再ゲームの始まりのホイッスルが鳴った
これから
あたしたちの勝敗は.....?
BALANCE GAME
突然、英二に放送で呼び出された。その驚きは、今でもあたしの胸をドキドキ言わせている。ったく本当に、何考えてるのよね?あのバカ猫。放送で呼び出すとか...ありえないじゃん。いくら放課後でも、うちの学校部活に入ってる率が高いから、この放送、かなりの多くの人の耳に入ってるじゃん。
現に、あたしがこうして廊下を歩いて、人と出くわすと、必ずといっていいほど、あたしの方をじろじろ見ながら、通り過ぎる。あたしの顔に何かついてるの、って聞きたくなるくらい。正直、うっとおしい。ひそひそ声も聞こえてくるし、本当にイライラしてくる。言いたいことあるんなら、はっきりと言えってーの。そしたら、あたしだって、ちゃんと答えてやるさ
「何がどうなってんのか、分からない。」って
......だって、本当に分からない。生憎、あたしエスパーじゃないし。英二があたしと...周助とを呼び出した理由なんて、分かるはずがないじゃない。英二の考えていることとか、今からしようとしていることとか、何もかもが分からない。分からないことばかりで、何か悔しいわ
でも......この胸のドキドキは何なのだろうか?
自問してみると、こう答えが返ってくる。いきなり呼び出されて、驚いたんじゃないのって
だけど.........本当に、それだけなのかな?
例えば、これから起きることに、対する、こと、とかじゃないのかな?
「.........、それに周助」
「....」
「......何か、久しぶりって感じね」
「そうだね」
教室付近まで、はっと気付いた2人の姿。もうすでに、と周助はそこにいた。は、少し砂っぽくなった制服を着て、周助はレギュラージャージを着て、そこに立っていた。遠くから見ると、教室に入ろうか入らないか、迷っているように見えた。
そこで、あたしは声をかけてみる。は肩をびくっと震わせ、あたしの方に振り向いた。そして、ぽつり、あたしの名前を呟く。いつも聞きなれていた名前がすごく新鮮な感じがした瞬間だった。はちゃんとあたしを見れないようだったけど、あたしは、を見て言った。もちろん周助にも言ったつもり。「久しぶり」、今の気持ちはまさにその言葉にぴったりだった。.....笑えているといいな、と思ったのは余談だけどね。そのあたしの言葉に反応したのは、周助だった。穏やかな微笑みを浮かべている。ただ、その視線の先にあるものはあたしには分からないけれど。
でも、とにかく2人と少しだけでも会話できて、ほっとした。思っていたよりも、あたし.....普通に喋れてるような気がするから
.......だけど、その安心しきることはできない
後は......英二だ
「.......入ろうか、中」
「うん」
ゆっくりと、あたしは言った。周助の返事と、がこくりと頷いた姿を見て、決意したようにドアに手をかける。....この中に、英二がいるんだ。あたし達を呼び出した、張本人が......ここで、あたし達を待っている。
あたしは、ゆっくりとドアを少しずつ開けた。黒板、教卓、机、椅子、それらが次々と目に飛び込んでいる。あたしは、何だかよく分からない衝動に駆られて、ドアを半分まで開いた所で、勢いよく、全部ドアを開けた。バンという音が部屋に、廊下に響き渡る。そして、あたしは教室に1歩踏み入れ、中を見た
あ
..............いた、英二が
あたし達に背を向けて、机の上に腰をかけている英二が、そこにいた
「........英二」
アンタは、どんな気持ちであたし達を待っていたの?
という言葉を飲み込んで、あたしはゆっくりと英二の名前を口にした。英二は、それに反応し、それからゆっくりと、あたし達の方に振り返った。どこか不安げな顔、でも、英二はすぐにその顔180度変え、にかって笑った。太陽にように、眩しいその笑顔.....ああ、それも久しぶりだ。
長い間太陽に当たらず、道を歩いてきたもんだから、その笑顔がとても安心できた。自分の心が少しだけ緩んだのが、自分でも分かる。
英二は、「遅いぞ!」といつもの明るい調子でいい、あたし達をこっちに来いと手招きをした。自分が動くつもりは、さらさらないらしい。あたしは、つい後ろにいる二人の方を見てしまった。別に理由はないけれど、何故か振り返ってしまった。
は、何かぐっと堪えたような表情をしており、周助は、形になりきってない気持ちを整理するのが苦しい、そう言った表情をしていた。あたしも2人のような表情をしているのかな、と少し思い、また前に向き直った。.......英二が待ってる。あたしは、意を決して、英二の傍に寄った。たぶん、と周助も後ろからついてきているだろう
「俺、あんまりに遅いから、来てくれないかと思って、かんなり不安だったんだかんね!」
英二は、不満げにあたしに話し掛けてくる。あたしは「こっちは呼び出されて、心臓止まるかと思ったわ。」と言い返した。すると、しゅんとなって、「ごめん。」と英二は呟く
。だけど、その言葉に反応するよりも、あたしは、目の前にあるモノに目を奪われてしまった。と、同時に英二が本当に何をやろうとしているか分からなくなってしまった。だって、こんなもの....どっから出てきたのさ?訳わかんない。今から....これをやろって言うの?何で、こんなモノがここにあるわけ?
きちんと積み立てられたジェンガ、なんてもの
「.......英二、これ....何?」
あたしが思ったことを、が代わりにおそるおそる聞いてくれた。いや、これはジェンガっていうのは、あたしだってやったことあるし、ちゃんと分かるけど、あたしも同様が聞いているのはそういうことじゃない。
『それを使って何をするか』だ。
ちらりと周助の方を見てみると、周助もまた....そう思ってたみたいね。英二の方をじっと見つめている。きっと、周助も気になったんだ。
ま、あたしも気になってるけどね、もちろん、も
この次の英二の言葉が
「........今から、ゲームやらない?」
ふっと、さっきとは違う笑みを浮かべて、英二は言った。その声には、何か固い決意がこもっている。その表情も同様に、だ
「.......ゲーム....?」
げんじょう
「うん、そう。....だって、俺、この勝敗に納得できない」
「...何...を....言ってるの?」
周助が呟いた言葉に、英二は平然と答える
そして、のゆっくりと驚きを隠せないように言った言葉に、ふっと微かに笑みを漏らして答えた
「.....俺、自己中だから、負けたままで終わりたくないんだ」
その、いつもと違った声にドキっとしたのは言うまでもない。それに、これもまたいつもと違った表情に心を一発殴られる。
教室から差し込む光を浴びた、英二の赤茶色の髪は、燃えるように赤く、これからのことに対する意気込みを象徴させた。その瞳には強い決意の輝きが存在しており、その綺麗さに見とれてしまう。綺麗すぎて、怖くなる。恐怖とは違う、ゾクゾクとした感じがあたしの背中を襲う。まるで、綺麗な指で背中をなぞられたように........。
あたしは、そんな英二から目が離せなかった。きっと、目が離せなかったのは、心まで奪われてしまったせいだ。そうに違いない。じゃないと、目が離せないわけがない。その英二の迷いのない真っ直ぐな瞳から目を反らせないなんて、ありえないもの
あたしは言葉を失った。あたしと同じかどうかは分からないけれど、と周助も言葉を発しない。英二の言葉の余韻が誘い出す静寂の渦に、飲み込まれそうになった時、また英二が口を開いた
それこそ、本当のゲーム開始の合図だった
「ルールは簡単。このジェンガを崩さないように順番に引いていくだけ。でも、それだけじゃ面白くないから引くたびに自分の本音を一言ずつ言っていくことしよ......んでもって、もちろんこれを崩した人が負け。分かった?」
ジェンガを守りきれなかったと思い込む女の視点でゲームを始める
自分が土台を脆くしていったと思っている男の視点でゲームに挑む
最終的に自分が崩してしまったと後悔している女の視点でゲームをしよう
再ゲームを唐突に申し込んだ張本人である男の視点でゲームに挑戦
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