「ルールは簡単。このジェンガを崩さないように順番に引いていくだけ。でも、それだけじゃ面白くないから引くたびに自分の本音を一言ずつ言っていくことしよ。 ......んでもって、もちろんこれを崩した人が負け。分かった?」
そんなことしなくても、誰が負けたかはっきりしているのに
BALANCE GAME
自分が土台を脆くしていったと思っている男の視点
別にもう今更、って感じもしなくもない。だって、負けたのが誰か分かっているから。それは負けたままで終わりたくない、という英二ではなく、や、でもない。....そう、僕なんだよ
僕だって、負けたままで終わるなんて、いいことだとは思わないけれど...負けは負けだ。その事実は変わりない。そして、僕は負けを認めよう。負ける、僕だってそれは嫌だけど、事実は認めければいけない。潔く負けを認める心、それは必要なんじゃないか?
......なんて、言うのは、僕が弱い、ってことだよね
「.......面白そうじゃん。あたし、やるわ」
みたいに、そんなきっぱりと、この勝負を受ける、なんてとてもじゃないけど言えないよ。.....心の在り方が全く違うのだから。そんな、こと、言えるはずがない。.........言いたい、とは思うけれど
うん....そうなんだ、そうなんだよ
この世には、主に2種類のタイプの人間に分けられる
1つは、弱いネズミのように、頑なに必死に自分を守って生きようとする人間。何か、自分を守ってくれるものを常に求め、強いものに縋ろうとする。....他人に必要とされたがるんだ。そして自分の心にはバカ正直で、怖いと思ったらどこまでも怖く思ってしまい、苦しいと思ったらどこまでも苦しいと感じ、逃げたいと思ったら.....本当に逃げ出したくてたまらなくて、逃げ出してしまう。恐怖に駆られたら、すぐに身体と心を強張らせ、怯えてる。そんな姿に、心を揺らがせるものが多いのかもしれない。だから、守りたい、だなんてそう思ってもらえるのかもしれない。....これが、ネズミの思惑だってことに気付かずに
もう1つは、強いライオンのように、自分より他人を優先して、その他人の幸せを心から願う人間。自分は強い、だから、守ってもらう必要なんてないと、頑なに守ろうとするものを拒否して、自分の意志を貫く。多少の恐怖や困難なんて、気にするまでもない。立ち向かえば、壊せることを知っているから。逃げずに目の前にあるモノを受け止めようとする、それがそんなタイプの人間の誇りなのかもしれない。その姿はとても立派で、見ていて.....痛くなる。自分を犠牲にしてまで、守る必要のあるものって、存在するのだろうか?自分を犠牲にして、何のメリットがある?自分が存在しているからこそ、意味があるもので。それなのに、そういうタイプの人間は、何故か、自己犠牲の道を選ぶことの方が多い。どうしてだろう.....?
......ああ、そうか
自分を犠牲にせずに、守れる自信が、あるんだ、きっと
「......良かった。ならそう言ってくれると思ったー」
「当たり前。....望むところなんだから」
「わお、闘志溌剌。怖えー」
「まだまだ序の口よ。.......ところで、周助とは?」
その自信も影響して、自分自身が傷つけられていることに、気付いていないだけなのかも
僕は、そうぼんやりと思った。そして、心の中で、あながち外れてはいないんじゃないか、って思う。目の前で、英二と会話をするどこまでも強気な彼女を見て、そう思った。そして、心のどこかから湧き出てくる感情に吐き気を覚える。....本当に、僕はバカな奴だ。頭では分かっているくせに、それなのに、僕の行動は正反対のこと。は、そんなこと望んでないのに。勝手に、そう解釈して.....最悪だ。
そんなことを考えていると、不意に彼女の声が僕の名前を呼んだ。はっと我に戻ると、彼女の視線は僕と、に向けられていた。彼女の瞳に映っているのは、僕だけじゃないと分かっているのだが、何故か自分だけに向けられているという自惚れ、といきなり話をふられた驚愕と、得体の知れない気持ちが交差して、奇妙な錯覚を引き起こす。
形になりきれてない錯覚は、僕を支配し、動きを制御する。動きたくても動けない、もどかしさに、その真っ直ぐな瞳から反らしたくても、反らせない、そんな、苦しさ。....そうだよ、僕はさっきの話でいう、『ネズミ』だよ。恐怖に立ち向かえず、すぐに逃げ出したい、と思ってしまう弱い人間だよ。『ライオン』に強く憧れ、だけど『ライオン』になれないって分かりきってるから、なんの努力もせず、ただ羨ましさだけを抱いてた、そんな小さな人間。それは、僕自身も、分かりきっている、事実
もし、それが事実じゃなければ僕は、こんなこと思わないだろう
今すぐに、逃げ出したい、って
ゲーム
負けると分かっている遊戯になんか、やりたくないって
.....一度味わった敗者の味を、もう味わいたくないって
惨めになんか、なりたくないんだ
苦しい思いをするのは、もう嫌だ
敗北感なんて、感じたくないんだ
それなら、いっそ、このままで、って思ってしまうんだ
.......バカにしたけりゃ、バカにすればいい
どうせ、僕は『ネズミ』以外の何者にもなれないんだから
..........それも、また、事実だけど
でも........
「........分かった」
「うん.....」
分かってる、分かってる、分かってる
そう自分の心に言い聞かせる。ぐっと、誰にも見えないように、拳を握り、その思いを頑ななモノにする。....そう、何度も言ってるけど、本当にちゃんと分かってるよ。
ファイナルゲーム
この最終遊戯から、逃げられないってこと
逃げたいけれど、逃げられない。逃げては......ダメなんだ
言い方は、悪いけど、僕は諦めたように、承諾した。も、きっと僕と同じだ。こくんと頷く。俯いており、その顔に綺麗な髪が覆い隠してたから、残念ながらその表情はよく分からなかったけど。は、そんな僕達を見て、こくりと頷き、すでに、英二がセッティングしたと思う椅子に腰をかけた。僕も、同様、椅子に座った。もちろんも。.......ああ、今更ながら、変な緊張感が込み上げてきた
「...........じゃあ、始めようか。」
ゲーム開始の合図は、そんな英二の一声
「じゃ、まず俺からね!.....本当にごめんな」
英二は、そう言いながら、ゆっくりとジェンガを抜いた。まぁ、最初だから、全然崩れる気配のカケラすらない。まだ余裕だ、なんて思ってしまったから、油断していたんだね。ジェンガと僕らの今までを重ねて、そう思う。......油断は禁物なんだ
「って、何よ。いきなり....あたしだって...ごめんだよ」
少しだけ、笑みを溢して、は目の前のモノに手を伸ばした。そして、ポツリと呟いた、英二と同じ言葉。『ごめん』って、言葉。.......どうして、なのかな?
「どうして2人が謝る必要があるの?...謝らなきゃいけないのは間違いなく僕でしょ?」
どうして、悪いことなんて、全然してない、つまり、謝らなきゃいけないことなんてしていない英二とが、『ごめん』の言葉を言わなきゃいけないのか?....1番言わなくてはいけない、人間はこの僕なのに。それなのに、僕は『ごめん』という一言が言えないんだろう?そして、抑揚のない声で言ってしまう、自分が本当に嫌だ。ジェンガを抜いても、その事実は変えられない
「違う。一番謝らなきゃいけないのは...私。本当に.....ごめんなさい」
か細い声で、が言った。そして、ジェンガに伸ばした指は、細くて、すぐにでも折れそうだった。でも、それは無理だな、と瞬時に思った。その指に込められた強い感情に気付いたから。それは、表情からも分かったし、そのか細い声の裏側からも分かった。1番分かりやすかったのは、の言葉『ごめんなさい』に込められたの気持ち
「....何だよー。みんな、最初に言う言葉は同じってこと?」
英二が、くしゃっと髪を梳きながら、目を細めた。そして、ジェンガを抜く。その後の表情は心からほっとしたような表情だった。.....うん、僕は言ってないけれど、みんな、同じ言葉を言ってたね。『ごめん』の言葉。そう、皮肉に思ってしまう、ああ、やっぱりダメだ。みんなみたいになれない
「みたいだね。少なくともあたしはそうよ。最初に言う言葉だけは『ごめん』って決めてた」
.....疑問の色が濃くなる。だから、どうして、謝らなくていい人が謝る必要がある?
「僕の場合は.......ただ、謝って許されるとは思わないけど」
この言葉を言った後、はっと気付いたことがある。.....それで、か。さっき、みんなみたいに『ごめん』の言葉を言えなかった理由は。....そう、僕は謝っても許されないことをしたんだ。心のどこかで、こんな思いがあったことに、今気付いた。謝っても許されない、つまり、言うだけ無駄だって思う心。.....最悪の下があったなら、間違いなく今の僕はそうだろう。こんなこと思うなんて、バカ以下だ
「うん。そうだね。.....でも、それでも謝りたい」
それでも、謝りたいと思うは、なんて素直な子なんだろう。純粋にすごい、と思う。許されないなら、謝ることが無駄だと諦めている気持ちが心の片隅にある、僕は、改めて弱いと感じさせられた事実は、いっそ色が黒くなる。そして、色が染み付き、もう....手遅れとなる
「......俺もみんなと同じだけど。謝ってたらキリがないから、別のことにしない?」
この、言葉にどれほど僕がほっとしたか....謝りたくても謝れない、謝れたとしても、声の届かない場所でしか無理な僕にとって、1つの救いである。....そう、思ってしまうのは、僕が醜くて、どうしようもない人間だということを強調しているのにすぎないけれど。......そんな、力強く、ジェンガなんて抜けないよ.......
「あ、それは一理アリね。ってか、何を言えばいいのさ?」
..........言いたいこと、山ほどあるくせに、そう思う反面、言いたいことがありすぎて言えないのかな、とも思う。ジェンガが少し揺れて、その時のの見開いた瞳を見て、そう確信する。なら......
「、僕に言いたいこと山ほどあるんじゃないの?......英二も、も」
まず、僕に言葉を向けてみてよ。僕の他にも、英二にも、にも言いたいことがあると思う。特に、英二には.....伝えなきゃいけないことがある。だけど、1番言いやすいのは、絶対に僕だと思うから。...どんな言葉だっていい、傷つくような言葉でも、残酷な言葉でも、君の言いたいことを聞かせて欲しい。それは、英二、にも言えることだけれど....特にの言いたいことが....聞きたいんだ
「私は....言いたいことありすぎて、今は...言えない」
そう言って、悲しげに睫毛を伏せる。言いたくても言葉にできない、もどかしさ。たくさん言いたくて、でもどう言ったらいいのか分からない、途方に暮れる思い。痛いほど、よく分かる。でも、僕より痛いのは...だ
「俺は...不二に謝りたかった。俺の無神経さが不二を傷つけてしまってたこと...」
......何言ってるの?どうして、英二が僕に謝らなきゃいけないの?普通は逆だろう?英二は、無神経なんかじゃないし、逆に気を使いすぎて....壊れてしまいそうなのに。僕が仮に傷ついたとしても、それは英二のせいではなく....自分のせいだ。自分で自分を傷つけて、苦しむ....本当に愚かだと思う。でも、それは自業自得だと受け止めてるから.....勘違いなんてしてないよ
「あー、そうね。周助に特に聞きたいことがあった。周助、どうしたの?」
........................どうした、なんて、簡単に言えないよ。僕の中で、たくさん起こりすぎて
「....どうしたって何を聞いてるのか分からない。それに、英二。英二は無神経なんかじゃない。僕は英二に傷つけられたんじゃなく、勝手に英二に対して妬みの気持ちを抱いてただけなんだよ。....あと、。ゆっくりでいいから...」
.....僕の番が来た。ゆっくりと手を伸ばして、ジェンガを抜く。少しグラついたけど...それを怖がるよりも、言わなきゃいけないことがある。、心の準備というものをさせてほしい。言ってほしいとは言ったけど、自分が何を言えばいいのか、まだ準備は出来てないんだ。英二、君には本当に悪いと思ってる。彼女の想いの矛先が君に向いたのは、決して君のせいではない。...いや、君があんまりにも魅力的で太陽みたいな存在だからだ。その太陽を羨ましがってばかりいて。...それでも、君は、こんな僕のことを気にかけてくれた。これ以上のことはない。だから、決して英二は無神経ではない、これははっきりと断言できる。むしろ、無神経は僕だ。、出てこない言葉を無理に言葉にしようとしないでね?それほど苦しいってことはないからは十分もう...苦しみすぎた。僕のせいも、ある。だから、ゆっくり焦らずに、そしてどんなことでもいいから、言葉を聞かせて欲しいんだ
「....ありがとう。周ちゃん...やっぱり優しいね。優しいのは...英二にもにも言えることだけど」
ありがとう、と儚げに微笑む。君が1番優しいよ、と言いたい。それに、とても強い子。儚げな微笑みだけど、「ありがとう」と言えるは、強いと思う。その言葉が僕に向けられているなんて、なんて幸せなことだろう。何にもしてないのに、むしろ重荷になってしまったのに。それでも、その言葉で心が温かくなったのは事実....僕の方こそ、ありがとう
「妬み?...ああ、それはぶっちゃけ俺もだから。プラスマイナスゼロでなしにしよう..?...も十分優しいよ?だから俺は......。うん、ごめんな。本当に」
どうして、そんな綺麗な言葉を言えるのだろうか?プラスマイナスゼロだなんて.......。僕は出来ないよ。出来ることならしたい、けど、出来ないよ。何故なら、僕の妬みの方がとてつもなく黒いから
「周助なら分かると思ってあえて言わなかったんだけど、ね。単刀直入に言うわ、どうしてあたしを攻撃の的に絞ったの?....ちなみにあたしは自己中で優しくないからね?」
ごめん。....分かるよ?分かるけど、さっきすぐに答えられなかったのは、僕の弱さのせい.....でも、攻撃してる、つもりは、なかった。そもそも、『ライオン』に立ち向かえるほどの勇気は持ち合わせてない。だけど...聴きたかったんだ。どうしても、聴きたかったんだ。『ライオン』の弱音を。違う女性を好きな男を好きになった、そのつらさの弱音を聞かせて欲しかったんだ。その点だけ、『ライオン』と『ネズミ』は同じだから、分かり合えると思ったんだ。.....なんて、理由はまだマシだろうね。一番の理由は....もっと醜いことだ
「英二、残念だけど僕の妬みの方が黒くて、プラスマイナスゼロになんてできないと思う。それに...、攻撃してるつもりはなかった。ただ....自分を必死に守ってたのは事実。......そんな自分だけを守る奴なんかに優しいって言葉は不似合いなんだよ、。」
そろそろ油断できなくなってきた。まだ大丈夫そうに見えるけど、もう静かに壊れる音の幻聴が頭の中で鳴り響いてる。そんな恐怖をごくりと飲み込んで、言う。....そう、本当に残念だと僕も思う。僕の妬みの方が英二と比べものにならないくらい、黒いんだから。プラスマイナスゼロだなんて、とてもじゃないけど、出来ないよ。君は僕の好きな人の想い人ばかりか、僕にはない素敵な魅力を持っている。....ほら、また醜い感情が僕の心を支配しようとしている。「羨ましいな」っていう気持ち。そして、は気付いてるだろうか?僕が想いを告げた後、君の中の恋心を曝け出してみたらとしつこく言った、その理由。醜くて、本当に情けないその理由。.......叶わない恋なら、いっそ、叶わないって思い知らせて欲しかったんだ。これ以上、好きになって、傷つきたくない、と思ったんだ。...........だから、。僕は......
「そんなことないもん。似合うとかそういうのじゃなくて、本当にみんな...優しいんだもん。英二は謝る必要はないよ。謝らなきゃいけないのは...私のほうだから。それに....は自己中なんかじゃない。だからこそ...自分を守ろうとしなかったんだよね?」
優しい、だなんて、そんなことありえない。自分のことだけ考えて、自分のことしか頭になくて、他人のことには無神経で....そんな僕に優しい、という言葉だなんて言えない。似合わない。.....そうだ。優しいのは、自分が傷つくのを省みず、自分を守るコトをしなかった、英二、それに。そして、傷の痛みに耐えられた、なんだよ
「......話変えて悪いけど、なんか、もしかして俺の知らない所でいろんなことあったんだ?」
.........それは、そう思う。英二の悲しそうな表情、それは自分の知らないときに、知らないことがあったことに対する寂しさからきているのも、ちゃんと分かるよ
「そうみたい。あたしも知らないこと、たくさんありそうだわ」
リアル
それは、もうと言う位本物に
「僕もそう思う。まぁ、僕の場合周りを見てなかったとも言うけどね」
.........何故なら、僕も同じ気持ちだからだ
「....全部、私の思ってること言われちゃったよ」
はそう言って、苦笑する。....も、同じ、気持ち....なんだね
「さぁ、そろそろみなさん自分の気持ち言う頃じゃないですかー?もうグラグラしてるし」
英二の言葉ではっと気付く。もうすぐ、ジェンガが崩れそうだと。触れてもないのに、グラグラとして、とても危ない状況だと。....ゲームオーバーはもうそこだと
「もしかして、それが狙いだったの?英二」
ワケ
........そっか、そっか、そういう理由だったんだ?
「なるほど、ね。一番の本音を言わせたかったんだ?...で、言いたかったんだ?」
ファイナルゲーム
英二がここに僕達を呼び出して、最終遊戯の宣戦布告をした理由
「.......うん。全ての始まりの根拠のことだよね?」
もっと、勝負をはっきりとつけたかったんだ。そして、僕らの胸の中にある、この感情も
「そう。.....俺から言わせてもらうと....俺は、が好きだよ」
すれ違って、実る希望も少なくて、それでも捨てきれなかった、この想い
「あたしは、そんな英二が好きなんだけど?」
ゲーム ゲーム
ゲーム
遊戯の始まり、遊戯の最大ポイント、遊戯の....一番の鍵を握るモノ
「僕はそんなが好きだ」
僕らは不器用なりに、一生懸命もがいた。....力を抜けば、浮くことも知らずに
「.........私は....そんな周ちゃんが好き」
それほど、真剣な感情。.....恋という名の感情
僕らは、ただ、恋をしただけなんだ
「わぁ、見事にバラバラじゃん。なんか、ここまでくると可笑しいね」
英二はそう言って、器用にジェンガを抜いた。もう崩れそうだって言うのに、余裕の笑み。こんな時にすごいな、と心から感心する。その英二の笑みがほっと安心したような笑みだったから、余計にそう思う。.....その笑みはとても心地良い
「....そうね。本当、可笑しい」
そう言って、も言葉どおり笑う。そんなも、本当に心底安心したような表情で、英二と同じくなんの躊躇いもなく、ジェンガを抜いた。....崩れなかった
「....よくこんなに上手く出来たもんだよね。...って、、泣かないで」
........自分で言って、納得した。こんなに矢印がかみ合ってない恋、神様もよく仕組んだものだ。....いや、神様が仕組んだなんて、断定できないけど....って、.....
「.....ごめ....で、でも、何か、ほっとしちゃって....」
の瞳には涙が零れていた。それはそれは、綺麗な涙。それを止めようと、は必死で、手で拭っているが、止まる気配はない。....、本当に心が綺麗なんだね。素直に、ほっとしたって言うことが出来るのが、何よりの証拠
「ってか、もうグラグラしてて崩れそうじゃん。....言い出しっぺが負け犬かよ」
英二は、ちきしょーっと小さく呟きながら、前髪をくしゃっと横に流した。でも、そう言ったときの英二の表情は、悲しい表情ではなく、やってしまったよ、と苦笑する表情。.....何だ、そういうこと。僕は、やっと英二のことを理解した。
「あー、もういいよ。負け犬で。だから、ごめん、ルール破りでもう一言言わせて」
英二は自分が負けたまま終わるのがイヤなんじゃなくて、勝ち負けの結果自体に、不満だったんだ
そう思うと.......そう言ったときの、英二の表情は満足そうな表情をしているように見える。迷いもそこにはなく、ゲームをやり終えた後の、達成感を味わったようだった。.....まだ、ゲームは終わってないのにね
そして、そう言った時の、英二のその真っ直ぐとした傾きのない声
そして、その次の言葉は
「俺らって、崩れたままなの?」
英二はそう一言言い、目の前にある崩れそうなジェンガに手を伸ばす
それが、まるで、時間がゆっくり流れているかのように、動作が鈍く見えた
僕はそれをじっと見つめながら、頭にあることを過ぎらせた
........僕達は崩れたまま、果たしてそれでいいのだろうか?
答えはすぐに返ってくる。そんなのいいわけないだろうって
......確かにそうだ。崩れたままなんて、いいわけがない
.........僕は、なんて鈍いんだろう?
どうして、気付かなかったんだろう?
こんなにも簡単なことに気付かず、どうして遠回りしてしまったんだろう?
もっと、早く気付くべきだった
ガッシャァーン
「「「「あ」」」」
重なる声と重なる手
重なる声は、何か意外なことが起こった時に思わず吐いてしまうような頓狂な声
重なる手は、どれも異なる手で、それらは
........目の前のジェンガを崩した
「.......これって、もしかして」
「そうね。みんな、考えることが同じだったってことかもね」
「それに....英二だけ、負けさせないよ。」
「うん、今、やっと気付いたしね」
そう言って、みんなで目を合わせて、ふっと笑う
机の上に、ジェンガが散らばっちゃったけど、そんなのお構いなしに
それはまた床にも落ちてしまったけれど、そんなのも別にどうでもいいように
笑った。久しぶりに笑った
もう、教室の外を見ると、薄暗くて、こんなにもここにいたのかと改めて時間の早さを実感
それと、この教室は外とは対照的に明るく、光に満ちていることも実感
.........僕達は、やっと、見つけたんだ
こたえ
それぞれの想いを
「.........崩れたまま、ってのは、俺たちが、怠けてたんだね」
「本当。どうして、気づかなかったんだろう?」
「考えてみたら、本当にごく単純なことだよね。...だから、気付きにくかったのかもしれないけど」
「でも、気付けたから、それはそれでいいと思うよ」
ファイナルゲーム
最終遊戯をして、僕達は、勝敗を改めて理解した...そして、僕が少し間違っていたことも
ウィナー ルーザー
勝者とか、敗者とか、そんなの関係ない
ウィナー ルーザー
勝者が次に必ず勝つわけでもないし、敗者も次は必ず負けるわけでもない
そう、次があるんだよ
ジェンガは....崩れたまま、終わりなんかじゃないんだよ
ゲーム
ちゃんと、積み上げれば、新しい遊戯を始めるコトだって出来るんだ
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