「.........何やってるんだ?」
「こっちの台詞です。」
きっぱりと言うあたしと
ドアから覗く男の影
..........あたしもにいつのまにこの人がいたのかは分からない。
溜 息 吐 き の 副 会 長 と 常 識 を 持 つ
男
カチカチカチ
シャーペンで3回音を立ててみる。
コンコンコン
指で机を3回叩いてみる。
トントントン
足で床を3回鳴らしてみる。
そして、溜息1つと笑顔いっぱい。
「会長、今日もまだ来ませんねぇ。今日は来てやるって言ってくださっていたのに。」
、只今憧れのお方を待っているところでございます。
さっきまで会計の先輩がいたんだけど、彼氏とデート(ハート付き)ととか言って帰っちゃったから1人であのお方を待っています。
プリントに埋もれながらも、頑張って待っています。
そんなあたしの気分は恋する乙女!......なんちゃって。ガラじゃないのは分かってるから気分だけでも浸らせてください。お願いします。
話を戻しまして。生徒会長様、跡部景吾先輩。
今日、貴方はあたしと廊下ですれ違った時に
「おい。今日は仕方がねぇから放課後行ってやるよ。だから、これやっとけ。」
と仰っていましたよね?そして、あたしに大量のプリントを押し付けましたよね?
いい方に考えるようにと向日先輩から学んだあたしは、別にまたパシリかよとかは全く思いません。
むしろ来てくださるとえらそうな口調で言ってくださったので、あたしは嬉しく思いましたよ。
だからこそあたしは明日台風が来るといってもいいほど珍しく、押し付けられたプリントに判子を押すという仕事を終わらせましたのに。
俗に言う、生徒会長様に尽くしましたのに。
放課後が始まって結構な時間が経ちますというのに。
それなのに
どうしてまだ来てくださってないのでしょうか?
「ちぇー......せっかく終わらせたのになー。」
1人虚しく独り言を言うあたし。
ああ、あたし最近独り言多くなったかもしれない。これも全部会長のせいだ。
現にあたし、初めて白髪を見つけた。これはかなり苦労している証拠。
......今まで苦労しなさすぎなだけじゃんとも言えるかもしれないけど。かもだけど。
っていうか、何で来てくれないのー?
もしかして今日ってエイプリルフールだったっけ?......なわけはない。もう新学期始まって結構経つし。それにあの会長がそんなのに興味あるわけないしね。
だって会長は冗談で嘘を言うお方ではない。本気で嘘を言うお方だ。
........だから、厄介なんだよね。全く。
しかも何考えているかさっぱり読めないし。
.........いかんいかん。弱気になってはダメだ。あたし。
会長は部長だから忙しいんだ。だから、少しだけ遅れてるんだ。
疑いたくはないけれど疑ってしまうのを止めにして、信じよう。
会長はきっと来てくれるはず!!!
「さーってと。他の仕事やりますか。」
ふと伸びをして、深呼吸。心を落ち着かせるためではなく、新たな気持ちに切り替えようと思ってね。
時間がまだあることだし、明日大雪が降りそうな勢いほど珍しく会長が溜めた仕事を片付けましょうっと、とかも思ってね。
これを悪い風にとらえたとすれば、あたしはいいようにこき使われているだけにすぎない。
でもいい風にとらえたとしたなら、あたしは会長に尽くす健気な副会長って思えるじゃん?
それに、これがあたしのできること+好きな人に尽くしたいと言うのは当たり前のこと
そう思えば、プリントの片付けくらいどうってことないですョ。はい。
そんなあたしは、キャラに合わないけれど決して嫌いではない。
「............ん?」
だけど、1つ目にとまったものがある。
それは会長が溜めたプリントを片付けようと、整理している時だった。
積み重ねられた変色しているプリントの中で、一際場違いなものがあった。
比喩を使ってみるのなら、ジャガイモ畑に1つだけトマトが混じっている感じである。
そんなよく分からない違和感をあたしは感じてしまう。
あたしにそんなことをさせたのは、綺麗な模様の書かれた白というより真っ白の封筒。
見たところ........これは、手紙でしょうか....?
って、しかもこれ。あたし宛じゃん!!!
ご丁寧に『氷帝学園副会長であり、日々こき使われている哀れな様へ』と書いてくれてるし。
................これで大体分かった。
そんな嫌味な手紙を出す方達って......想像できすぎて困るよ。本当に。
「会長のファンクラブのありがたき忠告だよね。これって。」
前にも一度もらったことあるよ。それ。そのときは黒い封筒だったから、一発で分かったけど。
そういえばそれにも『跡部様の下僕である氷帝学園副会長様へ』って書いてあったなー。
一応、ファンクラブの方たちはあたしのこと可哀想だと思ってくれてるのね。
そこで、溜息を1つ。
あ、溜息をつくのも多くなったかもしれない。これも、会長のせいだかんね。全く。
この手紙、封筒を開けなくても内容が分かっちゃうからという理由もあるけど。
........でも、ま。せっかく書いてくれたんだし、見てみましょうか。
「えーっとぉ......なになに?」
封筒から取り出した便箋には、黒い文字がびっしり書かれてあった。
思わず読む気を失ってしまう。これって、元は白い便箋だよねぇ?とも聞きたくなる。
っていうか、これ書いた人って相当ヒマ人だと思わない?
取り出しただけで読む気を失ったあたしは、黒と正反対の白いものを無性に見たくなった。
だから、白いものはないかと探す。
右を見て、左を見て、下を見て、上を見て..........ん?
それに続く言葉はもちろん『壁ってこんなに汚れてたっけ?』ではない。
じゃあ正解は何なのかと言いますと
「.........何やってるんだ?」
「こっちの台詞です。」
正解は『こっちの台詞です。』でした。
◆◇◆◇◆◇
だけど、こんな言葉を発したあたしの気持ちを分かって欲しい。
だって。だってね。
ドアの隙間から、誰か覗いてるんだよ?
その誰かが「何やってるんだ?」と聞いて来るんだよ?
あたしから見たら、ドアの隙間から覗く方が疑問に思うよ。
そうですよね?そこのドアの隙間から教室の中の様子を窺っていらっしゃるお方様。
「............そんなことせずに用があったら堂々と入ってきたらどうです?宍戸先輩。」
「.........おう。」
「別にあたし怪しいことしてるんじゃないんですからー。」
「それは、分かってる。」
「あたし、宍戸先輩は常識人だと思ってましたっ。」
「オイ、コラ。どういう意味だ。」
そのままの意味でございます。先輩。だから、ここではあえてもう言わないことにします。
っていうか、このお方と話すのは久しぶりかも。宍戸亮先輩と。
話さない間に、長かった髪を切ってしまわれて.......少し勿体無いと思ってしまう。
だけどショートもなかなかお似合いでございますよ、宍戸先輩。
そんなお方が、どうして何の用事でここに訪ねてこられたのでしょうか?
「で、どうなさいました?宍戸先輩。」
「いや、跡部に用事があって来てみただけだ。........でも、いないみたいだな。」
「え、部活にはいないんですか?会長。」
「ああ、来てなかったからここかなっと思ったんだが...ったく、跡部の奴どこ行きやがった?」
「そうなんですか!?てっきりあたし、会長は部活に行っていてここに来るのが遅れているのだと信じてたんですけど!!」
「そうなのか?」
「はい!だって会長、今日はここに来てやるって言って下さったんですよ!?」
「........激ダサだな。」
「もっと言ってやって下さい。」
何それ!?会長、どういうことでしょうか!?説明してください!......と言っても、会長
ここにいないから、無理な話だよね。それは。
ってか、何で!?どこほっつき歩いてるの!?あの生徒会長様は!
来てやるって...................畜生、騙されましたね。これは。
補足しますと、畜生という言葉を女の子が言うもんじゃないってこと分かっていますから、今だけ
女を捨てさせてください。また、拾いに行きますから。
「.............ちっ。」
「笑顔で舌打ちするな。何か黒いオーラ出てるぞ。」
「はい。そりゃ勿論。だって、出してますからぁ。」
「激じゃ言い表せないほど、ダサいぞ?お前。」
「ダサいの上等ですよ。」
本気です。あたし。
ダサいだろうが、何だろうがどうでもいいんです。そんなこと。
それより、この震える手を止めるかどうやって止めるかということを考えなきゃいけないんです。
だけどああ、宍戸先輩。あたしを見てひかないで下さいな。
明らかに後ずさりしましたよね。今。
何か変な汗をかいているように思えますが、気のせいでしょうか?
それに誤解しないで下さい。いつものあたしはこんなんじゃないですから。
「.......ったく仕方ねぇな。メールでも送ってみるか。」
「え!宍戸先輩、会長のメルアド知ってるんですか?!」
「ああ、そりゃ一応部活仲間だからな。」
「一応って、先輩........。」
「気にするな。だが、俺が知っているのは跡部の携帯その3のメルアドだけだ。」
「は?」
「だから、跡部の携帯その3しか知らないって言ってるんだ。そんなのも分からないのか?激ダサだな。」
「だから、ダサいの上等だって言ってますでしょう?....じゃなくて!!あたしが疑問に思ったのはそこじゃないんですってば。」
「じゃあ、何を疑問に思ったんだよ?」
「会長の携帯その3ってなんですか?」
あたしが驚いたのは、宍戸先輩が会長の携帯その3のメルアドしか知らないということじゃない。
会長の携帯その3という存在に、あたしは驚いたの!!
その3って........一体何個持ってるんですか!?会長!!
「知らないのか?アイツ、PHSを合わせて5つ携帯持ってるんだぜ?」
「はい!?」
「連絡を取り合う用の携帯がその3とその4で、俺はその3を知ってるだけだ。岳人とか長太郎はその4だがな。」
「..........どうして、そんな平然といえるんでしょうか?っていうか、その3とその4の違いはあるんですか?」
「は?お前こそ何が言いたい?ってか、俺もそんな違いなんて分かんねぇよ。あんな奴の考えてることなんて読めるか。」
「それはごもっともですが。あたしが言いたいのはですね、宍戸先輩は驚かないんですか?携帯5つ持っているという少し常識離れたことを。」
「アイツに常識を求める気は全くねぇよ。」
.................ごめんなさい。宍戸先輩。
さっきのあたしを深く反省し、尚且つ発言も取り消しさせて頂きます。
宍戸先輩。
やっぱり貴方は常識人でした。
「じゃ、跡部にメールしてみるぜ。」
「はい!!お願いします!!」
宍戸先輩はポケットから携帯を取り出し、かぱっと携帯を開いて打ち始めた。
いいなぁ、宍戸先輩。会長のメルアド知ってて。なーんて思ったのは余談だけど
宍戸先輩。もしかして、生茶好きですか?って聞きたくなったのは事実。
だって携帯のアンテナに生茶パンダがささってるんだもん。
「.............あ?」
「どうかしましたか?」
「わって一文字打ったら、予測する欄に『和食が食べたい気分』って出てき」
「先輩、会長は和食より洋食が好きそうですよっ!」
会長ほど和食が似合わない人が他にいるでしょうか?......きっといないよね。
他に心当たりないし、いたらいたでキャラが濃い人だろうなっていうのがあたしの考え。
まぁ、そんなことはさておき。
あたし、もう1つツッコミどころを発見しちゃいました。宍戸先輩。
先輩、部屋の中では帽子脱ぎましょうよ。いくら似合うからって。
「よしっ、送信完了。」
「あ、ありがとうございますー。先輩。」
「別にそんな礼を言うことじゃねぇよ。跡部から返事が返ってくるのは100通に1通の確率だし。」
「それでも、あたしはお礼を申し上げたいので言わせてくださいね。」
................会長。
100通に1通の確率って.....そりゃあないよ。いくらなんでも確率低すぎ。
もし、あたしが会長のメルアドを教えてもらえてメールを送ったら..........
絶対返してくれないということじゃないですか。
じゃあ.....聞かないほうがいいかもね。そんなのでショック受けたくないし。
....あ、でもあたし打たれ強いからいけるかも?
「なぁ、。」
「あ、宍戸先輩、あたしの名前覚えてくれてたんですね。」
「当たり前だ。っていうか、お前この学校で有名人なの知ってるか?」
「まぁ....副会長ですしね。」
「それもあるけど、跡部の家来で有名」
「あんまり嬉しくないですねー。そういうの。」
パシリ、下僕、お付き、そして家来ときたか。家来といわれるのは予想してなかったよ。
っていうか、本当に嬉しくない。家来で有名になったって.....ねぇ?
素直に喜べないというか、でも有名なのは嬉しいというかぁ.......
かなり複雑な気分。
って、そうじゃなくって!
「で、宍戸先輩は何を言おうとしてたんですか?」
「いや、大したことじゃないんだけどな。あれが気になって。」
「あれって?」
「あれ。」
そう宍戸先輩が指差したのは、あれ。
あれじゃ分からないと思うから、具体的に言います。
宍戸先輩が指差したのは...........会長のファンクラブから来た手紙。
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