今日だけで3回。一週間の間に19回

この数字は何を表しているのかというと、アレである。......ふっ、アレとは何か、気になる言い方であろう。あれではなくアレとカタカナ変換している辺り、何か隠しているのは見え見えだ。しかも、カタカナでアレというと秘密事項に違いないと感じてしまうのはあたしだけであろうか。いや、あたしだけではないはず。あれ、と平仮名で言ってしまえば「あーあれかー」と流してしまいそうになるし、かといって今流行のいんぐりっしゅでザット(だったかな?)と言ってしまえば知りたくなる気持ちも冷める。しかし、アレと言われたら気になってしまうのが人間の性ではないだろうか。...と長々関係ないことを述べたが端的に言おう(ちなみにここで「始めから言えよ!」と心の中でツッコんだ人はツッコミの才能があるだろう。ぜひそれを生かして欲しい)

それはバイト面接に失敗した数だ

.......渡る世間は鬼ばかりだぜ、コンチクショー。世知辛い世の中だよ、全く。どこも雇ってくれる店なんてありゃしない。何、あたしのどこがいけないのか。見た目?どこにでもいそうな普通の町娘じゃダメだっていうの?どうせ町娘はお姫様になんてなれないのよ、何夢見ちゃってんの世の中の経営者達。そりゃ店が華やかになるのは確かなのは認めるけれど、お姫様なんかが仕事を真面目にやるかっつー話だよ。お姫様なんかただ座って笑ってるだけじゃん。...いや、それが美しすぎるんですけどね。オーラがあるっつーか、やっぱ貴族は格が違うなあって思い知らされるんです。...アレ?作文?しかもなんか完結の仕方間違っちゃったよ。結局お姫様はいいよなあって話になっちゃったよ

...とにかく誰かあたしに仕事を下さい。じゃないと、あたし生きていけません。あたしにも一応生存権ってあるんですからガン


......あれれ?あたしのお先真っ暗ですか?




第一訓 世知辛い世の中だが、そんな世の中だからこそ優しさが余計に身に染みる




「あ、気がつきました?」


真っ暗だった視界が急に開けて、また世界が色を取り戻す。その輪郭は最初はぼんやりとしていたけれど次第にくっきりと見えてきて、目に映っているものがどこかの建物の天井であると認識した時自分がどこかの建物の中にいるんだということに気づいた。しかも、ソファーの上。しかも、タオルケットがかけられている。しかも、どうやら寝ていたようだ(しかもが多い)あれ、あたしさっきまで外歩いてたのにおかしいな。あ、これってもしかしてトリップってヤツですか?今流行のトリップ

そんなことを考えていると男の子の声が聞こえたので、あたしは身体を起こした。...何故頭がガンガンしてるんだろ。よく分かんないや。分かんないけど、声の主は分かった。メガネをかけた優しそうな好青年だ。誰だかは分かんないけど。うん、はっきり言って分かんないこと多すぎる


「...え、あ...えと」
「気分はどうですか?」
「あ、気分...あの今の事態が飲み込めていなくて、誰かに泣きつきたい気分です」
「いや、あの心情じゃなくて身体の方なんですけど」


何が何だか分からず戸惑っているあたしを気遣ってか、青年は心配そうにあたしに声をかけてくれたので「うわ、いい人だ」と思ったあたしは正直に今の心情を言うと、青年は苦笑を浮かべた。どうやら心情のことではなく、身体的な意味だったようだ。つくづくあたしは空気の読めないヤツだと自覚する。そんなヤツのことを巷ではケーワイって言われてるらしいね。なんか若いコが言ってたよ


「...少し頭ガンガンするけど、でも全然大丈夫です」
「...そうですか。本当すみません」
「あ、ありがとうございます。え...て、はい?」


あたしが正直に言うと、好青年は少し顔を暗くさせて謝りの言葉を口にして、あたしにどうぞとお茶を入れてくれた。あたしはどうもと軽く頭を下げて、お茶の方に手を伸ばす。...って、あれ?今、あたし謝られた?何であたし謝られてるんだろ?え、何で?

あたしがそう疑問に思っているのを察したのか、はっと気づいたように好青年は「いや、厳密に言えば僕のせいじゃないんですけど」とぼそぼそと言い、それから鋭い目つきであたしの目の前に見える襖を睨みつけた。何だろと思ったら、襖がガラリと開く


「あー気づいたの、お前」
「はぁ...」
「銀さん、やっと出てきたんですか」


襖を開けたのは銀髪の天然パーマの男の人で、その男の人は「あー...」と言葉にならないような声を零し、髪をくしゃくしゃ掻きながらあたしが座っている向かいのソファーに座った。それから下向きながらぶつぶつ言っていたが、急に顔をあげてあたしの方をじっと見る。死んだ魚のような目をしてるなあと思ったのは初対面の人に対して失礼な話だが、実際思ってしまったのは秘密にしておこう


「いやー悪かったな。ホント」
「......何の話ですか?」


いきなり悪かったとか言われて、あたしは本気で何の話か分からなかったので聞いてみたところ、代わりに好青年が答えた


「えとですね、そこの銀さんがひょんなことから神楽ちゃんに投げられて二階から落ちてしまったんですが、そこに貴方が通りかかったようで銀さんの下敷きになっちゃったんですよ...。で、気を失ってしまったみたいで、どうしようかと思ったんですが、万事屋で様子を見ようということになりまして...」
「あー...成る程。そういうことでございましたか」
「そういうことでございましたヨ」
「ぅわ?!」


好青年の説明を聞いて、今の状況がようやくはっきりと分かった。何だ、そういうことだったのか。別にあたしの人生のお先が真っ暗になったってわけじゃなかったのね。まあそれが分かっただけ安心だ。...と思ってうんうん頷いてたら、ふと横を見るとおだんご頭の女の子がさっきまでいましたよ的なノリで座ってて、思わずびっくりして奇声を上げた。しかし、女の子はそんなこと少しも気にせずあたしをジロジロ見ている


「そういえば名前は何というアルか?」
「あ、そういや名前まだ聞いてませんでしたね」
「新八ィ。だからお前は新八なんだ」
うるせー天パ。元はと言えばアンタが神楽ちゃんを怒らせたのが悪いんでしょーが」
「そうネ。レディにあんなこと言うなんて最低アル」
「おいおいちょっと待て!普通あれくらいで人を投げ飛ばすか?そりゃねーだろ」
「いい大人が人のせいにしてるんじゃないヨ」
「あ、あのォえっとォあたしっていいます。で、貴方達は一体...?」


名前を聞かれたはずなのに、何故だか話がズレてきた気がする。だってホラ、女の子が男の人を殴りかかろうとしてるよ?(やっぱり女の方が強いよねそろそろ止めに入ろうかな、って思ったあたしは自分の名前を名乗ることで話を戻そうとした。女の子はぱっと男の人の胸倉から手を離し(たかと思うと、男の人の頭を思いっきり机に押し付け)た後、あたしの隣にまた座り直した


「へェ、っていうんだ?私、神楽ネ。で、そっちのメガネは新八。机に伏してる天パは銀ちゃんアル」


その女の子、神楽ちゃんはそう言って「よろしくネ」とあたしに手を差し出したので、「よろしく」とあたしも手を差し出して、握手した。いやァ、ものすごく可愛らしい女の子だと思うんだけど、その女の子が男の人をここまで圧倒するのって少し恐ろしいよね、なんて思ってみたりもしたけど気のせいだよね、なんて。あ......銀ちゃんさんが顔上げた。って、鼻血出てるんですけど


「だ、大丈夫ですか?銀ちゃんさん」
「おう、花子。こんなの日常茶飯事だ」
いや、花子じゃなくてです。
「ああ、悪ぃ。人の名前覚えるの苦手でな。花子じゃなくて良子だったか
だからだっつってんだろこのヤロー
「え、とあのさん、まあ落ち着いて。後、銀ちゃんさんって可笑しいから銀さんでいいと思います」


そこで新八君に止められ、あたしははっとなって急いで作り笑いで誤魔化した。いけないいけない。初対面の人に対して失礼だよね。いきなり言葉遣い悪くなっちゃったよ。それに確かに銀ちゃんさんって変かもしれない


「ところで、さんはどちらに向かわれる予定だったんですか?」


何の変哲もないこの質問。新八君も何気なく口にしただけだろうその質問に、あたしはそういえばとどこ行こうとしていたんだろうと自問し、自答に至る。あたしはどこに行こうとしていたのか、それは


もうこの際地平線の向こうまで行っちゃおうかな......なんて
いや、あの真面目な答えを求めてるんですけど
「俺も若い時そーいうこと思ったことあったわ」
「え、銀ちゃんもそうアルか?地平線の向こうって何があるネ?」
「バカ、それを確かめに行くんだろーが」
「マジでか」
「銀さん、もうその辺にしといてください。って、さん何頷いてるんですか!


いやー本気だけど、冗談で言ってみるもんだね。うんうん。そうだよ、あたしが地平線の向こうに行っちゃおうかな、なんて思ってみたりするのは地平線の向こうに何があるか知りたいからだよ。銀さんって人、あたしと同類だ。ということは、きっと今のあたしの現状を分かってくれるはず!...って、そりゃないか。エスパーじゃあるまいしね


「っていうか、お前アレだろ。実は家を出て江戸にきたものはいいものの、仕事も住むところもなくて途方に暮れてたんだろ?」
「!!!な、何で分かったんですか?!」


え、嘘!ありえたよ!もしかしてこの人エスパーなの!?


「やっぱりな。地平線の向こうに行きたがるヤツは大体そうだ」
「そうなんですか?」
「......実はお恥ずかしながら、銀さんの仰る通りでして。一週間前に江戸に来たんですけど...仕事も住むところもなくて。まあ、住むところはとりあえず置いといて仕事だけでもと思って面接受けたんですけど見事に受からなくて」
「あーお前経営者受けする顔じゃねーもんな
それは遠回しにあたしを貶してるんですかね?町娘バカにしてるんですかね?
「銀さん!...えっと、ってことはさんは今までどうやって生活してたんですか?」


やっぱり経営者はお姫様好みですか。こんにゃろー、この天パさっきからずけずけと人の傷つきポイントを適確についてきやがる。あたしは思わず手を出そうになったが、いけないいけないと思いとどまり頑張って堪えたところ、新八君が銀さんに一喝を入れ(優しいね、新八君)それからあたしに尋ねた。んー...どうやって、って


「......基本野宿かな?」
「マジでか」
「...マジですか」
「はい。人間やればどこでも寝れますよ」
「お前、図太いな」


なんて強がったりしてみてるけど。そう、この一週間は屋根のあるところで寝れなかったよ。あたしは今まで屋根のあるところで寝れることがどれだけ幸せだということを思い知ったよ。ダンボールを布団と言い切るこの切なさ...ああ、今泣きそうになってきた。何であたし金持たずに江戸に来たんだろ。あたしのアホさにも泣けてくる。ので、話を変えよう


「いや、まああたしのことはどうでもいいですね。はい。それより、貴方達はどういったご関係で?」
「ああ、僕達は万事屋です。銀さんが表向き経営してて、ここで僕達はバイトしてるんです」
表向きって何?ねえ、表向きって?
「へぇ、万事屋ですか。大変そうですね」
「まーな」


ふと、素直に思ったこの疑問。だって、銀さんと新八君と神楽ちゃんの3人はどこも似てないし家族ではないとは分かるけどどんな関係かなって思ってたんだけど、成る程ね。万事屋を営んでるってわけか。万事屋...何でも屋みたいなトコ?いやー大変そうだ。なんて考えてたら、いきなり神楽ちゃんがあたしの肩に手を回してきた。そして、銀さんに向かって言う


「銀ちゃん。、住むところがないなんて可哀想ネ。ここに置いてあげようヨ」
「はあ?」
「はい?」


神楽ちゃんの発言に銀さんは驚いたように死んだ魚のような目を丸くした。しかしだ、そんな銀さんよりも驚いたのは間違いなくあたしである。いや、確かに住むところには困ってたんだけど...いやいやいや初対面の方々にそこまで迷惑かけるのはアレだし。でも住むところは欲しいんだよね...ってちょっと待ってあたし。そんな上手い話ないに決まってるじゃない。だって、


「...お前、何言ってんの?」


明らかに銀さん、嫌そうな顔してるもん。そこまで嫌な顔しなくてもいいじゃんって思うくらいに嫌そうな顔してるし。でも、そこまで嫌そうにされると逆に腹立つなあと思ってたら、神楽ちゃんがそれに対して言い返した


「フン、さっきの上に乗ってた男がよく言うネ。責任取りなさいヨ」
ちょっとォ!神楽ちゃん!君、いつの間にそんな言葉を覚えたの!しかもそんな言い方やめろっつーの!誤解されるだろーが!
「往生際の悪い男はダメだってマミーが言ってたアル」
「だから、違うって。違うって言ってんだろーがァァァァ!!!
「......すみません、さん」
「....いえ」


神楽ちゃんの爆弾発言に銀さんは慌てたように声のトーンを大きくして言い返す。いい大人が少女に遊ばれているなんてちょっと気の毒だなと少し同情。もちろん神楽ちゃんの言葉が意味していることはありえないと分かっているので、少し苦笑して2人のやり取りを見てたら新八君も同じく苦笑してあたしに申し訳なさそうに謝った。きっとこの2人のことを言ってるんだろう、と思ってあたしは軽く首を振ったところ、銀さんに腕(神楽ちゃんがいる方とは反対の腕ね)を掴まれて、立たされた。あたしは驚いたように銀さんを見上げると、銀さんはあたしを見下したような目をしていた。...うわー、怖えー。何、あたしを追い出そうとしてるの?いや、もうちょっと丁寧に追い出してよ。もっと礼儀正しい追い出し方ってもんがあるでしょーが


「おい、お前。って言ったか」
「え、あ、はい」
「何か剣術とか武術は心得てるか」
「は?...えっと、そうですね。まあ、ぶっちゃけちゃうと弓術の方が心得てるんですが、困らない程度には剣術、武術両方心得てます」
「へえ、弓術ですか。実家が道場とかなんですか?」
「そうなんです。今の時世、弓なんて流行らないんですけどね。あ、でも一応荷物に入ってますでしょ?弓矢が」


そういえば金は持ってないけど荷物は持っていたということを思い出し、キョロキョロ部屋を見渡して探してみると、ちょうど銀さんの足元辺りに荷物が置いてあった。一応あたし、何か使うときがあるかなって弓矢持ってきてたんだよね。だから、鞄が歪な形してるの

銀さんはあたしの荷物を見たかと思うと、あたしの腕を放して荷物を漁り始めた。...え、ちょっと待ってくださいよ。人の荷物なんですけど、仮にも。...まあ、見られて悪いものはないですけど。って、あれ?いつの間にか神楽ちゃんと新八君も混ざってる?


「えっと、あんまり大したもの入ってないですけど」
「あーコレか、弓って。随分使い込んでるな」
「ええ、小さい頃から使ってたんで」
、これ何アルか?」
「ああ、それは酢昆布だよ」
「...さん、これってもしかして...」
「はい、結野アナのフィギュアです。さっき道端で知らない男の人がコンタクト探してたんで、一緒に探すの手伝ったら、お礼だってくれたんですよ」
何ィ!!!


すると、銀さんが何故か過剰に反応し、それから新八君が持ってる結野アナのフィギュアを奪い取り、フィギュアを食い入るように見つめていた。...ちょっと怪しいんですけど。え、何、銀さん。もしかして、


「あのー、良かったら結野アナのフィギュアお譲りしましょうか?」
「え、マジで?本当にいいの?」
「はい、別にあたしはそこまで執着してないんで」
.......そこまで言うのなら、仕方ねー。うちに置いてやるよ
「え、何!そんなに嬉しかったの?!そんなに結野アナのファンなの!?
ー、良かったアル!」


あれだけさっきまで嫌そうな顔をしてたのに、結野アナのフィギュアをあげただけで置いてくれるの?マジで?ちょっとこっちがびっくりだよ。それだけでいいの?ねえ、あたし疑い深いからまだ信じられないんですけど

神楽ちゃんがあたしに飛びついてきて、新八君は「良かったですね。これからよろしくお願いします」とにこりと笑う。それから、銀さんは大事そうに結野アナのフィギュアを手に持ちながら、あたしに言った


「おい。置いてはやるが、自分の身くらいは自分で守れよ。あ、あとしっかりその分働いてもらうからな」


そう言った銀さんはあんまりキマッてはなかったけど(何せ結野アナのフィギュア持ってるし)それでもその言葉からは優しさが滲み出ているように感じた。あたしは少し感激して(っていうか、結野アナのフィギュアくれたおにーさんありがとう!)それから、頭を下げる


「はいっ、よろしくお願いします!」


あたし、は今日からこの万事屋にお世話になります!






⇒02






始まりました、銀魂原作沿い連載。とりあえずヒロインは万事屋のメンバーになれました。この先どう転がるかは空丘にも分かりません(コラ)

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