「ルールは簡単。このジェンガを崩さないように順番に引いていくだけ。でも、それだけじゃ面白くないから引くたびに自分の本音を一言ずつ言っていくことしよ....んでもって、もちろんこれを崩した人が負け。分かった?」                                                                           





..........成る程ね


















































































BALANCE GAME

ジェンガを守りきれなかったと思い込む女の視点

 































































































                   げんじょう
確かに、あたしも自己中だから、勝敗に納得なんてできないし、負けたままでなんて終わりたくない



それには、2つの理由がある



1つは、勝敗だけがくっきりと形を残しているというのに、他の事は形の線が薄いこと



......はっきり言って、あたしは、ちゃんと全部の事柄に目を向けることが出来なかった。だから、は周助のことが好き、でも、どのくらいかはまだ把握できてない。



英二はが好き、でもどんな気持ちで他の男に想いを寄せてる想い人を見ていたのかは、分かるようで分からない。



周助はあたしのことが....好き、らしい、でも、その想いをあたしに告げた時、何を想って、告げたのか、それも全然知らない。



そんな、曖昧の中、遊戯時間だけは、刻々と時を刻み、結果勝敗だけを残した。その勝敗にあたし達がどれだけ苦しんだのかも、気にせず、ただ現実に勝敗を刻み込んだ。今から思えば、遊戯のルールをよく把握できてない、状況で、結果だけ残るなんて.....納得できるはずはない



2つめは、本当に負けたままで終わりたくないということ。たぶん、あたしの性格上にも問題があるだって、負けたままで終わるなんて、後味悪いじゃん?誰だって。



そりゃ、勝負には勝者と敗者両方存在する。だけど、あたしはそのどちらかを選ぶなら勝者を選ぶよ。もちろん、それはみんなそうなんじゃないかな?負けたい、と軽く言えても、その心は逆に勝ちたいと叫んでるんじゃないのかな?あたしは、そうだよ。負けたい、とは思わなくても、負けてもいいかな、って思うときはある。でも......本当は、あたし勝ちたい。敗北感なんて味わいたくない、あたしが味わいたいのは勝利を収めた満足感。



自己中なのは、分かってる。でも、これがあたしの本音なの。だから、あたし、絶対に何があっても守り抜くと誓っておきながら、守りきれなかった敗者の自分が本当に悔しくて悔しくて、なかったことにしたい。....いや、それは100%、無理だって承知しているけど。現実に刻みこまれて、もうその傷を消すことは手遅れだけど



               ファイナルゲーム
でも、英二が与えた、この最終遊戯



もし、それで、そんなあたしが改められるなら、という僅かな望みを捨てきれない



だから、あたしは



























「.......面白そうじゃん。あたし、やるわ」






























  ファイナルゲーム
この最終遊戯を受けてやる



逃げも隠れもしないし、正々堂々とぶつかってやる。もし、それで負けたなら、もう潔く、あたしは過去の自分を省みて、これからを改めよう



.......負けを負けで終わらす、なんて、あたしの1番許せないこと



もし、それで勝てたなら。それでも、あたしは過去の自分を省みて、これからを改めよう



勝敗によって左右されるのは、あたしの自意識



        これから
それだけで、未来は、がらりと色を変えるから



................どうせなら、色鮮やかな未来が待っていると、嬉しいなぁ








「......良かった。ならそう言ってくれると思ったー」
「当たり前。....望むところなんだから」
「わお、闘志溌剌。怖えー」
「まだまだ序の口よ。.......ところで、周助とは?」








あたしが、英二に闘志溌剌なことを、存分に分からせ、それから.....話を唐突に周助とにふってみる。さっきから、あたしと英二の2人だけで盛り上がろうとしているから、それはどうかなって思って。



案の定、あたしの突然話をふられた周助とは、すぐに驚きの色を顔に浮かべた。はおどおどし、周助は表情を変えず固まったまま。.......たぶん、今、心構えをしているところなんだね。きっと



だって、あたしもそうだけど、周助とは英二からの申し出を断るなんてできないこと、ちゃんと分かっているだろうから








「........分かった」
「うん.....」








逃げられないって、分かってるもん



あたしは、話をふった本人が言うのもなんだけど....少し、苦い思いをした、2人の表情を見て。観念したように、綺麗に笑う周助。こくんと、暗めな表情をして頷く。英二もそれを見て、感じたのだろう。あたしをちらりと見て、前を見て、そして苦笑した。



あたしも、英二と同じような想いに駆られたが、ここは拳をぎゅっと握ることで、抑えて、心の奥にしまいこむ。あたしは、椅子をひき、ドサっとその上に座った。も、周助も、あたしに倣う。....本当に、なんか申し訳ない気持ちになった



       ファイナルゲーム
だけど、この最終遊戯



この4人でやってからこそ、初めて意味を成すものだから








「...........じゃあ、始めようか。」








その英二の一言で、ゲームは始まった

































































「じゃ、まず俺からね!.....本当にごめんな」








ゆっくりと、英二は引いた。まだ最初だから、全然倒れる気配もないっていうのは当然のことで。きっと、あたし達も最初はこんな状況だったから、これから崩れるってことに気付かずにいたんだね。そして、英二の言葉は、あたしの最も言いたかったこと。これで、何かが変わるってほど力を持つ言葉じゃ、ないけれど、それでも言いたかった。ごめんって








「って、何よ。いきなり....あたしだって...ごめんだよ」








そんな動揺を隠して、あたしは引いた。思ったよりも指が震えて、もう崩してしまいそうって思った。けど、案外今のところジェンガは頑丈だ。びくともしなかった。ああ....それでか。あたしが油断してしまったのは。頑丈で、少しのことじゃびくつかないほど強い、と思い込んでいたからあんな過ちを犯してしまったんだ。.....本当にごめんね、としか言えない。そんなあたしを許してとはいえないから、この言葉を聞いてほしい








「どうして2人が謝る必要があるの?...謝らなきゃいけないのは間違いなく僕でしょ?」








周助は淡々とそう言いながら、そっと綺麗な指を伸ばした。...今まで、あたしは彼のことを知ろうとしなかったけど、今は違う。その淡々とした口調の裏側に隠してある、本当の気持ちを知りたいと思った。別に、興味本位とか、その他諸々の感情とかじゃなくて、ただ純粋に知りたいと思った。.....何であたしは今まで知ろうとしなかったのかな、周助の感情。....苦しくない、なんてことありえないのに








「違う。一番謝らなきゃいけないのは...私。本当に.....ごめんなさい」








もう、この教室の空気に溶け込んでしまいそうなくらい、の弱弱しい声。だけど、そのジェンガを引く指は、誰よりも細くて、誰よりも強く見えたのは、あたしだけだろうか?引く時のの表情この4人の中で、1番、強いとあたしは思う。絶対に、負けない、というオーラがすごく伝わってくる。そのごめんなさい、に込められた気持ち、は、どんな気持ちなんだろう?








「....何だよー。みんな、最初に言う言葉は同じってこと?」








英二はははっと笑い声を漏らしながら、そう言った。...まだまだジェンガは崩れる気配はない。みんな、最初に言う言葉は同じ。そうかもね。いや、違った。『そうだったね』








「みたいだね。少なくともあたしはそうよ。最初に言う言葉だけは『ごめん』って決めてた」








そうよ。だって、『ごめん』しか、ないもの。それを、英二が勝手に最初に言っただけだっつーの。......それに、ジェンガをひくとき、固いとこじゃなくて、簡単に抜けそうなとこを探してしまうことにも、『ごめん』








「僕も。....ただ、謝って許されるとは思わないけど」








謝って許されることと、そうでないこと。その境目はどこだろう?あたし、周助がしたこと、別に責めてないよ。あたしのせいで、周助を苦しめたし......でも、そう言った周助の気持ちは分かるかもしれない。他人を悪いだなんて、責めれないし、責めたくもない、自分が悪いのは事実.....だから、その罪を自分が被ろうとしているんだ








「うん。そうだね。.....でも、それでも謝りたい」








もきっと、同じ気持ち。それでも、謝りたいと思うのは、どうしてだろう?どこかで、謝罪の言葉を言えば、罪が薄れるかもしれないっていう期待が自分の見えないところにあるのかもしれない。だからこそ、言ってしまう、この言葉。.....悪くなんて、ない








「......俺もみんなと同じだけど。謝ってたらキリがないから、別のことにしない?」








それは英二だって、同じこと。きっと、英二ももっと謝りたくて、それでも他に言うべきことがあると、言う。....英二は、強いね。すごいよ。最優先させなきゃいけないことを知っている








「あ、それは一理アリね。ってか、何を言えばいいのさ?」








そう言いながら、あたしはジェンガを引く。と、その時、初めてジェンガが揺れた。あたしは思わずびくっとしてしまう。きっと、あたしも同じことをしてしまったと思うと、心拍数がだんだん多くなってくるのを感じた。でも、平静さを装って、そのまま続ける。そう、あたしの場合は言葉だけどね........。それに....何を言えばいいのか分からない。甘えるつもりはないけれど、本当に何を言えばいいのだろうか?......たくさん、ありすぎて、分からない








、僕に言いたいこと山ほどあるんじゃないの?......英二も、も」








確かに、周助には言いたいことが山ほどあるわ








「私は....言いたいことありすぎて、今は...言えない」








あたしと、同じ。その気持ち。言いたいことがないわけじゃない。ありすぎて、言えないんだ








「俺は...不二に謝りたかった。俺の無神経さが不二を傷つけてしまってたこと...」








傷つけて、傷つけたあとに思い知ることがある。英二は、きっとそうなんだ








「あー、そうね。周助に特に聞きたいことがあった。周助、どうしたの?」








あたしの番が回ってきた。さっきみたいにまた揺れたらどうしよう、と少し怖くもなったけど、そんなことも言ってらんない。勝負に強くあらなきゃ、この緊張感の渦に巻き込まれたら終わりだし。それに....周助に聞きたい。ものすごく聞きたいことがあるんだもの








....どうしたって何を聞いてるのか分からない。それに、英二。英二は無神経なんかじゃない。僕は英二に傷つけられたんじゃなく、勝手に英二に対して妬みの気持ちを抱いてただけなんだよ。....あと、。ゆっくりでいいから...。」








今、少しまた揺れた気がした。でも、周助の表情には戸惑いの色なんてこれっぽっちも見られない.....素直に凄いと思った。少し揺れただけでもびくついてしまった自分が幼く感じた。それに......しまった。ちょっと抽象的に言い過ぎたかもね。どうしたかの『どう』の部分を言ってないもの。さすがの、周助も、分からなかったのかな?ってか、分かった方がすごいけど。妬み.....人間ならやっぱり抱いてしまうものだよね、人を羨ましく思ってばかりしてしまう。自分には羨ましいだなんて思ってもらえる要素なんてどこにもないから、余計にその黒は濃くなる。
.....って、これはあたし論だけど








「....ありがとう。周ちゃん...やっぱり優しいね。優しいのは...英二にもにも言えることだけど」








が今、かすかに笑みを溢した。ふっと、優しく笑うの表情。ああ、すごく久しぶりだ。見ていて本当に心が和む。それは、前と変わらず、今もそう。.......あたし、知ってるよ。優しく笑える人が、本当はものすごく優しいんだってこと。あたしなんかよりも、の方が優しい。優しい人は、心がとっても繊細で、だからこそ、抱え込まなくていいものを抱え込んでしまう。抱え込まなくても、いいんだよ、とどうしてあたしは言ってやれなかったのだろうか?








「妬み?...ああ、それはぶっちゃけ俺もだから。プラスマイナスゼロでなしにしよう..?...も十分優しいよ?だから俺は......。うん、ごめんな。本当に。」








人を妬まずにいれる、人間なんて、どこにもいないから。英二のその迷いのない瞳は、そう言ってるように見えた。確かに、あたしもそうだと思う。プラスマイナスゼロに出来る感情かはおいといて......それに、その言葉。その沈黙。その空間には、何があった?








「周助なら分かると思ってあえて言わなかったんだけど、ね。単刀直入に言うわ、どうしてあたしを攻撃の的に絞ったの?....ちなみにあたしは自己中で優しくないからね?」








はっと気付くと、また自分の番が回ってきた。慌てて、引く。もちろん冷静さを忘れずに。.....もう油断してられなくなってきたね、うん。いや、もともと油断なんてしちゃいけないんだけど。攻撃の的、言葉は悪い。でも、それしか思いつかなかった。だって、周助が自分から接触を持ちかけたのは....たぶん、あたしだけ。周助に聞きたいこと、まずそれが挙げられる。そして、そんな残酷なことを聞こうとする、あたしは、本当に優しいだなんて、とてもじゃないけど...言えない








「英二、残念だけど僕の妬みの方が黒くて、プラスマイナスゼロになんてできないと思う。それに...、攻撃してるつもりはなかった。ただ....自分を必死に守ってたのは事実。......そんな自分だけを守る奴なんかに優しいって言葉は不似合いなんだよ、








              かお             かお
そう言った時の、周助の表情。すっごく悲しそうな表情してる。英二と周助の妬みの黒さ、だなんて見たことないから、比べられないけれど....あたしも周助と同じで、妬みをプラスマイナスゼロだなんて、できないと思う。あたしだって、妬みを抱いてる、あたし自身は2人よりもそれは黒いと自分で思ってる。....プラスマイナスゼロになんて、できないんだよ。黒と黒じゃ......プラスマイナスゼロにするには、反対の白で中和しなくちゃいけないから.....。ごめん、分かってる。攻撃してるつもりじゃない、ってこと。....だけど、自分を守ってた?自分を守るだなんて.......当然のことじゃない。自分は自分しか守れないんだから。それを....周助は責めてる?......そんな、悲しいこと、しないでよ








「そんなことないもん。似合うとかそういうのじゃなくて、本当にみんな...優しいんだもん。英二は謝る必要はないよ。謝らなきゃいけないのは...私のほうだから。それに....は自己中なんかじゃない。だからこそ...自分を守ろうとしなかったんだよね?」








の震える指、それはさっきのあたしと同じ、崩すのが怖いんだ。現に、今、が抜いた後、揺れた一瞬、恐怖の色が見えたけど、それを抑えては言葉を続けた。まるで、言わなきゃ、ダメだというように、その口調は震えてたけど、強いものだった。もきっと、周助と同じで自分を責めてる。....まぁ、人のことを言えないかもしれないけどね。それに、あたしが...自己中なんかじゃない?どうして?あたしは、ただ自分が強いと思い込んでいたから、守る必要はないと思ってて。本当に守りきらなきゃいけないものを守りきれなかったヤツなんだよ?それなのに....自己中じゃないなんて、そんなこと、ありえない








「......話変えて悪いけど、なんか、もしかして俺の知らない所でいろんなことあったんだ?」








そっと、英二がジェンガに手を伸ばす。ガラス細工に触れるかのように、慎重に。それとともに言葉も発した。自分が知らないこと、それが何だか寂しくて、その憤りは堪えることは難しい。それでもそれを堪える、英二が、本当に.....








「そうみたい。あたしも知らないこと、たくさんありそうだわ」







自分が知らないことがたくさんある、なんて寂しいことだろう?








「僕もそう思う。まぁ、僕の場合周りを見てなかったとも言うけどね」








ちゃんと見ていなかった自分が、本当に恥じるべきだという、後悔も同時に感じる








「....全部、私の思ってること言われちゃったよ」








そんな、気持ち。簡単に言葉で表せるものじゃなくて。表せたとしても、その言葉の数は少なくてどう言おうか、困るそんな気持ち








「さぁ、そろそろみなさん自分の気持ち言う頃じゃないですかー?もうグラグラしてるし」








でも、そんな、気持ちを言葉で言わなきゃいけないときも必ずあって.......だって、もうジェンガは英二の言うとおり、グラグラしている。触れてもないのに小刻みに揺れていて、ゲームオーバーはもうすぐ迫ってきている








「もしかして、それが狙いだったの?英二」








ゲームオーバーの前に言わなきゃいけないこと、絶対にあたし達はあって......その言葉、結構身近に溢れている、定番な言葉だったりしちゃったりね








「なるほど、ね。一番の本音を言わせたかったんだ?...で、言いたかったんだ?」








でも、その言葉は重くて、あたし達が形にすることを怖がり、言葉にすることを、躊躇った








「.......うん。全ての始まりの根拠のことだよね?」








ゲームの始まりのきっかけとなって、この感情








「そう。.....俺から言わせてもらうと....俺は、が好きだよ」








恋というこの感情








「あたしは、そんな英二が好きなんだけど?」








本当はもっと複雑な想いがあたしの中にも、みんなの中にも絡まりあってるはず。それを人々が簡単に表した言葉、それが『好き』








「僕はそんなが好きだ」








難しいものだけど、難しく考えることはなかったんだ。余計、絡まって、分からなくなるからね。あたし達は、まだ幼すぎて、絡められた想いを解くことができない。なら、いっそ、絡まったままでも成り立つ言葉を言おうじゃないか








「.........私は....そんな周ちゃんが好き」








『好き』



この気持ちは、押さえきれない



たとえ、想い人の『好き』の矛先にいるのは、自分じゃないとしても、好きなんだ
























































この気持ち、好き、としか言えないんだ






























































「わぁ、見事にバラバラじゃん。なんか、ここまでくると可笑しいね」








ふと、あんなに険しかった英二の表情が緩んだ。もう、ゲームオーバーも迫っている時に、この笑み。ったく、もっと緊張感を持ちなさいよね....なんて、言いたい所だけど、あたし、言えないや。どうしてだろう?もうすぐ、崩れるかもしれないっていうのに.....逆にほっとしているだなんてどうかしてる








「....そうね。本当、可笑しい」








可笑しくて、つい、笑ってしまう。崩れそうなジェンガに手を伸ばして、すっと慎重に抜いてみる。本当にグラグラしていたけれど、全然、怖くなかった。かなり、不思議なことだけど








「....よくこんなに上手く出来たもんだよね。...って、、泣かないで」








周助も笑う。いつものように。あたしも、そう、思うよ。上手く、矢印を噛み合せなかったように仕組んだものだわ、恋愛の神様は。.....ま、実際には神様なんて関係ないけどね。周助が抜いた時、大きく揺れた。でも、崩れなかった。周助の表情にも恐怖の色なんて見られないっていうより、結構もってるよね。このジェンガ。そして...周助の言葉に、の方を目をやると.....本当に泣いている








「.....ごめ....で、でも、何か、ほっとしちゃって....」








手で一生懸命涙を拭う。そんなを見ると、余計に口元が緩んだ。きっと、は今のあたしと同じ気持ちなんだ。ただ、あたしは笑いが出て、は涙が出ただけ。....安心したという点に関しては、全く同じ。そう思うと、さらにさらに自分の表情が緩んでるのが分かる.....ってか、すげー。こんなにもグラグラしている、ジェンガをいとも簡単に抜いてしまった。恐れず、に。








「ってか、もうグラグラしてて崩れそうじゃん。....言い出しっぺが負け犬かよ」








さすがの英二も、ここで弱音。でも、その表情は、こんなにも柔らかい。少し不満そうな表情をして、それでも、明るい声で言う。......今、あたしは気付いた。英二は、本当は負けたまま終わらせたくなかったんじゃなくて、勝敗にこだわりすぎたまま、終わらせるのがイヤだったってこと








「あー、もういいよ。負け犬で。だから、ごめん、ルール破りでもう一言言わせて」








そう言った、英二は、どこか、本当に負けてもいいよ、という表情で。その声が、それでも挑戦的だった



そして、次の言葉は












































「俺らって、崩れたままなの?」








































そして、英二はジェンガに手を伸ばす



それをまるでスローモーションを見るかのように、見つめながら、あたしは思った









.........崩れたまま........









.....そんなのでいいはずない



しかも.........どうして、あたしは、気付かなかったんだろう



そうだよ、気付かない方がおかしいよ













































ガッシャァーン
















































「「「「あ」」」」


































重なる声と、重なる手




重なる声は、なんとも意外でびっくりしたような声



重なる手は......目の前のジェンガを崩した





そう、あたしの手も、周助の手も、の手も、英二の手も....ジェンガを倒したんだ









「.......これって、もしかして」
「そうね。みんな、考えることが同じだったってことかもね」
「それに....英二だけ、負けさせないよ」
「うん、今、やっと気付いたしね」









みんなで目を合わせる



机の上だけでもなく、床にも散らばったジェンガを見て、笑い、そして、笑う



遅いかもだけど、気付けたことが、とても大切なことだから、心から良かったと思う



もうあたりは薄暗い、それでもここだけはとても光溢れているような教室の中であたし達は理解したんだ










長い、長い、道を遠回りしたけれど、やっと、辿り付いたんだ
























「.........崩れたまま、ってのは、俺たちが、怠けてたんだね」
「本当。どうして、気づかなかったんだろう?」
「考えてみたら、本当にごく単純なことだよね。だから、気付きにくかったのかもしれないけど」
「でも、気付けたから、それはそれでいいと思うよ」
































ファイナルゲーム
最終遊戯を通じて、あたし達はようやく本当の勝敗を把握したんだと思う
ウィナー  ルーザー       ゲーム
勝者とか敗者はいない、この遊戯



そして、崩れたものは.....また、新しく1から築けばいいってこと



ジェンガは崩れたままじゃない
                   ゲーム
新しく積み上げれば、また新しい遊戯を始めることが出来るんだ





















NEXT

BACK