周りよりも固くて抜くのが難しいトコ。―――――それがあたしの決意


周りよりも簡単に抜けてしまうトコ。―――――それがあたしの...気持ち











































































BALANCE GAME






























































































朝は苦手。眠いし、頭は全然働かないし、やる気も全然起こんないし、だるいし.....その他諸々。とにかくあたしはどちらかというと夜型だから、朝は極端にテンションが低い。曰く低血圧なんじゃないかとのこと。まぁ、確かにあたしの平熱は人より大分低いからそれは間違ってないと思う。朝に体温を測るとあたしって人間だったよね?と再確認してしまうくらい低い。かなりありえない。



って、そんな前座はどうでもいいんだ。とりあえずあたしが言いたいのは朝は苦手だということである。で、今日改めて朝は苦手だと思った、今までよりもずっと朝が苦手だと思ったとでも言っておこうか。








「おはよう、
「.........おはよ、周助」








学校への登校中。後ろからあたしのよく知ってる声が聞こえて、あたしは振り向いた。すると、そこにいたのはやっぱり予想した人物と同一人物だった。そう、周助のこと。周助はいつもの無敵スマイルを絶やさずに、あたしに朝の挨拶をしてきた。そんな爽やかな周助と裏腹に朝機嫌がすこぶる悪いあたし。



元々あたしは朝機嫌が悪いって言うのに、爽やかなものを見ると反発っつーか、むっとしてくるというか.....。でも、シカトは感じが悪いしシカトは絶対しないことがあたしのポリシーだから一応挨拶を返した。



笑顔を作ったつもりだったけど、作りきれてなかったみたいで周助にはあたしが機嫌悪いことがバレた。ってか元々周助はあたしが朝機嫌が悪いこと知ってるけどね。








「機嫌悪そうだね」
「あたし、朝は苦手なの。って、周助も知ってるでしょ」
「うん。ずっと見てるからね」
「.........そんな歯の浮く台詞を朝からよく言うね。周助も」
「褒めてるの?それともけなしてるの?」
「どっちでもご自由にどうぞ」
「そっか........で、どうするの?は」
「周助こそあたしに何をどうして欲しいのさ?」
「僕?.......は僕が何をどうしてして欲しいのか知ってるくせに聞くんだね」
「それはお互い様でしょっ。それに知ってるけど、絶対してあげない」
「あ、そう」
「うん」










やっぱり周助は侮れない男だ。顔色一つも変えずにそんな言葉を言うなんて、ね。顔色変えずになんて一般人に出来るようなことじゃない。微笑んで、風が流れるようにさらりと言う周助の言葉、普通の女の子なら乙女心にきゅんときて、メロメロになるんだろうけど......あたしはそうはいかないよ。



そんな言葉一つで崩されるのはごめんだからさ。絶対にそれだけは阻止するから、あたし。だから、さらりと周助の言葉を流した。別に冗談言ってるからとか、本気じゃないとかはどうでもいい。本気でも本気じゃなくても、あたしの幸せを壊すことには違いない。



柳が風を受け止めらんないように、あたしもその言葉受け付けない。この決意は生憎頑丈で、やらかくない。周助があたしにして欲しいことも理解ってるけど、それをやってあげるほどあたしは優しくない。むしろ誰がやるかって感じ。








「.......ちょっとついてきて」
「何?めんどくさいのは嫌だかんね。ってどこ行くのよ?」
「テニス部の部室」
「....あたしは生憎帰宅部ですよ」
「いいから」








突然、何か顔つきが変わった周助がぽつりと呟く。それと同時に、あたしの腕も掴んできた。....別に痛くはないけどさ。でもいきなり掴まれたら誰だって驚くに決まってるじゃん?だから、あたしも驚いただけ。まぁ........表には出さなかったけど実は中では心臓が大きな音を立てるほど驚いてしまった。



でも、それよりも次の言葉のほうに驚いてあたしは思わず周助の顔をまじまじと見る。あたしが見た周助の顔はさっきと全然変わらない笑顔を浮かべていたけれど、周助の腹の中にはもっと別のものがある。何かはわからないし思いつかない。だからとりあえず、あたしは周助に言葉を向けた。さっき言ったとおり、シカトするのはあたしのポリシーに反するからね。それに事実を言って何が悪い。



だから、そんな起こったような声を出さないで欲しいんだけど!周助さん。それに、そんな真剣に言われたら








「.....しょーがない。」








従うしかないじゃない。いくらこのあたしでも、魔王に立ち向かえる度胸は持ってないからね。


































































「うわ、何なのこの部屋。片付けるということを知らないの?」
「一応知ってるよ。もうそろそろ片付け時だね」
「.........っつーか、よくこんな部屋にいられるね」
「そう?結構居心地はいいよ?」
「まぁ、テニス部の奴らはそうかもしれないけどさ」








仕方なく、しかも嫌々そうに(ここポイント)周助についてきたあたしが見た光景は、何コレと思わず眉をひそめてしまうくらい......汚い。タオルはそこらへんに散らばってるし、ボールもゴロゴロ転がっている。きれい好きのあたしとしては窓に溜まった埃も少し気になったけど、そこまで細かいことを言ったらどこの姑かと思われるから、あえて言わなかった。



ってかそういうことはとりあえずおいとく。早く教室に行って、世界史の小テストの勉強しなきゃいけないからね。あたし、世界史と日本史だけはどうしても頭に入らないっていうか拒絶反応を起こしてしまうタイプなんだ。だけど、今日は珍しくこんなに世界史を勉強しなきゃと思ったんだから、その珍しい決意を大切にしなきゃいけないでしょ。こんなこと滅多にないから、余計にですよ。はい。だから、あたしはふうと溜息1つ、そして周助に向かって言う。あたしから本題に入ろうとした。








「.....で。周助はあたしに何を言いたいの?」
「いきなりだね」
「ってか、今日世界史のテストあるでしょ?だからあたしも周助も勉強しなきゃいけないじゃん」
「生憎僕は昨日のうちにやったので、もうバッチリなんだけどね」
「くあー、嫌味な奴ー。こんな台詞あたしが言えないのをいいことに」
「別に嫌味を言ったんじゃない。事実を言ったまで」
「あ、そうですか」








本題に入ろうとしたのに、何故か話がそれてしまう。っていうか、何。あたしに対する嫌味ですか、それは。いや、嫌味に違いない。本人は嫌味じゃなくて事実を言ったみたいなんだけど、あたしの耳には生憎嫌味にしか聞こえない。それが無性に悔しくてしかもムカついたから、舌を軽く出して言う。



にっこりと笑う周助の目がかすかに開いた瞬間、あたしのきっと睨む目とばちりと合う。








「.......で、いつまで我慢するの?
「だーかーらー、ずっとだって言ってるじゃん。忘れたの?」
「覚えてるけど納得できない」
「どこがどう納得できないわけ?」
が必死で我慢していること自体に納得がいかない」
「そういえば、周助朝練あるんじゃない?行かなくていいの?」
「別にいい。さっき桃が僕らを見てたから、きっと手塚にも伝わってるよ」
「やだー、何か変な誤解されそうじゃない?」
「全身全霊をかけて僕が否定するから大丈夫だよ。....最も僕的には否定したくないけど」
「あら、それは安心ですな。それに付け加えてお尋ねさせてもらいますが」
「何?」
「あたしが我慢するのが気に入らない理由は何なの?」








あたしが我慢するのは、今の雰囲気を壊したくないから。あたし1つの気持ちで、壊したくなんてない。我慢して今の雰囲気が保てるというならば、あたしはずっと我慢し続ける。この気持ちは溢れる一方だけど、それでも溢れても気にしないようにしようとしてる。



しかも、気にしてどうなるの?英二の気持ちはあたしの方に向くのありえないんだから、気にした方が負けに決まってるじゃない。勝ち負けで決めるのはどうかと思うけど、でも負けたいと思う人なんていないでしょ。大抵の人は勝ちたいと願うはず。プライドが人一倍強いあたしは尚更のこと。



でも、周助は違うの?そんなあたしと違うの?今の雰囲気を壊したくないとは思わないの?勘っていうかそういうのに鋭い周助のことだから、今周助が持ってる気持ちがこの雰囲気を壊せる一種の道具であることはちゃんと理解ってるはず。そのことから考えていくと、あたしは1つの結論にたどり着く。








「周助は今の雰囲気を壊したいんだ?」
「それはない.......とは言い切れない」
「....やっぱりね」
「僕はが好きだから、の我慢しているの見るの嫌なんだよ。もう」
「見飽きたってこと?」
「そうじゃない。見てて.....すごく痛いよ」
「じゃあ、見ないで」
「そんなこと言われても、目に付くんだよ。好きな人を目で追ってしまうの、にも分かるよね?」








いつにもなく真剣な顔つきで周助は言う。それを見て、ああ周助は『本気』だと信じる気になる。最も『本気』だと分かった時点で、どうこうするつもりはないけどね。好きな人を目で追ってしまうこと、すごく理解できる。できるけど、それがどうしたの。見てて痛いと思うのは、痛いと思っているからで目に付くというのは、意識すれば目に付かなくも出来るじゃない?



それに、雰囲気を壊すというのならあたしも容赦しない。我慢し続けてやる。周助がわざとずらしたジェンガを元に戻し続けてやる。そう思うのは








「あたしの勝手でしょ。そんなの」
「確かにそうだけど」
「じゃあ、言わないで。それくらい.....一番あたしがよく分かってるよ。でも仕方ないじゃん」








仕方ないで済ましたくないけど仕方ない。あたしがよく分かってるのは事実。言葉がかみ合ってないのも事実。それでも、それが事実だと言い切れる。あたしは、嘘は決して言わない女でありたい。そんなのはどうでもいいとまではいかないけれど



...................うん、ちゃんと分かってる。我慢するというのは一見つらくて、苦しく見えるけど。それをしようとするあたしは強い人間だと思えるけど。



でも、ね。本当は違うの。確かに壊したくないから我慢してる。それは違わないけれど、あたしが我慢するのはもっと別な理由もある。.........今はまだ言わないけれど。



どうしようも....あるけどどうしようもないことなんだ。








「どうしようもなく英二が.......好きなんだもん」








好きだから、我慢する。それは間違ってることなのかな?








































































光陰矢のごとしとは昔の人もよく言ったものだ。あれから時間は過ぎ、今時計は放課後を示している。今日はそれから一回も周助と話さなかった。はそれを不思議がってたけど、どうしてかは追及しなかった。きっとは聞いちゃいけないことだとあのコなりに判断してそれを聞かなかったんだと思う。その優しさ、ありがとね。すごく嬉しいよ、本当に。世界史の小テストは結局勉強する時間がなくて散々で、ふと痛いところをつかれて癒えきってないあたしにとったら、は天使だよ。おまけにジュース奢ってくれるとまで言ってくれたもんだから、天使を昇格して女神に見える。



そしてその女神はあたしのために食堂へ行き、あたしはその女神を教室で待っている。1人ぼんやりとしながら、黒板って黒って書くけど実際緑だよねとかどうでもいいことを思っていた。そんな1人の教室に、誰かが入ってきて2人になる。その誰かとは......英二だった。








「あっれー?、1人で何してるの?」
「あたしはを待ってるの。そーいう英二こそどうしたの?部活あるんでしょ」
「うん。だけど、数学赤点とったって言ったら手塚に勉強して来いって言われた」
「きゃははは、何それ。かなりうけるー!」
「こら、そこ。笑うとこじゃないぞ!」








びしっとあたしに人差し指を突きつけて指摘する英二。怒ったような口調だけど顔は全然笑顔である。そういえば、数学赤点とったら追試あるよねー。それでそれもまた赤点とったら........恐怖が待ち受けてるもんね。手塚君って意外に優しい所もあるんだね。部員思いというか何と言うか。ま、とにかく少し手塚君に対するあたしのイメージが変化したかな。うん。



で、英二はというと「やってらんないよなー」と大きな溜息をついて、数学のプリントを机に広げてる。でも、広げただけで全くやろうとはしていない。シャーペンをくるくる回したり、あたしに数学教師の人格について語ったり、部活行きたいとか言ってたり。部活と言う言葉を聞いて、少し周助が浮かんだけど、気にしないふり気にしないふりっと。



そして周助が浮かんだら、連想ゲームみたいにの顔も浮かんできた。そーいえば、が待っててといって食堂に行ってから大分時間が経つというのに、まだ帰ってこない。英二のプリントはまだ真っ白だけど、辺りが少し薄暗くなってきていることが大分時間が経つと言うことを示してる。








、遅いなぁ。もしかして階段から落ちてたりするのかな」
「ちょっとちょっと。そんな怖いこと言うなよなー。本当に落ちてたらどうするのさ?」
「そのときは菊丸王子が助けに行けばいいでしょ」








段々心配になってきたあたしがつい独り言を漏らすと、苦笑交じりの声で英二の反応が返ってきた。確かにあたしの言葉はありえないと言い切れないから自分で言ってて怖くなる。あのコ、本当にドジっていうかありえないことをやらかすコだからね。ま、そういうところもあのコの魅力の1つ。男に守ってあげたいと思わせる魔力とも言えるね。ああ、そうじゃん。ここにいた、その魅力の虜になった男が。



それに気づいたあたしは、その男をからかうように言った。自分の気持ちを無視して言ったから、何だか得体の知れない気持ちがあたしの中を駆け巡る。でも、あたしの大事な親友を助けて欲しいと思ってるのは事実なんだけど。








「........俺、やっぱが好きだ」
「そんなの知ってるよ。あ、再確認ってやつ?何かいいことあったんだ?」
「そうじゃないけど....でもやっぱり好きだ」
「そうじゃなかったらやっぱりと言う言葉当てはまらないよ?もう、きっぱりと言い切っちゃえばいいんだよ。」
「俺、が好き」
「合格。に伝わるかどうかは確信できないけどねー」
「うっ、それを言っちゃダメだかんなっ!禁句だぞっ!」








あたしの言葉を聞いた例の男は、元々やる気のなかった手を完全に止め、真顔であたしにこう言った。そんなの分かりきってることであり、英二もあたしがそれを知ってるのを分かって言ってるということだから、改めてそう言う訳をあたしは問う。でも、何も訳はないらしい。



まぁ、理屈じゃないこともある。だから、あたしは別に追及せずちょっと気になった点をいってみた。で、それを訂正するようにはっきりと言った英二の顔。すごく『男』の顔をしていて、ドキっとしたことは言うまでもない。高鳴る心臓を無視するのは大変で、その大変なコトをしながらあたしは真剣な空気を茶化すようなことを言った。それを聞いて、むきになって言う英二。そんな英二が可笑しくて、あたしは笑いながら言う。



このとき、自分の気持ちを我慢することが大変だと実感した。もしかしたら周助は.............そのことをあたしに言いたかったのかもしれない。それでも、あたしはそれをやり通そうとするけどね。








「応援してるよ、英二」
「さんきゅー♪ついでに、数学も援護して?」
「それは自分でやりな」
「.........ケチ」








大丈夫。


まだあたし、笑える。




まだあたし、心から応援できる。その応援が力を持つものなのかは別として。























































NEXT

BACK