今日は練習で疲れました。いや、今日もと言った方が正しいかもしれませんね。向日先輩はどうでした?
俺も疲れた。実は、今帰ってきたトコだったり。今日、跡部が機嫌悪くてさー、もう散々だったぜ。
そうなんですか。それは、お疲れ様です。見かけで人を判断しちゃいけないのは分かってるんですけど、跡部さんってすごく厳しそうです。でも、そこがいいんだって友達は言ってました。
...やっぱり青学でも跡部の人気はすげーんだな。結構離れてるのに。まあ、うちにも手塚とか不二のファンがいるようなもんか。
あ、手塚先輩と不二先輩も人気ありますけど、私の周り友達は氷帝のテニス部の方がタイプだったみたいです。忍足さんとか宍戸さんとか芥川さんとか....でも私は向日先輩一筋です!じゃあ、先輩も疲れてるみたいなんでこれで失礼します。ゆっくり寝て、明日も部活頑張ってくださいね。おやすみなさい。
....秒 殺 !!!
笑顔に乾杯
君の笑顔はダイヤモンドよりも勝る、そんな笑顔
「へー、ちゃん、めっちゃ可愛いこと言うやん」
「向日先輩一筋か...もしかして天然?」
「ちょ、待て!何で知ってるんだよ!?忍足、宍戸!」
「君のプライバシーは預かった」
「何言って...って、あー!!俺のケータイ!!ジロー、いつのまに!」
「いつだろう?」
「可愛らしく首傾げても無駄だかんな!プライバシー侵害で訴えてやるー!」
部活が終わり制服に着替えていたら、先に着替え終わった部活仲間からそんな言葉を聞いた。侑士の口からは彼女の名前、宍戸の口からは昨日のメールの内容の一部分が出てくる。彼女とは、青学の2年のという女のコのことだ。朝電車で見かけるようになり可愛いなって思ってるだけだったのが、つい先日メルアドを交換できるまで前進したのだ。それからたまにメールのやりとりをしている。...あ、もちろん彼女といっても恋人という意味の彼女じゃないからな!えっと、仲のいいオトモダチ。うん、そんな感じ。...とか言ってもばれるよな。はい、ぶっちゃけたぶん俺は彼女に惚れてると思います。認めれるようになっただけ大進歩。しかし、後もう一歩が踏み出せず...くそー!俺、本当にチキンハート
なので、彼女の名前を聞いただけでも未だにドキッとするのに、昨日のメールのことを知られていることに驚きを隠せず、思わず声が上ずった。俺の口から何にも言ってねえのに。っていうか、言ったら絶対ニヤニヤした顔でからかってくるから絶対言わないでおこうと思ったのに。.....何で知ってるんだよ?
と思ったらすぐにその理由が分かった。ジローが意味不明なことを言うのでジローのほうを見てみたら、ジローの手に握られているのは間違いなく俺のケータイ。俺はカッターのボタンをとめながらジローに近づき、可愛らしく首を傾げているジローから俺のケータイを奪還した。ジローは、わー怖いーと言って侑士や宍戸の近くに避難するように逃げたが、顔はむしろ笑ってて面白がっているようだった
「へー、でも俺らちゃんのお友達には人気あるみたいやなあ」
「よく分かんねえけどな」
「だけど、チャンはガックン一筋だってっ」
「そうそうちゃんは岳人一筋やって」
「よかったな」
「だーもう!ほっとけよっ」
「あの、向日先輩。ちょっとはな」
「日吉!お前までそう言うか!」
....ほら、やっぱりこうなるじゃねえか。だから言わなかったんだよ。予想通り、ニヤニヤした顔でからかってくるじゃねえかよ。彼女がそう言ってくれたことが嬉しいか嬉しくないかと言われたら、確かにそりゃ本当に本当に本当に嬉しいけどよ。今までそんなこと言われたことなかったから余計に嬉しすぎる。でも、だからこそからかわれたくねえんだよっ。素直に嬉しさに浸らせろってーの。俺はブレザーの袖に手を通しながら、そのからかいに反抗する
と、そこで後輩の日吉にまで声をかけられた。日吉まで言うのかよと半分失望し、日吉の言葉を途中で邪魔して、言い返す。俺は心底悲しい。悲しいぜ、日吉。お前はそんなことないと思ってたのに...!すると、日吉は「まだ何も言ってないじゃないですか」と不満げな顔をする。じゃあ、何だよとネクタイをしめながら尋ねると、日吉ははあとため息をつきながら、何かを制服のポケットから取り出した
「あの、コレなんですけど」
「何だ、その紙切れ」
「この前イトコが家に遊びに来て、俺にくれたんです。遊園地の入場券2枚。なんか、彼女と行けって」
「...お前、彼女いたっけ?」
「いませんよ。あ、ちなみにそこの先輩方にも言っときますけど、好きなヤツもいませんから」
「何や、つまらん」
「えー、でも日吉。この前可愛いコに告られてたじゃん」
「マジ?」
「だーかーら!今俺はそんなこと興味ないんです。先輩方を下克上すること以外」
「うわ、ほんまにつまらんな。つーか、俺らに勝てると思ってるん?」
「そういうわけで、向日先輩。これ先輩にあげます」
侑士の言葉を素無視して、日吉はその遊園地の入場券を差し出す。それにしても、日吉結構いい度胸してるな。仮にも先輩を無視するなんて。まあ、それはどうでもいいとして、何で俺に?
「えっと...何で俺にくれんの?」
「え、だって先輩、好きな人いるんでしょう。誘ったらいいじゃないですか」
日吉はさらりと言った。あ、うんうん、そうだよな。...っておい!?俺、日吉にまでバレてんの!?鳳にはこの前「先輩、頑張ってください!」と爽やかスマイルで言われたからバレてんの知ってたけど...まさかこの日吉にまで?!俺って相当分かりやすい?
「「「分かりやすい」」」
「って、何で俺の考えてること分かったんだよ?!」
「だから分かりやすいって言ったじゃん、ガックン」
「それにしても日吉、よくやった!お手柄や!」
「じゃあ、明日1番コートで待ってます。忍足先輩」
「分かった。ま、それくらいは大事な相方のために一肌脱いだるわ」
......ああ、前にもこんなパターンがあった気がする。侑士は日吉の手から遊園地の入場券をひったくり、俺をキラキラした目で見てくる。後ろにいるジローと宍戸もなんか楽しそうだ。......俺、どちらかというと鈍感な部類に入るだろうが、大事な相方の次の言葉が予想できちまうぜ...!
「よっしゃ!今からデートのお誘い行くで!」
♭
「で、ちゃんからは何て?」
「......じゃあ、駅で待ってますって」
「良かったねー、ガックン」
「良かったなあ、岳人」
「全然よくねえよ!!」
俺は今部活仲間とガタンゴトンと揺れながら走る電車に乗っている。普段チャリで学校に通ってる宍戸や、バス通学の侑士、それにとっくに地元の駅を過ぎたジローが何故乗っているのかというと、もちろん俺が彼女をいわゆるデートに誘おうとしているところを見物したいからであって。あー、もう何でこうなるかな!ってか、いきなりそれはないだろっ?!
はあと俺は盛大なため息をつく。横でジローが「ため息ついたら幸せ逃げるよ」と忠告してくれたが、正直それどころじゃねーよ。......何がって?心臓が!心臓がありえないくらいバクバクいってんだよ!
「岳人、お前大丈夫かよ」
「大丈夫じゃないから帰ろうぜ」
「あ、駅着いた」
「ナイスタイミングやな」
「バッドタイミングに決まってる!」
ちゃっかり侑士は俺の襟を持って、電車を降りる。つまり俺は引きずられながら泣く泣く降りているということで、宍戸とジローはそれに続く。ああ、来ちまったのか。ついに来ちまったのか、この時が!駅のロビーに行くために、俺達は階段を下りている
「さ、岳人行ってこい」
「うお!?」
「ナイスジャンプー」
「すげーな」
「拍手すんじゃねえ!ってか、侑士!いきなり押すな!」
って早速侑士はこんなことを言う。まだ心の準備というものができてないというのに!しかも、侑士に押されたから8段くらい階段飛び降りちまったじゃねーか!ジローと宍戸は感心したように拍手し、侑士は相も変わらずにやにやしてやがる。そして、俺は試すように言った
「そんなん言っても、俺達にあっちまでついて来られるの嫌やったら、ここらへんから1人でいかな。それにちゃん待ってるで?」
「う」
確かにこいつらについてきて欲しいとは思わない。...後で、笑われるに決まってるからな。それに何といっても、彼女を待たせている身であって。確かにこれ以上待たせるのは申し訳ないと思う
だけど、やっぱりという葛藤があって。俺はしばらく自問自答しながら葛藤していると、ジローが「あ。ちゃん」と言いながら指差す。ジローが指差す方を見ると、改札の向こうにそこに確かにケータイを覗き込む彼女がいて。......これって早く行かなきゃヤバげ?
「「「ヤバイ」」」
「うおっ、だから何で俺の考えてること分かるんだよ?!」
「だから分かりやすいって言ったろ?」
「そんなん何でもええから、はい、岳人」
侑士はそう言って、ポケットからごそごそ何かを取り出して俺に手渡した。......そう、日吉がくれた遊園地の入場券だ。そして、まるで幸運を祈ると言いたげに親指を立てて、俺に見せる。ジローと宍戸の顔を見ると、何も言わずにこくりと頷いた。まるで戦場でも行かされる気分。...ああ、分かったよ
「あーもう行ってくる!」
「それでこそ俺の相方や!」
「ガックンだ!」
「岳人だ!」
意味分からないけど、コイツらなりの応援を背に俺は走り出す。定期をポケットから取り出し、改札を通る。ああ、ヤバイ。まだ俺が来たことに気づいてない彼女を目の当たりにして、また心臓バクバクいってきた。どーするの、俺。ライフカード。...そんな場合じゃない。ああ、とりあえず落ち着け。俺の心臓
「...あ、向日先輩」
気配を感じたのだろうか、彼女はケータイから目を離し俺のほうを見る。目が合った。俺の心臓は落ち着くどころか、さらに暴れ出す。か、か、可愛い。俺の名前を呼んで、笑顔を向けてくれる彼女が可愛い。ヤバイ。本気でヤバイ。何がヤバイのか分からなくなってきたけど、とりあえずヤバイ
「ご、ご、ごめんな!待たせて!」
「いえ、さっき来たところですから」
かなりどもりながら彼女の方に駆け寄ると、さらに彼女は微笑んだ。効果音で言うならずきゅーん、ビジュアル的に言うならばハートの矢が俺の心臓に刺さった、そんな感じの衝撃を受ける。彼女を見ると、部活が終わったあとで、顔にこそ出してないけど本当は疲れているのだろう。それなのに、こうして俺を待ってくれた、その優しさにもまた以下同様の衝撃。ああ、こんなんで、俺大丈夫か
「...?向日先輩、何か顔赤いですよ」
「ああああ、ききき気にしないで。ちょちょちょっと待ってくれな」
無理だった。非常に無理ありすぎだった。俺の顔を覗き込む彼女が可愛すぎる。俺は手を大きく振り、否定しながら彼女から目線を反らす。ちょっと落ち着こう。深呼吸しよう。それじゃないと、会話が出来ない。俺はそう思って、すーはーと深呼吸をする。....ちょっと落ち着いてきたかもしれない
「...あはは」
「?」
俺が深呼吸の威力を実感していると、彼女は突然おかしそうに笑い出した。...もしかして俺、笑われてる?
「な、な何で」
「あ、すみません。でも....」
「でも?」
「嬉しくって」
彼女はそう言って、また俺に笑顔を向ける。そして言葉を繋げた
「いつもはメールで会えないけど、今日は会うことができたから。一目でもちゃんと見ることが出来たから。......ちゃんとそこに向日先輩がいてくださるから。それが本当に嬉しくて」
そう言った後、彼女ははっと自分がすごいこと言ったことに気づいたようで口を抑え、そのままの状態ですみませんと言いながら照れくさそうにまた笑った。...俺、すごいこと言われたよな
俺正直に言うと、会えて嬉しい、だなんてそんなこと言われるのは初めてで。とてつもなく言われた今幸せだったりする。だけど、俺だったらこんな言葉をとてもじゃないけど言えないだろう。だって、恥ずかしいし。小心者の俺には口にできない。だけど、彼女がここまで言ってくれるんだったら、俺だって頑張って言わなきゃ
ここで勇気を出さなきゃいけない
「...で、さ。今日呼び出した理由なんだけど」
「あ、はい」
俺を真っ直ぐに見てくれる彼女を前にして、落ち着かせた心臓がまた暴れ始めた。究極にドキドキしている。...だけど、もう少しぐらい頑張れよ、俺
今度は俺が一歩前に踏み出す番だ
「えと、もしかしたらちゃんも知ってるかもしれねえけど、俺の後輩の日吉がさ」
「あ、知ってますよ。あのキリッとした感じの男の子ですよね?」
「うん、そうそうその日吉。で、ソイツがくれたんだよな」
「何をですか?」
「コレ」
俺は日吉にもらった遊園地の入場券をポケットから取り出した。そして、彼女に差し出す。心臓がオーバーヒートしそうになるのを無視して、俺は続けた
「......良かったら、空いてる日、一緒に行かねえ?」
...おし、言った。言ったぞ!俺!珍しく、俺、頑張った!俺は一種の感動を味わいながら、彼女の返事を待つ。心臓はもうオーバーヒートしたけど、それは無視。それ以上に彼女の返事が知りたい
彼女はしばらく俺が差し出したチケットを見ていたが、ゆっくりと顔を上げた。そして、おそるおそる
口を開く
「...え、あ、あの、私でいいんですか?」
「も、もちろん。俺、ちゃんと一緒に行きたいし」
俺がそう言うと、彼女は少し戸惑ったように目線を下げたかと思いきや、彼女は顔を上げ満面の笑顔を俺に向けて、こう答えた
「ありがとうございます...!私も向日先輩とぜひ行きたいです」
あんまりベタなセリフは得意じゃないけど、その時の彼女の笑顔はダイヤモンドとは比べ物にならないくらい輝いていて、素敵な笑顔だった
...俺だって、君がそこにいてくれて、嬉しいんだ
君の笑顔さえあれば何だってできる気がしてきたよ
ヘタレ岳人第二弾!!(勇気に乾杯の続編)何かシリーズ化しそうです。名づけて乾杯シリーズ。ちなみに今回日吉君がお気に入りです(ガックンじゃないのかよ)
20070401