言葉にこんなにも全てを壊す力がないのなら


僕は.....この言葉を言い続けよう




































































































BALANCE GAME


























































































僕はが好きだ。しかも英二とに対する『好き』とは違う『好き』なんだ。最初は確かに同じ『好き』だった。それが変化したのに気づいたのは、いつだっただろうか...。よく覚えてはいないけど、それは結構前のことだと思う。



とにかく僕はそれに気づいた日からを想っていた、なんていえば聞こえはいいかもしれない。ただ、僕は彼女にとって重荷にすぎないこの気持ちをずるずる引きずっているだけである。この気持ちは、例えが誰を好きであろうかなかろうか関係なく止まらないものでもあって。ちゃんと分かっているのに、諦めの悪い情けない男であって。



そんなことを言い出したらキリがないからもうこの辺で終わりにしておくけれど。でも、これだけは言わせて欲しい。これは僕にとっての告白だったってこと。










「僕は、が好きだよ」









元々溢れそうだったこの思い。それが勝手に溢れてきてしまった。僕は何も頼んでいないというのに。だけど、が必死に我慢する姿を見ると本当に痛々しくて、ストップをかけ遅れてしまったんだ。だから溢れ出しちゃって、不意に言葉にしてしまう。形のない気持ちを言葉に言い表すのは難しいけれど、そんな気持ちを表せる言葉があるから言葉にしてしまう。のちにこの言葉は槍となることを知っていながら。



それでも、僕はが好きだ。彼女にとって迷惑極まりない、そんなの分かりきったことだけどそれでも好きだ。そういうときいつも思う。自分はなんて身勝手な奴だろうと。それとなんて残酷な奴なんだろうと。彼女は英二が好き、だけど英二が好きなのは彼女とは違う女性。それを承知し、必死に僕らの関係を壊さまいと必死に自分の気持ちを押さえる彼女に「いつまで我慢するの?」と残酷な言葉を吐いた。



.......でも聞かずにいられなかった。もう我慢している彼女を見るのが嫌だった。そんな自己主張だけ強い自分と好きなのに彼女を追い込むような言葉を言う自分が嫌で嫌でたまらなくなる。俗に言う自己嫌悪。彼女の反応を待っている間、後悔という気持ちすら覚えた。やっぱり言葉にするんじゃなかったなっていう後悔の波が僕の中を駆け巡る。









「..........人の話聞いてないし」








彼女の反応は僕が期待していたものでもなく恐れていたものでもなかった。腰に手を当てながら、はぁと深い溜息をつき、呆れた声では言う。そんなの瞳が予想通り「聞きたくないってば。」というような瞳をしていたから、きっとこの告白を流そうとしているのだろうと悟った。彼女が一番僕らの関係を壊すことを恐れていることを僕は知っている。だからこそ余計に僕はタチが悪い奴である。



何回も言うけど、僕が言った言葉は本当で真剣な気持ちであって流されるほど簡単な言葉ではない。正直、流して欲しくなかった。怖いとは思いながらも黒か白かはっきり知りたかった。



でも........今そんなことしてはダメだ。取り返しのつかないことに発展しそうな予感がする。だって、彼女はそれを望んでいない。彼女の望んでいないことは.....。それが1つの優しさだと自分に言い聞かせ、震える心の声を別の姿に変える。






こそ全然人の話聞いてないじゃない」
「そんなめんどくさくなりそうなこと、あたしは聞く耳持ってないから」
「都合のいい耳」
「あたしは都合のいい女だよ」








だから、早く行くよ。あたし、化学は好きなんだ。......世界史や日本史は嫌いだけどね。



そう言って、はふっと笑みを溢す。それには無言の意思の強さが表れていた。絶対にそんな言葉を受け付けない、それにこの関係を自分から何て崩したくないという強い意思。.......は強い。僕は強い彼女に惹かれたなんて言っても嘘ではない。



それくらい彼女は強い。本当は弱いのかもしれないけれど、その弱さを一切僕たちに見せないところがやっぱり強いんだと思う。........ああ、やっぱり、敵わないよ。彼女には。無言の威圧感で僕がこの関係を壊そうとするのを弾圧する。








「だー、もう!何をボーっとしてるの!?周助らしくない!ほら、早く行くよっ!」
「え、あ、うん」








には僕がボーっとしているように見えたみたいだ。そんなのを好まないは、案の定イライラした口調で僕を促した。その勢いに押されながらも、僕は一応返事をする。その返事を聞き、は僕の腕を引っ張り、歩き出した。.......引っ張られた僕の足は自然に動く。自分で動かすより早く動いた。階段を降り、廊下を歩く時もは僕の腕を離さずただ無言で歩く。



だから、僕も何も言わずにただ機械のように歩く。もう他のクラスでは授業が始まっているようだ。1組は世界史、2組は数学の授業をしている。あ、4組は英語だとか観察している僕に、黙々と僕の腕を引っ張りながら歩いていたが言葉を発した。








「.......たまには、えっと....何て言うの...。えー..............あ、そう!たまには、新聞とかプリント千切ってストレス発散したら?」








うん。



だけど、僕が溜めているのはストレスではなく....もっと別のものなんだ。



























































僕にとっては大きすぎることがあったはずなのに、時間は何事もなかったように過ぎてゆく。5時間目の化学も早く終わったような気がしたし、6時間目の現社も早く終わったような気がした。HRも担任の出張のためにカットされて、あっという間に僕達は勉強地獄から解放され放課後を迎えた。




で放課後と言えば、部活。学校での1日の終りを飾る、僕にとって学校に行く楽しみの一つである部活。僕と英二は部活に行く用意をしていた。そこにが来て、ちょっとした会話に発展する。彼女が壊したくない、あの温かい雰囲気になる。僕は別にそれは嫌じゃない。嫌じゃないから、さっき自分がしようとしていたことを悔いてしまう。でも........大丈夫みたい。彼女はちゃんと心の底から笑ってる。



何事もなかったように自然とは笑ってる。








「あー、やっと部活に行けるーっ!」
「英二、すごく嬉しそうだねぇ。部活、頑張れ!!」
「まっかせなさーい♪」
「ま、英二には部活しかとりえがないもんねー?」
「何ですと!?」








英二の本当に授業が終わって幸せそうな声。の明るくて高いソプラノの声。のからかいの入り混じったよく通る声。全部、僕の耳に入ってきた。それらは心地良く僕の耳に響く。その心地良さに僕は眩しいものを見るように、目を細めた。



だけど、本当に眩しいんだ。僕の目の前で笑いあう3人は。まるで自分にはない何かを持っているようで、眩しい。というより、自分が暗いから周りのもの全てが眩しく見えるのかもしれない。ぼんやりと僕はそんなことを思った。








「あ、そーだ。今日、あたし図書委員で帰るの遅くなるから一緒に帰ってもいい?周助」
「...........」
「....何、嫌なの?」
「そういうわけじゃないよ。むしろ、僕も一緒に帰りたいと思ってたんだ。だけどからそんなこと言うなんてと驚いただけ」
「何それ。あたしだって、誘うことくらいするさ」
「えー、じゃあ私も一緒に帰りたいー!私も待つから一緒に帰ってもいい?周ちゃん」
「ってか、俺は完璧無視られてる.....?」
「んなことないってば。英二。アンタも含めた上で話を進めてるんだからさ」
「良かった〜」
「じゃあ、今日は久しぶりで4人で帰れるねっ!じゃあ、今日はどっか寄っていこーよ」
「あ、いいね。。あたし、公園の近くの喫茶店の割引券持ってるよ」
「おし、決定!今日は久しぶりに4人で帰るとしますか!」
「うん!そーいうことで、英二と周ちゃんは部活頑張ってきてネ」
「了解。も俺たちが終わるまで待っててねん」
「分かった。周助は待つけど、英二は遅かったらおいてく」
「誰もそんなこと言ってないし。しかもヒドイ、
「あはは。英二は終わったら超特急で来なきゃいけないねー。周ちゃん」
「あ.....うん」
「え、周ちゃん?どうかした?気分悪いの?」








ぼんやりと思ってた、ということはボーっとしていたと言える。そんな僕に、が話し掛けてきた。何事もなかったように、いつも通りに、にっと笑って。正直、こんな言葉を僕にかけてくれるのことがよく分からなかった。だって......僕は、彼女の望んでないことをしようとした悪い奴なんだよ?それなのに、どうしてそんな嬉しい言葉をかけてくれるんだろうと僕はその答えを考えた。



でも、見つからなかった。それでも必死に見つけようと考える。そしてふと気づく、それはバツが悪そうに苦笑するの顔。ああ、そっか。まだ、返事をしていない。



僕は口元をかすかに緩め、返事を返す。その返事を聞いたの顔は.....ふてくされたような顔百面相みたいな人ってずっと見てても、飽きないよね。僕の袖を引っ張り、僕を見上げて言うやしょぼんとした顔でぼそっと呟く英二も含めてそう思う。は嬉しいから笑い、おかしいから笑うと。笑ってるだけじゃんと思うけど、の笑顔はそれぞれ違う。言葉では....説明は出来ないけれど。英二はというと悲しいからしょぼんとして、嬉しいから顔を輝かせる。本当に面白い人たちだ、うん。



僕の周りの人は見てて飽きない人ばかり。だから、こんなにも一緒にいることが飽きることなく楽しいんだね。なんてことを改めて実感していた。



そのせいか、反応が遅れてしまいの言葉に対する反応が曖昧な感じになってしまった。これは確実、そのせいで、は心配そうに僕を覗き込んでくる。でも、これは無駄な心配だから僕は心底悪いなと思う。だって、気分悪くなんてないからね。心配される要素は....何もないから。何もないのに、心配をかけたくないと、僕は思うから。



だから、僕はゆっくりと首を横に振った。








「ううん。気分はすごくいいよ。......ただ、少し浸りすぎたかな」
「?何を」
「何でもないよ。さ、英二。そろそろ行こうか。そうじゃないと、手塚に走らされるからね」
「あ、ヤバイ!じゃ、行こう!、校門の所で待っててねっ!」
「はいはい。行ってらっさーい」
「出来るだけ早く来てね!」
「分かったよ。じゃあね」









そう言った僕を見送ったのは、の満開の笑顔と....の癖になって戻らない笑顔



























































テニスという、自分の好きなコトをしている時間って心から楽しいと思える。皮肉なことに、楽しい時間はあっという間に過ぎてゆく。後から思い返してみると、結構内容的に濃い時間だったと思うんだけど、やっぱり早く終わったように感じる。それは紛れもない事実。



そう、いろんな練習をした。さらなる技術の向上のための練習や、大石や海堂とのラリー。そして忘れてならないのは、英二との青酢をかけたゲーム。乾汁は平気なんだけど、青酢はちょっと勘弁だから、僕は全力を出して英二に勝った。.......それを飲んだ英二は、すごいことになってたけど。



そんな彼が、部室で着替えている最中僕にこんなことを尋ねてきた。








「ねぇ、不二の好きな人って誰なの?」








そう言った後、何か吐き気がしたみたいで英二は思わず口を手で覆った。.....これは大分ダメージを受けたという証拠である。そんな英二を見て、僕は飲まなくて良かったと心から本当にそう思った。顔が青ざめて、英二の自慢の瞳に輝きがなくなっているのに気づいたら、思うんじゃなくて実感できた。勝つって素晴らしい事だね。全く。



.........そして、この質問。僕は答えなきゃいけないのだろうか.....?とりあえずまず僕は、英二が正気かということを確認する。








「あれ飲んで、頭おかしくなったの?」
「うん、そう。頭にずきゅーんときて....ってちっがーう!!これは真面目な話!青酢は飲んでも酔えません!!」
「何それ、やっぱ頭が崩壊しちゃったんじゃないの?」
「だから違うんだって!!本気で、真剣に答えて!不二」








でも、ね。英二。そんな顔で言われても、真面目な話とか思えないよ?



そう言いたかったけど、あまりにも英二が可哀想だからやめておいた。だって、今の英二の顔....すっごく泣きそうな顔してる。特に瞳が泣きそうで、うるうるしている。....こんな英二を見たら女子達は可愛いというんだろうけど、僕は違う。そんな瞳で、そんなことを聞いてくるんじゃないよと思ってしまう。








「答えて何になるの?」
「何もならない」
「......じゃあ、言わない」
「何だよー、それ!!せっかく人が聞いてるのにさーっ!!」
「そんなこと言ってないで、早く行くよ。が校門で待ってるんだからさ」
「分かってるよ。でも........。」
「でも?」
「............やっぱり何でもないや」








答えて何にもならないのなら、僕は言わないでおこうと思った。答えて何かになるとしたら............それでも僕は言わないだろう。僕はのことが好きなんだってコト。英二のきっぱりした口調の言葉を聞き、僕は余計に頑なにこの思いを告白することを拒否した。



案の定、僕の言葉を聞いた英二は、口を尖らせて不満そうな顔をした。その後、顔を歪めたのは見なかったことにしておく。ということで、僕はその話題を避けるべく違う話題を提供した。まぁ、事実に過ぎないんだけれど。早く行かないと、英二がおいてかれること可能性75%もあるんだしね。



すると、急に英二の顔つきが変わった。しょぼんとした声だけど、顔は.....言ってみれば正反対。もしかしたら気持ち悪いのを我慢してそんな顔になってるのかもしれないけれど。それでも、僕は直感で思った。何か英二の中で、何かがそう真剣にさせているのだと。その何かは......まだカタチが掴めないから、よくは分からない。



だけど............英二にもある。僕が僕の中に秘めているのと同じモノ。








「さ、早く行こう!!俺なんか不二と違って、遅かったらおいてかれちゃうし」
「......そうだね」







でも、僕は追及しない。追及したら...........何か、予感がする。だから、僕は英二の無理に声を明るくした言葉に同意し、着替える速度をあげる。



そのとき、1つの思いがよぎったけれど.........気づかないふりをしておこうか。



























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