演技が下手なせい



......ごめん



それでも、僕は下手な演技を貫き通すよ



試すように笑ってみて、ごまかす言葉を平然と言ってのける








「大丈夫。大石が思ってるほど、僕の具合は悪くはないから」








本当に大丈夫なのか、僕........なんて自分の心配している自分が嫌いだ



僕が心配するのは僕じゃない



僕が心配しなきゃいけないのは...彼らなんだ








「ごめん。海堂、続けてくれる?」

















































そんな、その時だった





























































その時、私はというと...屋上で寝転んでいました



放課後という時間、帰宅部の私は何もすることがない。普段なら...ってか、前なら、と他愛のない話を楽しんだり、周ちゃんや英二が部活している姿を見てたり...とかして放課後の時間を潰していた。だって、別に家に帰りたいとは思わないし(だって、親が勉強勉強って五月蝿いんだもん。)学校にいた方が....楽しかったから。



でも、今は違う。私が何もかも崩してしまって、何も残ってない。今まで通りになんて...とてもじゃないけど、できないよ。いや、しないだけなのかもしれないけど....それでも、私はそんなことができる権利はない。そんな甘い話....あるはずはない。



だから、こうして屋上で1人。こうして寝転がりながら、ただ青い空を見ている。そんな暇しているのなら家に帰れば良いじゃんって話だけど...ぶっちゃけさっき述べた理由どおり帰りたくないから。



だから、青い空を一人で見る。誰もいない屋上で。これで青春を感じれれば、どんなにいいだろうか?生憎、この空を見て感じるのは青春ではない。....もっと違うコト。もっと言えば、この空と正反対の気持ち。 



           むこう
澄み切って、遠い未来まで見えちゃうんじゃないかと思うくらい綺麗な空とは対照的なんだ



         むこう                        レンズ
見えそうなのに未来が見ることが出来ないのは、きっと私の心が曇っている



......それが空と対照的と言い切れる、確実な理由だよ








「...........はぁ....」









どんなに溜息をついても








「......私って...最悪だよね」








どんなに過去を反省しても








「.....どうしたら....いいかな....」








どんなに弱音を吐いても



それに...........返事は返ってくるはずはない



ただ、この空に吸い取られ、跡形もなく消えてゆくだけ



形さえも残らない、私の弱い言葉には何の意味がないことを改めて思い知らされた





















































そんな、その時だった




























































































『乱入失礼☆..って、別にいいじゃん!ちょっとくらい!ね、頼むよ?お願い!放送部!』

































































よく知っている人の声が、聞こえてきたのは


































































『コホン。えっと、生徒のお呼び出しをします。今から名前をあげる人はただちに3ー6の教室に来てください』













































































何かが始まりそうな予感がした






















































































































................おいおい、あたしかよ?

























































『不二周助』




























































...........どうして?...君は何をしようとしているんだ?































































































































な、な何?!........私の名前を....どうして呼ぶの?
































































『以上3名の生徒は3-6の教室に今すぐ来ること!.....俺、菊丸英二が待ってるから』























































よし、これでOKだ



帰宅部の生徒の最終下校を告げる放送部員の邪魔をして、めちゃくちゃにらまれたけれど



部活をサボって、後でグラウンド何周待っているかは分からないけれど



今、俺がやろうとしていることに意味があるのなら....そんなの別にどうだっていい








大切なコトは.......もっとあるだろう?








「.........来てくれるかなぁ?」








そう1人呟いて、放送部部室から出る俺



1人の廊下を1人で歩く、この静けさに負ける気はさらさらない



手に持つ箱からガラガラと音を立てているのは.....始まりの合図








「........宣戦布告はもう済んだから.....」








高鳴る鼓動



押し寄せる緊張感



それにも負けてたまるか



少しの勇気で、今何か変えられるのなら......負けてられない






ってか、もう負けない








「ぶっつけ本番だ」








箱を持っていないほうの手を握りこぶしの形に作り、そこにゲームに対する意欲を入れる



そして、俺は....向かうんだ



ファイナルゲーム
最終遊戯の場へ



































NEXT

BACK