どうせ考えるなら
明るい方向で考えたほうがきっと楽しくなれるね。
飛 ば な い 副 会 長 と 跳 ね る 男
向日先輩はすごい人だ。
だって、軽々と木に引っかかっているプリントを取ってくれるのだから。
「ほっと。これで全部だな。」
「うわぁ、すごいです!向日先輩!」
「だてにあの世は見てねぇからなっ!」
「..........誰の台詞をパチったんですか。」
「ちょっと言ってみただけじゃん。....分かった分ーっかった。」
「何がですか?」
「だてにMr.空飛ぶネズミと呼ばれてねぇからなっに訂正しとくぜ。」
「ああ、それなら分かる気がします!」
「...............冗談だってば。」
「え?でもこの前、滝先輩が言ってましたよ?」
「本気かよ。」
向日先輩曰く、本気と書いてマジと読むらしいです。
あたしも恩人様を見習って、本気をマジと読もうと思います。
いや、そんなのはおいといて
あたし、
夢でも見ているような気分に浸っております。
自然と手も動いて、パチパチという音も鳴らしております。
そこでサルの人形を思い出したくなる気持ちも分かりますが、お控え願いたい。
確かに人間もサルから進化しましたが、そう思われるのは嫌なんで。嫌なもんは嫌なんで。
.....話がずれてる。戻さなきゃ。
「でも、すごかったです!向日先輩!!それにありがとうございます!」
「そんなに褒められると、さすがに俺も照れるからよせよ。」
「あんなすごいことができて、謙虚におられるところもさらにすごいです!」
そう、あたしが夢を見てた錯角に陥っていたのは約五分間の間。
その間夢は夜より昼の方が短く、そして驚くものだとあたしは学んだ。
それプラス、あたしは確信した。
この世には、超人的な能力をもった人がいるのだと。
そしてその人が目の前にいるのだと。
その人こと向日先輩は
五分間で木に引っかかったプリントを全部取ってくれた
すごい人尚且つ心優しい方だと。
そんな人を誰が恩人様と呼ばずにいられましょうか。
「ほい。良かったなっ。これで跡部に怒られずに済むじゃん。」
「はい、あの人遣いの荒すぎる生徒会長様に怒られずに済むのも全部アナタ様のおかげです!
本当にありがとうございました!!」
「はは、いいっていいって。案外思ったほど難しくなかったしなっ!」
「そうなんですかっ!?」
「だって、少し跳ねただけで全部取れたんだぜ?」
「向日先輩の少しって、あたしのどれくらいにあたるんでしょう?」
そんなこと言っちゃいけません。恩人様。
凡人のあたしがミジメになってくるじゃありませんか。
........でも、本当にすごかった。
身長はあたしと同じくらいなのに(ちょっとあたしの方が高いかもしれない)
それなのに、あのジャンプ力といったら....
あたしの2倍はあるね、絶対。
それを少しと言い張るアナタ様の底力はどれくらいすごいものなんでしょう。
本当にすごい。
身長低くても、これだけジャンプ力があれば
バスケットボールでもバレーボールでも活躍すること間違いなしだね。
最も、やっぱり向日先輩にはテニスが向いているだろうけど。
......でも、まだあたしは驚きの余韻に浸ってしまってる。
だって、すごいもん。向日先輩。
身長低い、それがどーしたっていう象徴に見えるもん。(何だそれ)
「あ」
「?」
......って待った。
あたし、お礼しか言ってないじゃん。
このご恩は何かして返さないといけないしっ!
っていうか、あたしの性格上借りを作るのが嫌なだけなんだけど!!
「あ、あの!お礼に何かあたしにできることありませんか!?」
「あ?」
「だって、向日先輩がここまでやって下さったんですよ!お礼だけじゃ頭が上がらない
です!!」
「そうかぁ?」
「そうです。」
「じゃあ......今度バンジージャンプに行くのついてきて。」
「もしかして1人が寂しいんですか。」
「うっ、鋭いなっ。だって、侑士とか来てくれないんだぜ?親友だって言うのに。」
「そりゃまた何故でしょうかね?」
「きょうしょこうふしょうなんだって。」
「言えてませんよ、向日先輩。高所恐怖症でしょ。」
「それそれ。で、宍戸は休みの日でも練習熱心だし、ジローは寝てるだろ。で、跡部はもちろん『何で俺様がそんなことしなきゃいけねぇんだよ』って言うに決まってるし。」
「あ、向日先輩会長の真似上手いですね!そっくりですよ!!」
「あんまり嬉しくねぇけどなっ!」
「ありゃりゃ..褒めたんですけどね...。あ、長太郎とか樺ちゃんとか下克上野郎という後輩もいらっしゃるんじゃ?」
「ツッコミどころがありすぎて下克上野郎はどうも馬が合わねぇ。」
「あー、馬が合わない奴とは行きたくありませんよねー。」
「だよな。で、樺地は跡部といつも一緒にいるし。長太郎はこの前、ついて来てくれたんだけど、半泣きだったからなー。」
「(長太郎...哀れだね、アンタ).......。」
「って、それは半分冗談で。」
「先輩、冗談好きですねぇ。」
「世の中それがなきゃ、堅苦しくなるに決まってるんだろっ!そーいうちゃんは話反らすのが上手いよなー。」
「きゃ、それほどでも。」
「もっと自信持ちなって。あ、それよりさー..。」
「(持ってどうするんだ。)何でしょう?」
「バンドエード持ってない?」
長い長い会話の末
向日先輩が唐突にそんなことを言い出した。
それを聞いて、あたしがへ?と拍子抜けしたような顔をすると
向日先輩が長袖のユニフォームをめくって、あたしに腕を見せた。
わー、細くて白い腕してるなんて羨ましいと思ったことは余談なんだけど。
で、そんな向日先輩の腕には切り傷が出来ていた。
きっとプリントを取ってくれたとき、木の枝に引っかかれたんだと思う。
向日先輩の肌の色とはほぼ対照的な赤い筋が何とも痛々しい....。
大きな傷も痛いけど、そういう微妙な傷も痛いんだよね。
わー...ごめんなさい!!向日先輩!!
「あ、ありますよ!ちょっと待ってくださいね!!」
「おー、さんきゅー。」
「本当にすみません。あたしのせいで....。」
「そんなちょっとの傷で大げさな。」
「恩人様にちょっとの傷をつけるあたしは大馬鹿者ですよ。..あ、でも消毒するのが先ですね...。」
「あー、大丈夫だって。とりあえず、ユニフォームに血をつけたくないから頂戴。」
「あ、はい。どうぞ。」
そう言って、あたしは向日先輩にバンドエードを渡した。
こんな時、いつも持ってて良かったと思う。あたし、えらい!みたいな。
いや、そこまではいいすぎだけど。
で、あたしからバンドエードを受け取った向日先輩は
器用に口で白い部分を剥がし、切り傷にぴたりと貼った。
そんな先輩を見て、あたしは気の聞かない奴だと再確認したのは言うまでもない。
っていうか、あたしが貼ってあげたらよかったんだよね。うん。
ごめんなさい第二弾でございますよ、向日先輩。
「でも、何でちゃんはバンドエード持ち歩いてるんだ?」
「へ?」
「だって、そんなキャラじゃないじゃん。」
「うわぁ、今グサッときましたよー。って、いいじゃないですか!キャラじゃない奴が持ってても!」
「じゃなくて、俺は理由が聞きたいんだってば。」
「.......え....聞きたいですか?」
「聞きたい。」
何て言うの.......向日先輩って
結構痛いところついてくるよね。
確かにバンドエードを持ち歩くのって、あたしのキャラに合ってないのは分かる。
だってあたし、清楚なお嬢様じゃないもの。
何かって言うと、苦労している労働者って感じだし。
でも、これにはちゃんとしたあたしなりの理由がある。
それをあまりにも聞きたそうな顔で向日先輩が聞いてくるから
.........教えましょうか。恩人様だしね。
.........だけど、笑わないで下さいね。
キャラじゃないことを言いますから。
「あのですねー。会長はああ見えても、プリントを扱うのが下手なんですよねー。」
「.....それはどういう意味で。」
「そのままの意味ですよ。あたしに仕事を押し付けすぎて、いざ自分がプリントを扱うと指をたまにプリントで切っちゃうんですよね。」
「あの跡部が?」
「はい、あの会長が。」
「へぇー。」
「でも、あの会長気まぐれだからいつ生徒会室にプリントを扱いに来るか分からないじゃないですか。」
「まぁな。アイツ、気まぐれで学校を休日にさせる奴だもんな。」
「はい。だから、いつ来てもいいようにと思って。で、すぐに取り出せるようにポケットに入れてあるんです。」
.......今、ちょっとあたし
乙女チックな発言しましたよね。
うわぁ、ハズイハズイ。
キャラじゃないことをすると、無性に恥ずかしくなってくる!
そりゃ、本当のことなんだけど!!
会長、自分の都合で学校を休みにするような方なんだけど!!
あたしだって、恋する乙女だからたまにはそう乙女チックになってみたかっただけなんだけど!
「ふーん、ちゃんにも女らしいとこがあったんだな。」
「どういう意味ですか。」
「これもそのまんまの意味。」
そう言って、向日先輩はけらけら笑う。
何がおかしいんですかと聞きたいけれど、確かに今のあたしはキャラにあってなくて可笑しいと思う。
でも!それでも!!せっかくあたしが恥をしのんで、そう言ってみたのに
それを笑い飛ばすんですか。向日先輩は。
..........でも、向日先輩の笑い方はそんなんじゃないんだよね。
本当に楽しいから笑うみたいな人だから、責めらんない。
忍足先輩の時みたいに、不快になることもない。
はぁ....やっぱりすごい人だな。向日先輩って。
そのノリについていけるあたしもすごいって....言って欲しかったりもするけれど。
「じゃ、そんなちゃんにいいコト教えてあげる。」
「何をですか?」
「ちゃん、跳んでみそ。」
「は?」
でました。彼の十八番。
それを聞くと、自然に笑顔になってくるよね。
本気でそう言ってる向日先輩と、あたしが重い女だと言うことが重なって。
だけど、それに従って跳んでみるあたしって素直な子じゃないですか。
「ほら、もっと跳んでみそ。」
「あたし、向日先輩みたいにそんな高く飛べませんよ。」
「それそれそれ!!」
「!?」
ぴょんぴょんと跳ねる向日先輩
ぴょんとしか飛べないあたし
何でそんな軽く飛べるんでしょう。このお方。
あたしには絶対無理。
それを言葉に出したとき、向日先輩はいきなり大声を出した。
あたしは思わず驚いて、身体を強張らせる。
そんなあたしの背中をバシバシと叩いて向日先輩は言った。
痛いし、その華奢な腕でどうしたらこんな痛く叩けるんですかと思ったのも余談。
「それだよ。ちゃんは跳べないんじゃなくて、跳ばないだけ。」
「へ?」
「っていうか、『跳べない』をこう考えたらいいんだって!」
「どう『飛べない』を考えるんですか。」
「自分はもっと実力あるけど、でもあえてこれだけしか『跳ばない』であげる。みたいな。」
「......え」
「そう考えたほうが、いいに決まってるじゃん。ハナから否定するよりもよっぽど。」
「あの、何が言いたいんでしょうか。向日先輩は。」
少し興奮気味で、あたしに語りかける向日先輩
何かあたしのためになることを言おうとしてくれてるのは分かるんだけど
やっぱりあたしの理解能力が劣っているせいか、何が言いたいのかは分からない。
っていうか、あたしには向日先輩の考えていること自体分からないんだけどね。
......それは自分が鈍い証拠になりえるけれど。
で、あたしがそう単刀直入に聞くと
向日先輩はきっぱりと断言してくださった。
「だから、何でもいい風に考えろってこと!!」
「例えば?」
「例えばだなー....ちょっと耳貸して?」
「はい?」
「例えば........。」
「 。」
そっか。
そっか。そうだよ。
そう考えたほうが.....いいに決まってる!!
..........向日先輩、アナタはいい人すぎです。
たまにグサっとくるような言葉を仰られますが、それ以上にあたしの為になることを言って下さりすぎです!
もう、本当に先輩最高です!!
本当にあたし、感謝してますよ!
プリントいい、励ましといい、教訓といい。
「本当にありがとうございます!!向日先輩!!」
「おう!がんばれよ!!」
「はい!!!がんばります!!」
「じゃ、早速頑張ってきな。」
「はい?」
感謝の気持ちでいっぱいのあたしは、思わず向日先輩の手を握りお礼を言った。
向日先輩はにかって笑ってくださって、あたしの手を握り返してくれた。
ああ、もう本当に向日先輩といい忍足先輩といいどうしようもない生徒会長の部活仲間の先輩はとても優しい方たちばかりです。
その方達のおかげで
あたし、本当にさらに頑張れます。
「ほら、あそこ。」
ふと、向日先輩が校舎の方を指差した。
感謝の気持ちで一杯だったあたしは、ゆっくりとその向日先輩が差し出したほうに目を向ける。
そして、ふと固まる。
「ー!!いつまでプリント拾ってるつもりなんだ!!?」
そしてそして、聞こえてくる。
あたしの知ってる怒鳴り声
ここからよく見える。
怒鳴りながらも、あたしを待っていてくれる生徒会長の姿が
「おし。頑張れ。」
「はい!!行って来ます!!」
向日先輩に背中を押され、あたしは急いでその人の下へ向かう。
会長こそいつまでプリント拾わせるつもりだったんですかというツッコミはなしの方向で。
向日先輩に取って貰った原稿をちゃんと今度は飛ばないように。
.......もう、プリント拾いは勘弁だもんね。
「だから自分はいつも跡部にパシらされてると思うんじゃなくて、好きな人に尽くして
あげてるって思うんだよ。そしたら、気分的にも楽になるんじゃん?」
B A C K
↓
はい。第二弾は予告どおりガックンでお送りいたしました。
空丘のイメージのガックンは、素直にずけずけと言うコなのですvvだから、優しい言葉もぐっと詰まるよう
な言葉もはっきりいっちゃう、みたいな。(笑)とにかくいい奴なんです。
だけど、撃沈。(爆笑)
ああ、文章力ほしいなぁー(また言ってるよ。)
しかも、今回ってギャグになりきれなかった夢小説って感じがしませんか?(笑)
まぁ、それもアリって方向で。前向きに考えます☆
あと、ちょこっと裏話。実はガックンに言わせたい言葉があったんです。
それは
「跳ばない奴には俺の気持ちはわかんねぇ。」っていうわけ分からない台詞。(笑)
あ、あとね(多すぎ)ガックンは『跳べない』って言ってるのに、ヒロインは『飛べない』と言ってるのは
わざとだからね。ヒロインの学習能力が足りないからだからね。(え)
そんな、ヒロイン結構お気に入りです!(...許してやって下さい、こんな空丘を。)
よく分からない方向に進みそうなお話ですけど、次も読んでくださると嬉しいです!
第三弾は....あのお方!(誰だよ)