「......ついに来た...!」



仕事がオフの今日の12星座占いでは水瓶座が第1位、血液型選手権もダントツ1位に加えてケータイの星座占いでも恋愛運は5つ星ときた。そして雑誌の占いのページでも『今日に告白すると上手くいくよ☆頑張ってネ!』と書いてあるもんだから彼女に告白しろって言ってるようなものだ。告白すると上手くいくよ☆だって。☆ついてるよ。何かあっさりといきそうじゃない?別にそんな保証も理由ないけど☆があるからさ。...うん、やっぱ今日しかない。絶対今日しかない

......おし、決めた。俺は今日彼女に告白する。彼女に俺の想いを伝えるんだ!



「...何1人でガッツポーズしてんだ。気色悪い」



...と1人でガッツポーズを決めていたら副長に見られてしまった。思わず持っていた雑誌を後ろに隠して、何でもないですよと笑って誤魔化す。ヤバイヤバイ、彼女に告白しようと思ってますなんて副長に知られたら、きっとお前何抜かしてんだこの野郎とどやされるに違いない。それからそんなのに気取られてるんじゃねー、切腹だ!とか言い出しそうだ。無茶苦茶な人だからありえない話じゃない。それに副長って二枚目だけどそういうのあんまり(ないように見えるだけかもしれないけれど)ないからね。ああ見えて実はウブだし



「それより山崎ィ。煙草買って来いや」
「え」



今から中庭で洗濯物を干しているだろうと思われる彼女に会いに行こうとしたのにコレだよ。一昨日1ダース買ってきたのにもうないとかどんだけ吸ってるんだ、この人。ここまで来たらヘビースモーカーじゃないよ。ベリーヘビースモーカーだよ。絶対死因は肺ガンだな。もしくは煙草とマヨネーズがこの世の中から消した時。肺ガンにはもしかしたら打ち勝てるかもしれないお方だけど、煙草とマヨネーズがなかったら絶対発狂しながら死ぬな



「何だ、その顔。返事は!?」
「はいィィィ!!」



うわ、いけね。つい副長の顔と声に圧されて返事しちまったよ。しかも副長「じゃー3分で帰って来いよ」とか無理だから。近くの煙草屋行くだけでも3分以上かかるから。しかもオフなのに何で副長のおつかいしなきゃいけないんだ?......ああ、さすが鬼の副長と呼ばれてるだけある

...チキンな俺はそんな上司に逆らえません







*







「...はあー」



煙草屋まで5分かかってしまった俺はマイポケットマネーで買った1ダースの煙草が入った袋を片手に盛大なため息をつきつつ屯所へとトボトボ歩く。3分で帰って来いとか明らか無理なので逆に焦る気がなくなった俺の足取りはいつにもなく重い。絶対帰ったら副長に遅いとか言って怒鳴られるんだろうなー。あの人、理不尽だし。やべ、帰りたくなくなってきた

でも、これを乗り越えないと今日彼女に告白できないわけで。そう考えると...耐えるしかないよな。耐えるしかないよ。だってここまで運気が最高の日を逃したらいつになることか...!待ちに待った日を台無しにするわけにはいかない



「...アレ?ジミーじゃん」
「ジミーじゃないです。山崎です。万事屋の旦那」
「奇遇ですね、山崎さん。おつかいですか?」
「そんな歳じゃないからね、俺」
「ププッ、またパシらされてるネ」
「またって何。君、俺の何を知ってんの」



そう意気込みながら歩く速度を速めたとき、ばったりと厄介な奴らコト万事屋トリオに出くわしてしまった。山崎、最大のピンチ。何でこんなところにコイツらがいるんだよ。何てついてないタイミング。コイツらと関わってたら絶対めんどくさいことになると俺の第六感が叫んでるので、万事屋達が俺を貶す言葉にも最低限のツッコミで押さえて、それじゃあと爽やかスマイルを浮かべて隣を旦那の横を通りすぎようと思ったが



「なぁ、ジミー。百合香ちゃんちのラムちゃん知らねェ?」



旦那に肩を掴まれ、失敗してしまった。てか、情報少なすぎだよ。百合香ちゃんってどこのコって話だ。しかもラムちゃんってペットなんだろうけど何の動物だよ。それにたぶんそれって万事屋の仕事だろ。俺に全然関係ないって話じゃないか。早く屯所に戻りたくて仕方のない俺は「いやーすみません。全く心当たりないですね」と言って、じゃあ失礼しますと歩き出そうとしたが



「おい、お前もラムちゃん探すの手伝うアル」
「...いやいや何で俺が。つーかそれは君らの仕事でしょ。俺、今日仕事オフだかんね」
「じゃあ、僕と神楽ちゃんはこっち探してきますんで山崎さんはあっちお願いしますね」
「ちょ、あれ何で決定してんの?!」
「頼んだぞ、ジミー。俺あっち行くから」
「人の話を聞けー!っつーかあっちってキャバクラしかねーだろーがァァァ!ラムちゃん探すんじゃなかったのォォ!!」



...何で俺がこんな目に合わなきゃいけないんだ?







*








結局ラムちゃんはその近くの公園の木のイスの下で眠っているのを俺が発見した(ちなみにラムちゃんは黒猫だった)よくやったジミーと旦那が報酬だと言ってベビースターラーメン(焼きそば味)1袋俺の手に残して万事屋達は去っていった。...おいおい、こんなお菓子いらないから時間返せよ、こんにゃろう。俺の貴重なオフの時間をよくも無駄に使いやがった。ああ、早く屯所に戻らないと。これ以上遅くなるときっと副長に怒鳴られるだけでは済まない。命の危険が迫っていることで俺が超特急で屯所へと走る。俺が屯所を出たのは昼前だったのに、戻ってきたのは夕方だった



「よう、山崎。遅かったじゃねーか」



そして何故だか知らないけれど、玄関には沖田さんがいて俺を出迎える。すみません、と沖田さんに謝りながら靴を脱ぎ、上がろうとすると何でか分からないけれど肩を掴まれ、止められた。何だ、と思って沖田さんの顔を見ると......嫌な予感がしてきただけど気のせい?



「あの、何ですか?沖田さん」
「なぁ、近藤さんどこ行ったか知らね?」
「...知りませんけど」
「まぁ大方姐さんとこだと思うんだがねィ」
「知ってるのに何で俺に聞くんですか」



そんな俺のツッコミを無視し、沖田さんはため息をつきながら俺が持っていた袋をさりげなく奪った。そしてこう言う



「悪ぃけど近藤さん連れ帰ってくれねーか。代わりに煙草は副長渡しときまさァ」
「はぁ、ありがとうござ...ってえええ!マジっすか?!」
「頼んだぞ」



そう言って俺に背を向けて、沖田さんは手をひらひら振りながら奥へと歩いていってしまった。ったく、あんの馬鹿野郎...!嫌な予感的中じゃないか。何でこんな時に限って局長を迎えに行かなきゃならないんだ。せっかく帰って来れたというのに。くそー、最悪だ。そう涙を堪えて、俺は靴を履き直した

......っていうか、俺って本当に今日恋愛運がいいんだよね?







*







局長がどこにいるか、それは俺も沖田さんと同意見でどうせ姐さんのトコに行ってボコられてるんだろうと思ったのでとりあえず姐さんの働いているスナックに行ったら、今日は休みだと言われた。なので次に姐さんがいる場所と考え浮んだ場所は実家であり、前に忍び込んだことがあったので場所は知っている。姐さんの実家の前に来ると何だか騒がしい音が近所迷惑なくらい響いていたので、ビンゴだと確信し、呼び鈴を鳴らした



「...はーい、どなたで...ああ、山崎さん。昼間はどうもありがとうございました」
「いえいえ、それよりここに局長いるかな?」



しばらくして出てきたのは新八君だった。昼間のことで丁寧に頭を下げて俺を迎えてくれたので、俺も軽く頭を下げて新八君に単刀直入に尋ねると案の定苦笑して「いますよ。どうぞ上がってください」と俺を家に上げてくれたので、玄関にきちんと靴を揃えて脱ぎ、新八君の後をついていく。「ここです」と新八君がある部屋の障子を開くと、姐さんが局長を羽交い絞めにしているところだった



「いだだだだだだお妙さんギブギブギブ!」
「もうこれ以上私に付きまとわないで下さるかしら...って、あら」
「すみません、うちの局長がご迷惑をおかけしました」



姐さんに逆らうと怖いというのはもう知っているので、低姿勢で姐さんに謝ると、姐さんは「ほら、お迎えが来ましたよ」と局長の首辺りを手で一発。カクリと気を失ってしまった局長から離れて「助かりました。いつもすみませんね」と綺麗な笑顔を浮かべて俺にそう言った。お迎えって違うお迎えが来ちゃったんじゃないのと口が裂けても言えない俺は、はははと乾いた笑みを浮かべて「それじゃあ連れて帰りますね」と局長をかつぐ。...うう、重い。それでは失礼致します、そう言った俺に姐さんは「起きたら言っといてくださいね。今度勝手にうちの敷居をまたいだら容赦しねぇぞって」とうふふと笑う

......絶対この人を怒らせないようにしなきゃ







*







「ただいま帰りましたー」



局長を引きずるようにしてかつぎながら屯所に着いたのはすっかり空が真っ暗になった頃だった。ああ、腹減ったなと思いつつ玄関で靴を脱ぎながら、局長を担ぎなおす。俺の声を聞いたからか、そこにやってきたのは副長と沖田さんで



「ご苦労だったな、山崎」
「はぁ...」
「てめーよくもちんたら遊んでやがって」
「この状況を見て俺が遊んでたとお思いですか!」
「ふん、まぁいい。総悟、近藤さん運ぶのを手伝え」
「へい」



ったく、こんなことなら遊んどけば良かったと心底後悔する俺に担がれている局長を副長と沖田さんがそれぞれの手を肩にかけながら2人でかつぐ。そうして2人にずるずると引きずられていく局長を見送ってから盛大なため息をつく。そしたら何だか今日の疲れがどっと襲ってきて、思わず玄関の前に座り込む

...はぁ、本当に今日は疲れた

せっかく今日彼女に告白しようと思ったのにもう今日は終わりかけだし、とてもじゃないけど告白するパワーは俺の中には残っていない。人生って何て世知辛いんだ。俺はもうこれから占いなんて信じない。占い師の野郎、人を散々上げておいて落とすなんて性格悪いヤツだ。ああもう俺はこれからそんなの信用しないからな、絶対にするもんか...!



「山崎さん、お疲れ様です」
「本当疲れました...ってえええさん?!」



そう固く誓っているとこんな優しい言葉。さっきの副長とは大違いだ、ちくしょーと軽く感激しながら、そんな優しい言葉をかけてくれるのは誰だろうと思って、顔を上げてみれば。うわ、やべ。さんじゃないか。いつの間に来たのかは分からないけれど、俺と目線を合わせるようにして座るさんがそこにいるじゃないか。思わず驚きで後ろに仰け反ってしまった。手をついたから倒れずに済んだものの...格好悪いところ見せちゃったなという苦笑は心の中で留めておいて



「もう皆さんは晩御飯をお召しになりましたのに遅くまでご苦労様です」
「い、いやそんな」
「山崎さんの分の晩御飯はちゃんと取ってありますからね」
「ああありがとうございます」



どうしよう、今周りに誰もいないしちょっとチャンスじゃね?今日一日頑張った俺に神様がご褒美をくれたのか?そんなことばかり考えているのは、俺が今日告白しようとしている相手がさんだからで。ああ、いきなりのチャンス到来に戸惑っている自分がいるが...それでもいくしかない。だって俺はこの時を待っていたのだから。これを逃すと先送りになってしまう



「あ、あの!」
「はい、何か?」
「...いや、えと...」



話を切り出そうとしたのはいいけども、少し首を傾げて俺を見るさんが可愛くて仕方がなくて次の言葉が続かない。ちょっとちゃんと言えよ、俺。いやでもさん可愛すぎだろ。いやとにかく言えって俺!でもさんは可愛いな。そんなことばかりを頭の中で繰り返しているばかりで何も言わない俺にさんは柔らかく微笑んだ



「山崎さん、実は私もご飯食べてないんです。一緒に食べませんか?」



ああ、もう告白するとかしないとかどうでも良くなってきた。彼女のお誘いを断るわけにはいかないだろう。それに俺のことを待っててくれたのかなと少し自惚れるだけで何だか気分が良い。明日に落とされてもいいから今日だけは幸せな余韻に浸らせてくれたらそれだけでいいんです、マジで。嬉しさのあまり言葉の出ない俺は何回も大きく頷くと、さんが何故かほっとしたような表情を浮かべた



「...勇気出して山崎さんを待ってて良かったです」





泥だらけのハートで






すみません、占い師の皆さん。文句ばっかり言っちゃって。今日の恋愛運は確かに最高でした。あえて意味深なまま置いときます。だって...ヤバイ思い出したらにやけてきたんですけど。いや、まあただ1つ言えるのはこれからは占いを心から信じようと思いますってこと。以上






( まさかああくるとは思わなかったのはこっちの話 )