「あー.........。」
「これは...俺でも難しそうだぜ?」
「ですよねぇ......。」


そう呟いて限りなく青い空を見上げるあたし
そしてその次に、目の前の木に目をうつす。
最後は木に引っかかっている白いプリント達

あたしとその隣におられる方は同時に溜息をついた。



























飛ばない副会長と跳ねる男

































こんなことになったのは
全部全部
会長のせいだったりもする。




「おい。そこのプリント
取れ。」
「会長、少しは自分で動いたらどうです?...はい、どーぞ!」
「おう。あと、
あれも取れ。」
「はいはい。分かりましたよぅ。...って
あれとは何ですか?
「それくらい分かれよ。
バカ。」
「(こほん)スミマセンが、
バカなあたしには理解できなかったので、教えていただけますか?」
「てめぇ、何か
ムカツく。」
気のせいじゃありませんか?




今日は珍しい日だ。
もっと言えば記念すべき日になるかもしれない。いや、なるよ。絶対。
だって、会長が
珍しくこの生徒会室の会長専用の椅子に座っておられるのだから。
きっと明日は雨でしょう。もしかしたら雷まで...あ、雪も降るかもしれない!
なんていう想像がつい膨らんでしまう、今日も元気に
パシらされるです。


......会長が来てくだされば、パシらされることなんて当然のことなのであえて文句は言いません。
でも、『取れ』ってアナタ、せめて『取ってくれない』という言葉を使いませんか?
ああ、そうですか。アナタは
文字から七文字の差である五文字を言うのも
めんどくさがるのですか。
.......これはワタクシ論で、何とも言えませんが。
バカな女は嫌いじゃないと以前、会長は仰っていたので別に言われても気にしませんが。
そんな言葉を発するあたしがムカツクと言うのは、紛れもなく事実ではありますが。







とりあえず、ごちゃごちゃという考えは捨てまして
会長、プリントお願いします。






「.......何だこの山は?」
「会長が
サボってた間に溜まった書類です。」
「俺はサボってねぇ。
部長という重大な役割の為、部活に行ってた」
「まずアナタは生徒会長様だということをお忘れにならないで下さいね。」






にこっとあたしが笑っていうと、会長は舌打ちをした。
そして、仕方なさそうにプリント1枚1枚に目を通す。

良かった。
自分の職業を覚えてくださっていて。

そんなプリントの山を目の前にして不満そうに目を通す会長も
なかなか素敵で、好きですよっ。


あ、あと氷帝って結構有名進学校で、行事も活発だから書類がたくさんある。
何か高等部からのやつとか、この前の球技大会のやつとかね。
結局1-1は
ドッチボールで、1-2はハンドボールに決定したから、安心してね。
はぁ...あたしもどれだけこれらに悩まされてきたことか。


これもほぼ、っていうか全部会長に押し付けられたせいですが





「っていうか、ここ空気悪っ。会長、窓開けますね。」
「....分かったから、
これ半分お前がやれ。」
「会長こそ話の筋合ってないじゃないですか。」





ぶつぶつ何かを言ってる会長を背に
あたしは生徒会室の窓を開けた。


あー...っていうか、最近生徒会室の掃除してないからなー。
会長に仕事を押し付けられたせいで忙しかったし。
すっごくほこりっぽいんだけど、この教室。
また今度、掃除しなきゃ...。


今度といってもいつになるか分からないけど!!
だって、
会長不定期であたしに何かを押し付けるんだもん。


そうこう思うと、窓から入ってくる風が気持ちいいね。うん。




!窓閉めろ!!」
「へ?」
「早く!!」
「一体どうしたんですかぁ、会長。」




いきなり会長の慌てた声が聞こえた。
会長が慌てるなんて、
珍しいにもほどがあるからあたしはつい間抜けな声を出してしまう。
で、
そんな会長も見てみたいと思ったから
会長の方に振り向いてみる。


すると






「うわっ!?」
「.......何やってんだか。」






あたしの横を白い羽根を持ったプリントたちが通り過ぎていきましたとさ。
しかも会長は慌てた様子じゃなくて、額に手を当てて
呆れた様子でございましたし。


.......ああ、空へ舞い上がる白いプリントって
なんて美しいのでしょう。
空の青さとプリントの白さが生み出す
絶妙な色合いがいいですね。
今、
きっとプリントたちは空に浮かぶ雲の気持ちが分かったでしょうね。
あたしもその気持ちを分かってみたい.....。




「おい。」

「.......は、はい。」





でも、現実はそう甘くない。
あたしが分かるのは雲の気持ちではなく、
雪女に氷付けにされる前の村人の気持ち

冷たい空気に囲まれて、自分の運命を悟る時のあの気持ち。
冷たくて、怖くて、逃げたくて、でも逃げれないから諦めるしかない。
だけど、そんなの嫌だ。どうしたらいいのだろうという気持ち。
雪女に何をされるか分かっている村人の気持ちがよく分かる。



だって、次の会長の言葉は





「拾って来い。」





ですもんねぇ。全く。
本当に期待を裏切らないアナタ、大好きです。
しかも、あたしの
黒い笑顔の真似ですか?
笑顔を取り繕っても、口元が引きつってますよ?




「早く拾って来い。」
「何であたしなんですかー!あたしより会長の方が身長高いじゃないですか!」
お前が窓を開けたせいで、プリントが飛んだんだろ?責任取れ。」
「えー、
会長がプリントをちゃんと押さえてなかったせ
「いいから早く拾って来い。」




きゃあ、怒ったあなたも素敵でございますよ。会長。
そんなアナタに免じて
今日もまた、あたしはアナタにこき使われてやりますよ。
......っていうか、
逆らえないだけなんだけどねっ!!会長の威厳に
勝てないだけ
なんだけどねっ!!


でも、きっとあたしには明るい未来が待ってるはずだよね!!







◇◆◇◆◇◆◇








「1枚、2枚、3枚、15枚......。」




あら、ここにも。
ほら、あっちにも。

プリントが落ちてるわ。
それを1枚ずつ拾うあたしって、
何てけなげなのかしら。



.........
ごめん。プリント拾いすぎて、頭いかれてきた。
ちなみに言っとくけど、あたしの
理屈は理屈じゃないからね。
何だョそれって言われても、あたしも答えられないからその質問は勘弁ね。



っていうか、あー......
プリントの白さが目に入って痛い。
っていうか、疲れた。1枚1枚拾うの。
しかも後から思えば、
3枚の次は4枚だし!!
15枚もまだ集まってないっつーの。




「はぁ.......あの超我侭なお坊ちゃまは..!!!」
「まぁまぁ、押さえて押さえて。」
「もう、
十分押さえてるんですけど!!あー、怒りが込み上げてきたーっ!」
「あ、俺も分かる。アイツ、たまにムカツくだろ?」
「たまにじゃなくて
いつもですよっ!全く............へ?
「どーした?」




.......あれ?
.........あれれ?
............あれれれ?


ちょっと待って。
あたし.....今
誰と会話してたの?


独り言のはずが、自然に返事が返って来て
会話に発展して
もうすぐ
愚痴になりそうで.....。


それは答えになってない。
誰だろって自分が自分に聞いてるの。
.......虚しいのは分かってるから、
ツッコミいらない。


えっと気を取り直して......
この声は.......






「向日先輩?」
「あれ、もしかして気づいてなかった?」
「今、気づきました。」
「何だよぅ、俺なんか一目見ただけで誰だか分かったぜ?
跡部のお付きのちゃんだって。」
「それ、あたしじゃありませんよ。会長のお付きになった覚えはありませんし。」
「んな怒るなよ。言ってみただけだって。」
「じゃあ、向日先輩は本当はあたしのことどう思ってるんです。」
「跡部のパシリ。」
さすが忍足先輩とダブルス組んでるだけありますねー。同じこと言ってますよ。」
当たり前だ。俺と侑士は親友だかんなっ。」



赤の混じったおかっぱ頭
あまり高くない背
ぴょこぴょこと落ち着きのない動作


これはどこからどう見ても、向日岳人先輩ですね。
忍足先輩と同じことを言うのが決め手です。


っていうか、お付きって。
会長にはあたしがお付きにならなくても、
いっぱいお付きの方々がいるじゃないですか。
だから、わざわざあたしがお付きになる必要はどこにもございません。
それは、パシリについても言えることでございますよ。向日先輩。


あたし、向日先輩が本気でそう思っていないことを信じてますのであえて言いませんが。






「で、ちゃんは何してるんだ?」
「かくかくしかじかで、プリントを集めてるんです。」
「へー、なるほど。大変だな。」
「え、今ので分かったんですか?向日先輩。」
「おう。要は
こき使われてるんだろ?」




先輩。エスパーですか?

どうして分かったんですか。
今、向日先輩のこと尊敬しました。
すごい人だと認識しました。





向日先輩、お見事です。







「......そーいえば、先輩は何なさろうと?」
ちゃんをからかおうと。」
「いや、そうじゃなくって。」

「ん。俺は今、部活の休憩時間だから散歩してただけ。で、ちゃんの姿が見えた
 から、話し掛けてみたってわけ。」
「さようでございますか。」
「さようでございます、よ。....ってあ?」
「?」







にかっと笑いながら、あたしに言う向日先輩
向日先輩の言葉で、あたしはからかわれキャラだと確信しました
確信できる事実をありがとうございます。向日先輩。
アナタは
嘘を言う方ではありませんから、余計信じることが出来ました。

............って、あたしって一体何なの。

という疑問はさておき




向日先輩がふと目線を上にあげた。
その作用で、向日先輩の整った髪が整ったまま位置を変える。


それにつられて、あたしも目線をあげる。
生憎、あたしの髪は向日先輩のようにはいかなかったけど。



でも、あたしと向日先輩
見たものと思ったことは一致していると思う。



目の前に聳え立つ、若葉が鮮やかな木に引っかかってる白いプリント達。


わぁ、何てことでしょうって。











◆◇◆◇◆◇◆










「.......これも拾えってことなんでしょーか?」
「たぶん、
あの跡部のことだかんな....。きっと...。」
「あははは....。」
落ち着けちゃん。っていうか、これ何のプリント?」
「きっと、幼・中・高・大、交流会に必要なプリントの
原稿なんですけど。」
「あっちゃー。そりゃ、確実に持っていかなきゃ跡部の奴怒るぞ?」
「ですよねぇ。」





そして、今。
あたしと向日先輩は呆然と木を見上げてる。

若葉の若草色と白いプリントの色合いもいいもんだね。
なんて思ってる暇はない。





「ど、どーしましょ。あたし、身長低いんですけど!」
「俺も。」
「先輩、
もっと伸びてください!!
「無茶言うな。」



無茶を承知でお願いしてるんです!あたしは!



だって、今のあたしの身長じゃ届かないんだもん。
長太郎とかだったら届きそうかもしれないけど。


それに、あたし木登りできない...。
だって、必要ないと思ってたんだもん!!
.....こんなことになるんなら
小学校の時真面目に登り棒の練習をしとけばよかった。






「でも、ま。」
「へ?」
「無理っていうことはなさそうだな。」
「え、向日先輩
身長低いのに?
「気にしていることをずけずけ言うな。」







ごめんなさい。それは、謝ります。
気にしてたんですね...向日先輩。
傷を抉るようなことをして本当にごめんなさい。

でも、あたし
向日先輩のその発言に驚いてしまって。






ちゃんは俺を誰だと思ってるんだ?」
「向日先輩。」
「そうだけど。そうじゃなくて。」
「.......あ!」
「気づいたみたいだなっ。」







.........そうでした。そうでした。



向日岳人先輩は
とても優れた跳躍力をお持ちになられておりました。


そうだ。向日先輩の跳躍力といったら
校内一を誇るんだった。


それを生かして、テニスをする。
華麗に宙を舞い、相手を翻弄して試合を奪う。


そんな方でした。
向日先輩と言う方は。







「よーっし。行くぞっ。」






あたしが、そう気づいた時
すでに向日先輩は飛ぶ体制に入っていました。



























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