崩した後に何かが残るという希望を捨てきれないのは


やっぱり僕は思い上がりすぎだということなのだろうか













































































































































BALANCE GAME




















































































































どうしようもなく溢れてくるこの欲望........いや我侭というべきだろうか。きっとそうだ。英二の中にも僕と同じ何かがあることに気づいた昨日、僕の頭をよぎった1つの思いが膨張しだして止まらない。



アクセルがかかりっぱなしで、ブレーキをかかることを知らないこの思いは、言ってみれば僕のため。僕が逃げるためのミチシルベ。その道の先に待っているのは......後悔だ。予感の中身も大体予測もつくし、僕もそれは望まないし望みたくもない。このままでいられたらそれが一番いいだからその道の先に待っているのは後悔だ。とてつもなく高い高波のような後悔。



だけど今、僕はそれを壊そうとしている。後悔へのミチシルベを頼りに歩き始めている。その証拠にに痛いことを言ってしまうんだ。好きだからの無理やりの理由で自分の気持ちを押し付けてしまうんだ。そんな自分に最近自己嫌悪に陥ってくる。



じゃあ、やらなきゃいいじゃんと誰もが口をそろえて言うだろう。それをしてしまう僕は、結構脆く器がちゃんとできないんだと思う。だから自分1人で苦しむのは苦しくて我慢できないし、見てて痛いのは、もう見たくないと拒絶反応が起こってしまうんだ。それに耐え切れるほど僕の器は頑丈に出来てないから、本質的の我慢というものができないんだ。



転んだ痛みとか襲ってくる眠気とかそういうのは我慢できるけど、好きな人の痛々しい姿とかを見ているのは我慢できない。情けない話だけどね。



それは、崩れた後にも何かがきっと残る....それがまた日常だという勝手な思い込みをしているからかもしれない。








「不二?どうした?」
「英二......」
「今日、不二朝練来なかっただろー?何してたんだよー?」
「......ちょっとね」
「ちょっとって...まぁ、手塚は何にも言ってなかったけどさ」
「そうなんだ?」
「うん、珍しいこともあるなとかは言ってたけど」
「.......そっか」
「でも、きっと放課後練習行ったらグラウンド走らされるよん」
「覚悟しとくよ」
「そうした方が身の為だなっ」








そんな底のないことを考えていた僕とは正反対の声が聞こえてきた。英二の声だ。何やらいつもより明るさが増している気がする。きっと、イイコトがあったんだろうなぁなんてちょっと羨ましくもなる。けど、そんな自分は本当に醜いから........普段の顔を装って、英二の顔を見る。



するとやはり何かイイコトがあったような顔をしていた。にかって笑うその屈託のない笑顔、それを見ると余計に自分が嫌になってくるから、目線は英二より少し下。だけど、そんな行為も英二には無駄だった。何故ならにやにやしながら面白そうな顔で僕を覗き込んでくるからね。



まぁ、確かに放課後行ったらグラウンドを何周走らされるかと覚悟しとかなきゃいけないけどね。けらけらと笑う英二にそのことを思い出させてくれたことに対する感謝の気持ちを抱く



...........ってあれ?今ちょっと気づいたことがある。いつもと同じようで違うもの。見慣れてるけど違和感を覚えるようなもの



それは








「.......それにしても英二、今日のテンションはいつもと違うね。何かあった?」








そう、違う。いつもと違う。何が違うって聞かれても抽象的すぎて答えられないけれど、だけど...違うよ。いつもと。何て言えばいいんだろう.......さっきは屈託のない笑顔って言ったけど、それに気づいてからの英二の笑顔は......無理しているみたいに見える。



必死に何かを押し堪えて、取り繕うようなその笑顔。その笑顔を見ると、どこかの誰かを思い出してぐっと痛みを堪えなきゃいけない羽目になる。ああ....やっぱりこういうのを我慢するのは苦手だ。



そして僕がそう言うと、英二は目を丸くした。何故か驚いたみたい。これは意表をついたって奴かな?英二は真っ直ぐに僕を見てくれていた目線を突然逸らし、もごもごと言葉にならない何かを発してる。もっと大きな声で言ってと頼んでも、話すどころか英二は黙ってしまった。



......これはもしかして、いやもしかしなくても英二の痛いところをついたということなんだろうか。英二の言葉はない、そのことからその確率が極めて高い。



英二の中で何かがおきてる、今。それがもしかして......と思い当たる節があるから、僕は何だかぞくっと凍るような冷たさを感じた。確信はないけど、そうだったとしたら.......もう、終わったのかもしれない。きっと。



だって、珍しく英二が真剣な顔をしているのだから。何もないわけはない








「あのさ、例えばの話だけどー.....」
「何?」
「言っとくけど本当に例えばの話だかんなっ!!」
「はいはい。分かったから、その例えばの話って何?」








くすっと笑い、僕はその『例えばの話』を英二に促す。こんな軽々しいことを出来てしまったのは、きっと英二がこんな言葉を言うとは思わなかったから。



人間は時々、思わぬ言葉を発する。それが痛かったり、嬉しかったり、悲しくなったりさせる。それが言葉の持つ重さを実感する時だと思う。現に僕は今其の言葉の持つ重さを感じた。そして、その言葉は僕を驚かせるような言葉だった。








「.........自分の好きな人の恋を本当に応援することが出来る人って......いるのかな?」
「.......え.......」
「い、いやさ!応援しなきゃいけないのは分かってるんだけど!応援しようと思ってるんだけど!!!.........でもさぁ、何かやっぱり.......なぁ.....」








頬を人差し指で掻きながら、英二は俯いている。そして、その英二の顔は困ったような笑顔。苦笑い気味に、「いきなり何言ってるんだよって感じだよなっ!ごめん!忘れて!!」と何かをかみ殺したような英二の声は、僕の予想を肯定できるかもしれないという一つの証拠になり得る。



そしてごめんだけど英二。君がこう言ったこと忘れることは.....できないよ。



そりゃ僕だって、応援しようと思ってる。思ってるけど、できない。というよりしたくないのが本音である。それに僕の意志はそれとは違う方向に突き進む。これはきっと、英二と同じような心境だろう。



それに付け加えると、英二の『例えばの話』は英二の『本当の話』だって承知済みだからね。自分の好きな人の恋を本当に応援することが出来る人.....いないとは言い切れないけど、そんなのはごく少数なんじゃないだろうか。結局僕も含めて人間は、自分の恋を叶えよう、実らせようとしているのが大半なんだ。きっと。



それでも、いないと否定できないのは僕の好きな人がそうだから.....なんだよね。



............そしてそれを可能にするということは








「.............から....」
「ん?何なに?」
「よっぽど心の強いってことだよね。自分の幸せより、他人の幸せを選べるってことだから」
「は?」








自分の狭さがたまらなく嫌になってくるよ






































今日は短く感じられた。だって、気づいたらもう放課後なんだからね。光陰矢のごとし、よく言ったものだ。これを最初に言い出した人、僕すごく尊敬するよ。全く。



そして、今日が短く感じられた理由はやはり英二の言葉が心に引っかかっていたからであり、それは答えのないことで、答えのないものの答えを考えていると果てしなく深いところまでつっこんでいってしまう。そして、そこから抜け出そうとするのは決して容易ではなく、時間がかなりかかるためでもある。



そして、今僕は抜け出しきれていない状態であり、そんな状態ながらグラウンドを走っていた。その理由はやはり今日の朝練をサボったせいか、しかめっつらをした手塚に『グラウンド20周』と言われたからである。今日はそれも悪くないと思ったので『プラス5周走るよ。』とやけに前向きな姿勢でグラウンドを走り始めた僕の考えは、走れば何も考えずに済むという浅はかな考えであったが、それが間違いだと気づくのにそう時間を有しなかった。



走れば走るほど、ゴールが見えなくて苦しくなる。



前は暗くて見えない。後ろは跡形もない。



それに気づくとさらに苦しくて........ダメだ。もう限界に近いところまで来ている。








「不二!!!」
「!?」
「.......もうやめろよ」
「大石?」








突然現実に引き戻された気がした。はっと気づくと、僕は大石に腕を掴まれており、僕の足はぴたりと止まっていた。止まると同時に、走った疲れがどっと襲い掛かってくる。呼吸は変に乱れ、酸素が足りないせいか、頭が一瞬くらっとした。一瞬目の前は暗くなり、一瞬で目の前は明るくなる。


そして、見えたのは、真剣な顔をして僕を真っ直ぐ見る大石だった。必死に僕に何かを訴える声に眼差しを、全部僕に向けて、言葉を繋ぎ合わせる。その間も僕の呼吸は乱れたままであった。








「........不二。お前、25周どころかもっと走ってるぞ」
「え....」
「何かやけになって、必死で走ってた...それが悪いってわけじゃないけど、不二にしては不自然だ」
「........」
「........頭冷やして、休憩した方がいいよ」








ぽんと僕の手にタオルを押し付け、大石は爽やかな笑顔も僕に向けた。そして、『1年!声小さいぞ!』とテニスコートに向かって叫び、そのままテニスコートの方に足を動かしていった。



そして、残された僕はというと大石から受け取ったタオルに自分の顔をうずめてその場で突っ立ったままだった。洗濯したてのタオルはいい匂いがしてほっとする。そのタオルの白さにも安堵感も抱いた。



そうだ。夢ばかり見ていてはいけない。       こと
現実を見据えなきゃ...........これからの現実を見逃すわけにはいかない。








「...........頭冷やそうかな」








1人で呟き、勝手に歩き出す。向かうは向こうの水飲み場。冷たい水で頭を冷やして、悪い夢から覚めなきゃいけない。言い訳がましいけど、それは逃げるということじゃなくて、現実を見なきゃいけないから。一応強調しとく。



テニスコートを通り過ぎると、手塚が英二を怒鳴っているのが見えた。それに海堂と桃がケンカしていて、それをタカさんが止めようとしているのも、越前と乾が何か話しているのも見えた。越前と乾が何か話しているのに少し興味があったけど、それらを横切って僕は頭を冷やすために水飲み場へと急ぐ。歩くスピードを少しあげる。それは、早くしないといくら冷たくても冷やせないかもしれないという不安を少し持ったからである。



..................だけど、それは阻止された何故なら、僕を呼ぶ声が後ろから聞こえてきたからだ。








「周ちゃん!!」








それもよく知っている、高くて澄んだ声が後ろから聞こえてきたものだから、僕は思わず足を止め振り返る。



ああ......やっぱりあのコだ。後ろで大きく手を振りながら、僕の方に走ってきている女の子は.......だ。もう1つの手で、缶ジュースを2つ抱えながら走るを、僕はこけないかなと少し心配したが....良かった。、こけなかったね。ほっとした安心からか、思わず笑みを溢す僕。僕はに問い掛けた。








、どうかしたの?」
「ううん。別にどうもしてないけど、周ちゃんの姿が見えたから呼んでみただけ」
「あ、そうなんだ」
「うん!そうだよっ」
「へぇ、じゃあその手に持ってるのは?」
「あ、が元気なかったからジュースを奢ってあげようと思ってさっき食堂で買ってきたのっ!」
「え....が?」
「うん。朝から元気がないの。本人は世界史のテストが散々だったからちょっとへこんでるだけって言ってたんだけど.......でも、私違う気がするんだよねぇ。」









の口からの名前を聞いて、またあのどす黒い気持ちに覆われそうになる。だけど、の笑顔がそれと対照的なものだったから、それにすがりついて支配されそうになるのに対して抵抗する。



....そーいえばあれから全然喋らなかったから気づかなかったけど....元気がない...っていうのは完全に僕のせいだよね。そう思うと、形になれない罪悪感が僕の胸を焦がし始める。



しかし、そんな僕にお構いなしには腕を組んで考える仕草をする。何気にドキッとすることを言うから、次にがいう言葉はなんだろうかと内心ヒヤヒヤしてくる。ある意味、冷たい水で頭を冷やさなくてもいいんじゃないかっていうくらい冷たいモノが僕の頭を掠っていく。予想ができないことが起こるのって本当に怖い。そして、は予想ができないことを仕出かすもしくは言うコだ。








「...............あのね。私思うんだけどね」
「ん?」
「強い人ってかわいそうだよね.....」
「え.....?」
「だってねっ!例えばの話、強いライオンと弱いネズミがいたとするでしょ?」
「うん」
「じゃあ、どっちを守ろうとする?」
「............弱いネズミかな?」
            ネズミ                             ライオン           
「でしょ?普通弱い方を守るよね。でも.........強い方は?守ってくれるモノ.....あるのかなぁ.....。」









......の言葉で冷たいモノが僕の頭の中を直で殴った......ような気がした。そうだ.......。そうだよ...........。



弱いものばっかり守られて、強いものは........守ってもらえない。それをある人物に当てはめたとしたのなら








「だから、強いモノは誰にも守ってもらえないもの。それに....自分の守り方も知らないもの。
          ひとり
 .........孤独で全部をしなきゃいけないんだもん.......。」




 



その時、1羽の鳥が鳴いた。


きっと、きっと、その鳥も孤独でどこかに旅立つのだろう。


行く先のあてもなく、ただこの広い空を彷徨い続けるのだろう。







自分の居場所を探して





































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