崩すのが怖くてびびっている臆病な俺
だから、カタチに出来ないもどかしさはいつまで経っても残ってる
BALANCE GAME
恋に部活に0.001gだけ勉強。3年6組菊丸英二、只今青春を満喫し日々全力投球で過ごしてまっす。部活はもちろん大会近いし、今年こそは全国行きたいから力が入る。勉強は......受験というモノを控えている身であるけれど、ちょっとおいといて。
恋愛、もしかしたらこれが一番力入れてるかもしんないと思うくらい、俺恋する少年。しかも....実る可能性が少ない恋をしてしまったから、ちょっとやそこら力入れたくらいではやってけない。
何故なら俺がに恋しているのと同じで、も他の男に恋をしていたからだ。
「......ねぇ、私ね。周ちゃんを見るとドキドキしてくるの。どうしてなのかな?」
つい最近、俺の想い人がこう言いだした。その時もう俺はが好きだって自覚してたから、かなりのダメージだったのは言うまでもない。それに..........どうしてって言われても、それは理屈じゃないから答えられない。
だから、俺は代わりに言った。どうして?の答えじゃなくて、今が抱く感情の名前。それは俺の中に潜んでいるのと全く同じモノ。.......そう、恋だということを。
「そっか。そうなんだ。そうなんだねぇ......」
そして、俺の言葉を聞いたが繰り返した言葉。頬をほんのり赤らめ、でも心の底から嬉しそうに笑った。そして、教えてくれてありがとうとも言った。英二が友達でいてくれてよかったとも...。
その言葉を聞いた俺は2つの感情を覚えた。1つは嫉妬。何でが好きなのは俺じゃないんだよって思い。もう1つは..........嬉しさ。何故だか分からないけれど、何に対してかも分からないけれど、の幸せそうに笑う笑顔を見ると心が温かくなって、ずっとそんな笑顔を見ていたいと思えた。
........守らなきゃ。この笑顔を。俺の気持ち1つで壊しちゃいけない。だから、絶対にこの想いをカタチになんかしたりしない。応援しなきゃ。いい『友達』でいるために。に幸せになってもらわなきゃ。それが俺の一番の願い。俺的に大切なのは、好きになってもらうことよりも今ここにあるものをまず保つということ。
そう、例えば今の楽しいと思えるこの気持ちとか。
「うっ」
「ど、どうしたの?英二。英二の方が気分悪そうなんだけど」
「、英二はね僕とのゲームで負けたから、青酢飲まされたんだよ」
「言うなっ、不二!そうえっ.....またなんか気持ち悪くなってきた」
「ご愁傷様、英二。アンタがいなくなると思うと」
「勝手に人を殺すなってーの」
続喫茶店にて。
時間が経っても、ハイテンションになっていく俺たちの話題は尽きることを知らなかった。幸い、ドリンクバーを頼んでいたため、喉の渇きを知らず閉店まで、いや、いつまでも喋る勢いだった。
そんな中、俺は再びあるモノを思い出した。思い出したくもないあの味の不味さ、そしてそれを飲んだ後の気持ち悪さ。青酢の威力をなめちゃいけないことを改めて実感した瞬間だった。
そんな俺に心配そうに声をかけてくれる。やっぱり優しくていい子だ。くすっと笑って俺を哀れな目で見る不二とは全然違う。それは俺を見て、けらけらと笑うとも違う。けど.......やっぱり気持ち悪いのは治んない。が優しく俺の背中をさすってくれてるんだけど治んない。
....一体何を入れたんだよ、乾の奴。で、頼むから。俺の目の前で手を合わせるのは止めてくれない?俺、一応まだ必死で生存してるんだからさ。そんな俺に追い討ちをかけないでくれよな。頼むから.......ってまた波が来た。
「っ。.......うっわぁ、今ピークかも」
「え、大丈夫!?英二!!あのスミマセン!!お水もらえますかーっ!?」
「.....周助も悪い奴だねぇ」
「僕だって無理なものくらいあるさ。例えば.....我慢することとかね」
「英二は頑張って我慢してるんだから、周助も頑張りなっ」
「英二!ぐいっと水飲んだら気分少しはマシになるかもだから、はい!」
「あ、ありがとう。」
気持ち悪すぎてヤバイヤバイヤバイヤバイ。青酢ってこんなに後から襲ってくるものだったか。今度桃とかおチビにも教えてやろうっと。.........って本当にヤバイ。や不二の会話もかすれてくるくらい、気持ち悪すぎてマジで本気で俺死ぬかもしんない。ちなみに言うと、日本語おかしくなってるのは許してやって。もう文法を考える余裕持ち合わせてないから。それに、必死に頑張ってるから神様も許してくれるはずだからお願い。ね?
んで、が店員さんに持ってきてもらった水を俺に差し出し、ぐいっと飲むように薦めた。ということで、俺はに言われたとおり水を一気に飲み干す。冷たいモノが俺の喉を通過し、すうっと何かからの解放感を感じた。ああ、自然に帰った感じ。青酢って見るからに自然界のモノじゃないからね。本当、乾あれどこから作り出したんだろう?今度絶対に聞きだしてやるからなっ。覚悟しとけよっ。
なんていう固い決心をしながら、俺は飲み終えたグラスをそっとテーブルに置く。が心配そうに俺の顔を覗き込んで「大丈夫?」と声をかけてくれる。こんないい子に大丈夫だと言えない俺が、情けない。..........くぁー、カッコ悪ぃ。男として。まだ気持ち悪さが残ってないなんて言い切れない俺、ものすごくカッコ悪い。欲張りなことは思わないからさ、せめて好きなコの前では元気な姿をいつでも見せたいよ。
「って英二さ、顔がさらに青くなってない?」
「本当だ。じゃあ、もうそろそろ帰ろうか。時間も時間だし」
「そうだね。周助」
「........うん。早く家に帰ってゆっくり休んだ方がいいよ」
俺の変化に気づいた
一応心配してくれていると思われる言葉をかけてくれる不二
こちらは本当に心配してくれている
........ああ。俺って本当に厄介な奴だ。青酢くらいでへばってしまう軟弱男。でもその軟弱男は幸せ者だと思う。とてもいい奴らが傍にいてくれるんだから。それ以上の幸せをどう望もうっていうんだ。.......俺はこれ以上望めない。
「........ごめんな」
「気にすんなってば。英二」
「そうだよっ、の言うとおりだよっ!」
「それに元気な英二じゃないと調子狂うからね」
そして、ありがとう。、不二.......そして
外に出ると、もう空は暗くて夜だということが分かった。そして大分喋っていたんだということも。時間の経つことを忘れたことを思い出させてくれた夜の風は気持ちよくて、俺の気分の回復を促す。きっと、これなら家にたどり着けるだろうと俺は思った。気分は悪いけれど、身体は思ったよりもだるくない。大丈夫だ、見てのとおり俺の足は歩きたいと言っている。って、俺もしかしてじっとしてたから気分が悪くなったのかな?
まぁ、そんなことはおいといて。暗くなった電灯の光だけが明るい道の交差点で、俺たちはまた明日の言葉を交わす。そして、と不二は右へ。俺とはそのまま直進。はまた明日ねっと大きく手を振り、不二はニッコリと笑ってじゃあねと言った。そしてその後ろ姿を見送りながら、と同じくらい手を振る俺とまたねと小声で呟く。
手は大きく振った。それとともに羨ましさも増大する。ご理解いただけるとおり、不二に対してね。歩くのが遅いのペースに合わせて、歩く不二。にっこりと笑いながら話す。.........ああ、こうして2人を見ているとお似合いかも。ってかお似合いだ。嬉しそうに笑うの顔が思い浮かぶ。.......きっと俺といるよりも幸せそうな笑顔。俺には出来ない、不二じゃないとの中から惹きだせない笑顔。
「........何?まだ、気分悪いの?」
「.......いや。そんなんじゃない」
「じゃあ、行くよ。ってか、後ろ乗りな」
「は?」
トンと俺の頭に何かが軽く触れた。そして、ふと目線を斜め下に落とせば....何かとはの手だったことが分かる。は俺の方を見ようとせず、ただ自転車を押しながら俺に言った。
その横顔、前を見据える傾きのない瞳から真剣っていうか真面目に俺のこと.....を何て言うんだろう?心配や同情とかじゃなくて、本当に俺のことを考えてくれていることが分かる。きっと、は俺の思ったことを読んだ。だからこんなことを聞いてきたのかもしれない。いや、絶対そうだ。俺が底のないような後ろ向きなことを考えてたことを察したんだね。これぞエスパーってやつだよな?なんちって。ああ、敵わないなー。には。昔から勘だけはいい奴だかんね。
は昔からの幼馴染。だから結構俺、のことを分かってるつもり。そう、例えば無茶苦茶な発言をする癖があるとかね。
「あたしがこぐから英二は後ろに乗りなって言ってるの。早く家帰りたいでしょ?」
「いやそりゃそうだけどっ。ってか、本気で言ってんの?」
「当たり前じゃん。何でこんな時に嘘言わなきゃいけないのよ」
「だって.....俺、男だよ?」
「それがどーした」
「......たくましいね。全く」
「男とかそう言うの関係なくアンタは病人でしょ。病人は大人しく元気っ子の後ろに乗った乗った」
自転車の荷台の部分をぽんと叩いて、俺を促す。固まる俺。ってか、俺は男では女でしょ?なのに何で男の俺が後ろに乗らなきゃいけないんだ?普通俺がこぐだろ.....本当はたくましい。頑丈って言うか強い。そりゃ昔から体力ありすぎるパワフル少女だったさ、は。でも、いくら何でも...ねぇ。身長だって俺のほうが高いし、きっと体重だって俺のほうが重い。それなのに....
って言ってもが聞かないことは、百の承知済み。言い出したら聞かない奴だもん。
だから、俺は曖昧に分かったと返事しながらおそるおそる乗ってみた。「ちゃんと乗った?」と前から声がして「うん。乗ってるよ。」と俺が言えば、自転車はゆっくりと動き出す。ゆっくり、ゆっくり、それでも真っ直ぐに進む。ふらついたりもしないし、危なっかしい様子もない。乗っていてひやひやする、そんなこともない。俺は、女の子にも男を後ろに乗せれるくらいの力が秘められているんだなぁと実感した。でも......やっぱり男の立場から言わせてもらうと
「、大丈夫?俺、変わろうか?」
「何言ってるの。全然平気だよ。それより英二の方がちゃんとしてよね」
「な、俺はいつもちゃんとしてますよー」
「よく言うよ。心の中はフラフラ彷徨って途方に暮れているくせに」
「................」
「頑張れ。英二」
「当たり前じゃん」
「ってか、ちゃんと掴まっててよ?じゃないと落とすからね」
「ひでー。」
「嘘だよ。落としても拾ってあげる」
「そんな。俺、人間として扱ってもらえないんだ?」
は俺の申し出を断固拒否した。やっぱりはたくましいと改めてそう思う。女にしとくの...すっごく勿体無い気がするのは俺だけかな?は普通に言葉を発しているだけかもしれないけれど、俺には一つ一つがすごく強くて、傾きがないように思える。
ほら、今だって。俺の心の中を見透かしたようなことを言うんだ。真っ直ぐに、何の混じりもなく言うんだ。だから、俺思わず返す言葉を失ってしまったじゃん。それに、途方もないことを祈るような励ましを俺に躊躇いもなくかけてくれるから、圧倒的に俺の負けだと悟る。
男は強い人間、女は弱い人間。別に男女差別をする気はないけれど、もしそんな基準で男と女が決まる。だとしたらは間違いなく男だ.....そして俺は女。
それでも拾ってくれるというのなら、これもまたこれ以上望むことは何もない。
「.......んなわけないじゃん」
「何か言った?」
「別に。って、だからちゃんと掴まってって言ってるじゃないの」
「はいはい。分かりましたー」
「おまけで合格」
「何それ」
それとともに、たくましくても女の子はやっぱり女の子だと思った。今にも壊れんばかりの細い肩が何よりの証拠
翌日。
俺はすっかり元気になった。しかも天気はすごくいいし、目覚めも爽やかだった。こんな珍しい日には何かいいことあるはずだと勝手に自分で解釈して、鼻歌を歌いながら俺は元気に登校した。んでもって、朝練では菊丸ビームが面白いくらい決まってやっぱり朝から今日はいいことあるかもしれないとの期待が膨らむ。
もうすぐしたら、この期待がはじけて跡形もなく目に見えなくなるとも知らずに、このときの俺は、桃とのビックマックをかけた勝負に見事に勝っていた。
「やりぃ。桃、約束だかんなっ!」
「ちぇ、はいはい。今日のところは負けを認めますけど、次は絶対勝ちますよ!」
「俺だって負ける気ないもんねーっ!.........って不二は?」
「不二先輩?不二先輩なら......部室っスよ」
桃に勝って有頂天になった俺は、きょろきょろ辺りを見回してあることに気づく。いつも俺より早く練習に来ている不二の姿がないことに。それが妙に気になったから、俺が桃に尋ねると答えが返ってくる。それプラス気になる発言も。
「なんか、誰だっけ.....えっと.....」
「誰だよ?」
「そう、思い出した!!」
「何を?」
「何か不二先輩、3年の先輩と部室に入っていったッスよ」
「が?」
それを聞いたとき、俺は何か奇妙な気持ちを感じた。呼びようがなく掴み所もない変な気持ち。あと1つは好奇心。不二とがなにやってるのかなぁなんていう純粋な好奇心によるモノ。変な気持ちと好奇心が混じって、それは行動力へと変わる。
だから、俺は桃の返事も待たずに部室へとダッシュした。え、英二先輩!?どこ行くんっスか!?と後方で叫んでいる桃にも振り向かず、とにかく部室へと向かった。
後に後悔と言う言葉を覚えるとも知らずに。
「あたしの勝手でしょ。そんなの」
「確かにそうだけど」
「じゃあ、言わないで。それくらい.....一番あたしがよく分かってるよ。でも仕方ないじゃん」
部室のドアに手を伸ばそうとした瞬間、こんな珍しく緊迫した会話が聞こえてきたから思わず手を止める俺。ケンカしているのだったら止めなきゃ、でもケンカに入るのって俺的には何だかなぁなんて思っている超場違いな俺
「どうしようもなく英二が.......好きなんだもん。」
ドクンと鼓動を打つ俺の心臓
余韻が浸る俺の耳
そのとき、俺が何を思ったのかは........はっきりと覚えていない。
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