「命張って爆弾処理してやったってのによォ。三日間もとり調べ何ざしやがって、腐れポリ公」
「本当ですよね、全く」
「もういいじゃないですか。テロリストの嫌疑も晴れたことだし」
銀さんは苛立ちを我慢できずに警察署の看板を蹴り、あたしも銀さんの言葉にうんうんと同意していると新八君が宥めるようにあたしに言った。そう、あれから真撰組に捕まったあたし達は三日間も取調べを受けて、ようやく今解放されたところなのだ。...初めて警察署に入ったけど、いい思い出出来なかったよ。残ったのはトラウマじゃねーかよ、チキショー。...いけないいけない、言葉遣い直さなきゃ
「どーもスッキリしねェ。ションベンかけていこう」
「それやめてください。仮にも女の子の前で」
「よっしゃ。私、ゲロ吐いちゃるよ」
「それもやめて。女の子がそんなことしちゃダメだから」
「じゃあ、は何嫌がらせするアルか?」
「んー...どうしよっかな。あ、ひらめいた!誰かペンキ持ってない?あたし、この塀に落書きするよ!」
「器の小さいテロすんじゃねェェ!!つーか、ペンキなんてあるわけないだろォ!」
あ、やっぱり?いや、あたしもちょっと乗って言っただけですって。銀さんや神楽ちゃんは知らないけど、あたしはいくらむかついたからってそんなことやる人間じゃないから。...だから、本気でツッコまなくてもいいじゃんね。ペンキなんてあるわけないの分かってるよ...
「アンタらにかまってたら何回捕まってもキリないよ。僕、先に帰ります。ちゃんと真っ直ぐ家帰れよ、バカトリオ!!」
「ええ、それあたしも入ってるの?!」
よほどあたし達に呆れたのか新八君は怒って、あたし達を置いてずかずかと歩いていってしまった。いやー...しかしショックだな。ってか、悪ノリしちゃったよね、あたしも。あの温厚な新八君が怒るってことは相当性質悪かったんだろう。...今度から気をつけて、んでもって責任を持ってノリます
「オイオイ、ツッコミいなかったらこの話成立しねーぞ」
「はい、その点は心配要りませんよ!あたしがツッコミやります。ってか、あたし元々ツッコミでしょ」
「が?......しゃーねぇな。今回は俺がツッコミでいくか」
「え、何でそうなるんですか?今の間何だったんですか?っていうか、今あたしツッコんでますよね?」
「いや、いいんだよ。人間誰にだって向き不向きがあるさ」
「どういう意味ですか!」
全く。明らかあたしが銀さんにツッコんでるじゃないですか。それなのに何で認めてくれないの!え、そんなにあたしってツッコミ向いてなかったっけ?第一訓〜第三訓を思い返してみても、明らかにツッコんだ数が多いんですけど。え、何故?
...って、今何か液体が地面に零れ落ちたみたいな音が鳴ったのは気のせいじゃないよね?だって、何か異臭がするもん
「おまっ...どこにゲロ吐いて...くさっ!」
「神楽ちゃん、やめてって言ったでしょ!」
さて、今どういう状況なのか口で説明するのもあれだし、皆さんもお気づきだろうと思われるので、嫌な予感が的中した、とだけ言っておこう。...っていうか、本気でやるかフツー?神楽ちゃん、貴女ってコは...!
「ん?」
「!うわっ」
そこにピィィィと甲高い笛の音が聞こえて、何気なしに上を見ると、塀の上に男の人が立っていて、誰あの人とか思っていたら男の人は何とあたし達の方に向かって塀から飛び降りた。そして華麗に着地したと思ったら、運悪く神楽ちゃんの目の前に着地してしまったので(あえて言わないけど分かるよね?)足を滑らせて、後頭部をモロ地面にぶつけていて。今のガンっていう音かなり痛そうだったんだけど、大丈夫...かな?
「いだだだだだだだ!!それにくさっ!!」
やっぱり男の人は痛がっていた。そりゃ、そうだよね。思いっきり頭ぶつけてたし。かなり痛そうな音が聞こえたし。本当、この男の人って災難だなあとか思っていたらまた笛の音がして、見たら奉行所の人達が門から飛び出し、あたし達に向かって叫んだ
「オイ、そいつ止めてくれ!!脱獄犯だ、くさっ!!」
「はィ?」
「え、脱獄犯?!」
ちょっと何で脱獄犯がここに?!...って、ここにいるから脱獄犯なんだよね、と1人勝手に完結したあたしはばっと脱獄犯の方を見ると、脱獄犯の男の人は舌打ちをして立ち上がるとすぐさま神楽ちゃんの腕を掴み、反対の手を首に回す。そして、奉行所の人達を見て吠えるようにして叫んだ
「神楽ちゃん!!」
「来るんじゃねェ!!このチャイナ娘がどーなってもいいのか」
「貴様!!」
どうやら神楽ちゃんは人質にされたようだ。脱獄犯に人質を取られた奉行所の人達は下手に手が出せず、悔しそうな目をして脱獄犯を見た。奉行所の人達の動きを止めた脱獄犯はそれを確認し、それから銀さんに向かって言った
「オイ、そこの白髪。免許もってるか?」
「普通免許はもってっけど」
第四訓 自分ではそう思っていてもはたから見たらそうでないこともある
「なんでこ〜なるの?」
「...本当ですね」
あたし達は今拝借したパトカーに乗っている。人生初だよ、パトカーに乗るなんて。しかも、脱獄犯と一緒に乗るなんて夢にも思わなかったよ、全く。しかも、どこに行こうとしているのかはさっぱり分からない。それはあたしに限らず銀さんも行き先が分かっておらず、脱獄犯の言うとおりにハンドルをさばいていた(ちなみにあたしは助手席に座っていて、脱獄犯と神楽ちゃんが後ろに座っている。銀さんはもちろん運転席)
「...おじさーん。こんな事してホント逃げ切れると思ってんの?」
「いいから右曲がれ」
「逃げ切るのは難しいですよ。あの奉行所の人達のしつこそーな顔といったら」
「顔かよ。つーかアイツらがしつこいっつーのはお前より俺の方が分かってんだよ」
まあ、そりゃ確かに。脱獄犯のおじさんの方が奉行所の人達がどんな人なのかよく分かっているはずだしね。でも、結構しつこそーな顔してたよ。まあ、人を見かけで判断しちゃダメだって分かってるんだけど。...まあ、そんなのはどーでもいいけど、おじさん。神楽ちゃんがおじさんの腕にものっそいよだれ垂らしてるんだけど気にしないの?っていうか、神楽ちゃん爆睡じゃん。人質って立場分かってないよね、絶対
「今時脱獄完遂するなんざ、宝クジの一等当てるより難しいって」
「逃げ切るつもりなんてねェ...今日一日だ。今日一日自由になれればそれでいい」
銀さんの言葉(結構上手いこと言ってるよね、銀さん)におじさんは否定もせず静かに言うもんだから、後ろを向いておじさんを見ると、おじさんはふと窓の外を見てこう言った
「特別な日なんだ。今日は...」
おじさんのその言葉がやけに寂しく聞こえた
CCCCC
「みなさーん。今日はお通のライブに来てくれてありがとうきびウンコ!」
「とうきびウンコォォォ!!」
「今日は浮世のことなんて忘れて楽しんでいってネクロマンサー!!」
「ネクロマンサー」
「じゃあ一曲目『お前の母ちゃん何人?』!!」
舞台には髪を左に一つに結った可愛らしい女の子が1人いて、あたし達がいる客席には主に...言っちゃ悪いけどオタクっぽい男性がたくさんいて、とりあえず皆盛り上がっていた。湧き上がる歓声、胸に響くほどの大音量の音楽、華やかな舞台...これってもしかしてライブ?おじさんも神楽ちゃんも大声を出して叫んで盛り上がっており、逆にあたしと銀さんは呆然としていた。温度差が激しい
「オイ、。コレなんだよ」
「何かのライブ...っぽいですよね。でも、あの女の子の名前は分からないです」
「...なんだよコレ」
「今、人気沸騰中のアイドル寺門通ちゃんの初ライブだ」
「てめェェェ人生を何だと思ってんだ!!」
あ、銀さんがキレておじさんに踵落としを見事にヒットさせた。おじさんは白目を向いてその場に倒れたが、踵落としされて当然だと思った。今のあたしの気持ちは銀さんに激しく共感。本当だよ、全く。特別な日なんだ、って真剣に言うから何かと思ったらアイドルのライブですか。...脱獄してまでアイドルのライブに行くなんてあたしには到底理解できない
「アイドル如きのために脱獄だ?一時の享楽のために人生棒にふるつもりか。そんなんだからブタ箱にぶち込まれるんだ、バカヤロー」
銀さんが見下しながらそう言った言葉に、あいたたたと頭を擦りながら起き上がったおじさんが反論する
「一瞬で人生を棒にふった俺だからこそ、人生には見落としてならない大事な一瞬があることを知っているのさ」
おじさんが真面目な顔をしてそう言うから、このライブがおじさんにとってとても大事なものなのかなって少し思ってしまった。確かにあたしにとっては脱獄してまでライブ見に行くなんて馬鹿げた話だけれど、おじさんにとってはそうじゃないのかもしれない。だって、大切なものは皆それぞれ違うから。...バカだ、と決め付けるのはよくないよねなんて思ったりしたけど、おじさんは顔を変えていきなり叫びだしたのでやっぱりさっき思ったのを取り消すことにした
「L・O・V・E・お・つ・う!!L・O・V・E...」
...本当やってらんない。あたしはそう思いながら、銀さんを見ると銀さんも「何だコイツうぜー」と言ったような顔でおじさんを見ていた。それからふうとため息をついて、おじさんに背を向ける
「やってらんねェ。帰るぞ、神楽」
「はーい」
「え〜もうちょっと見たいんきんたむし」
「影響されてんじゃねェェェ!!」
「神楽ちゃん、そんなワガママ言わないノートラダムの鐘」
「お前も影響されてんじゃねーかァァァ!!何がツッコミだよ。結局俺がやってんじゃん!...ったく」
今のは確かに銀さんの方がツッコミだったね。いや、あたしもボケてるつもりはないんだよ。ただちょっと言ってみたかっただけ。本当それだけだから。別に神楽ちゃんのようにもっと見たいだなんて思ってないから
「...ほとんど宗教じみてやがるな。なんか空気があつくてくさい気がする」
銀さんはそう言って周りを見回しながら、通路に出たのであたしも後に続いた。確かに銀さんの言う通り、客はみんな熱狂的で頭に「お通ハートLOVE」って書かれたハチマキもつけてる人もいたりして、ここまで来たら宗教だ。イエス様ーみたいなノリの。それにやっぱり女性はすくなく男性の方ばっかりだからどこかむさいっていうか...
「もっと大きい声で!!」
と、その時こんな声が聞こえてきた。....あれ?この声どこかで聞いたことあるような。もしかして...と思って、その声の方を見てみると確かにあたしが思った人物と一致したけども、いやでもまさか。だけど自分の目でちゃんと見てるんだからまさかなんだよね、だからあたし驚きます。...って、ええ?!新八君!?
「オイ、そこ何ボケッとしてんだ。声張れェェ!!」
「すんません隊長ォォ!!」
「オイ、いつから隊長になったんだオメーは」
「俺は生まれたときからお通ちゃんの親衛隊長だァァ!!って...ギャアアアア銀さんとさん!?何でこんな所に!?」
「こっちがききたいわ」
ハチマキを巻き、ハッピのような服を着てていつもと違う気迫がある新八君に銀さんが声をかけると、新八君はあたし達に気づき、驚いたように一歩後ずさった。銀さんの言うとおり、本当にこっちが聞きたいよね。何で君がここにいるの、みたいな。しかも生まれたときからお通ちゃんの親衛隊長って...随分惚れ込んでるようだ
「てめーこんな軟弱なもんに傾倒してやがってたとは。てめーの姉ちゃんに何て謝ればいいんだ」
「俺が何しようと勝手だろ!!ガキじゃねーんだよ!!」
「や、まあそりゃそうなんだけど落ち着いて、新八君。あたしは別に好きにしたらいいと思う!」
「ちょっとそこのアナタ達」
銀さんの言葉に新八君はあまりにいかつい顔をして言い返したので、あたしは思わず新八君と銀さんの間に入り、とりあえず新八君にそのいかつい顔をやめてもらった。ってか、人ってこんなに変われるもんなんだと思っていると女の人の声がしたので、見ると中年のメガネをかけた女性があたし達の方に向かって階段を降りてきていた
「ライブ中にフラフラ歩かないで下さい。他のお客様のご迷惑になります」
「あ...すみません」
「スンマセン、マネージャーさん。俺が締め出しとくんで」
「やってみろや、コラ」
「あれ?あたし達、知り合いじゃなかったっけ?」
「ああ、親衛隊の方?お願いするわ。今日はあの娘の初ライブなんだから。必ず成功させなくては」
銀さんが新八君の発言にキレて、新八君の前髪辺りを鷲掴みにして引っ張っているのをよそに、女の人はふうとため息をつき、それから軽くメガネを上げながらこう言った(ザマスメガネってこういうメガネのことなんだね)それから女の人は何気なくあたし達から視線を外したかと思ったら、目を見開き驚いたようにある一点を見つめている。何見てるんだろ、とあたしもその方へ目を向けると、そこには大声で「L・O・V・E・お・つ・う」と何度も叫んでいるおじさんの姿があった
「.........!!アナタ...?」
女の人が驚いたように呟いた声に、おじさんは後ろに振り返る。それから女の人を見たかと思ったら、おじさんも同じく驚いたように目を見開き、じっと女の人を見つめた。しばらく2人はそのまま固まっていたので、無関係のあたしにもこの2人の間に何かあるということが明白だ
でも、この2人どういう関係なんだろ?
なんて思ってたら、あたしの目の前を通り過ぎて女の人がおじさんの方に近寄り、何かおじさんに言ったかと思うと、女の人はまたあたしの目の前を通り過ぎて、そのまま客席から出て行った。おじさんも何も言わずに女の人についていく
「...どうしたんだろ、あの2人」
ぽつりと呟くように言った言葉は大音量の音楽に掻き消されたので、返事はない。それは別にいいんだけど、さっきのあの2人の様子を見てたら何だかあたしまで気まずくなっちゃって、ふと周りに目を向ける。新八君は何事もなかったかのように親衛隊の隊長として隊員を仕切っており、神楽ちゃんはというとノリノリでライブを楽しんでいた。なので、これは知らない顔しといた方がいいのかなと考えていたら、銀さんがあたしの目の前を通り過ぎ、階段を上っていった。階段の先には出口があるので、銀さんは外に出ようとしているんだということは言われなくても分かる。あたしは新八君を見てから神楽ちゃんを見て、それから銀さんの後姿を見てうーんと悩んだ挙句、銀さんの後についていくことにした
CCCCC
客席の外に出て、ドアをぱたりと閉めるとさっきまでのお腹辺りにがんがん響く大音量の音楽がかすかに聞こえるくらいで、客席とは正反対に静かだった。そんな中、おじさんはイスに座り、その横で煙草を吸っている女の人と何か話していた(会話はよく聞き取れなかったけど)かと思いきや、女の人はおじさんを置いてどこか歩いていってしまったので、ぽつりとおじさん1人だけが残される。銀さんは女の人の姿を目で追っていき、見えなくなると今度はおじさんの方を見て真っ直ぐ歩いていった。あたしも後に続く
「ガム食べる?」
おじさんの横に座り、ガムをおじさんに向かって差し出した銀さんはもうすでにガムを口に入れていて、風船を作っていた。おじさんはそのガムを見て、フンと鼻で笑う
「んなガキみてーなもん食えるか」
「人生を楽しく生きるコツは同心を忘れねーことだよ。なァ、」
「ええ、まあそうですね」
ガムの風船が割れ、銀さんの口の周りにベタッとへばりつく。銀さんはそれを取りながら、試すように笑っておじさんに言う
「まァ娘の晴れ舞台見るために脱獄なんざガキみてーなバカじゃないとできねーか?」
「え、娘?...え、あのお通ちゃんってコ、おじさんの娘さんなんですか?!」
「...おめー話聞こえてなかったのかよ」
「いえ、全く。っていうか、銀さんってやっぱり地獄耳?」
「やっぱりって何だ、やっぱりって」
アイドル如きで脱獄なんて馬鹿げてると思ったし、今でもそう思っているけど、だけどそのアイドルが自分の娘ならそりゃ話は別だ。さっき、このライブはお通ちゃんの初ライブだって言ってたから、そりゃあ確かにどこの父親でも娘の晴れ舞台を見たいと思うのは当然だろう。おじさんの場合は脱獄してまでなんだから、相当娘さんのことを想っているんだ
「......そんなんじゃねェバカヤロー。昔約束しちまったんだよ」
だけど、おじさんは静かに否定した。それから天井を遠い目で見ながら、昔のことを語りだした。お通ちゃんがもう幼い頃歌の練習をしていた時、音痴だと声を上げて笑ったこと。それでもお通ちゃんは絶対に歌手になるって言い切ったこと
そして、お通ちゃんが歌手に慣れたら百万本の薔薇もって見に行くと約束したこと
「覚えてるわけねーよな。十三年も前の話だ。いや、覚えてても思い出したくねーわな」
おじさんは自分をバカにするように嘲笑いながら、こう言った。その言い方は当たり前だと思っているようでどこか強がりに聞こえて、それを聞いてあたしは何だか寂しくなってきた。そんなこともつゆ知らずおじさんはまた口を開く
「人を殺めちまったヤクザな親父のことなんかよォ。俺のおかげでアイツがどれだけ苦労したかしれねーんだから。顔も見たくねーはずだ」
「おじさん...」
確かにおじさんの言っていることの可能性は否定できない。何があって人を殺めたのかは分からないけど、お通ちゃんは常識的に考えて、苦労したと思うんだ。いっぱい嫌なこと言われて、いろんなことに耐えてきて今があるんだと思うんだ
でも
「...でも、おじさん。顔も見たくない、ってお通ちゃんに本当に言われたの?」
お通ちゃんがおじさんの顔を見たくないっていうのは、お通ちゃんにしか分からない。あたしにも分からないようにおじさんにも分からないから、そんな決め付けるのはまだ早いと思うのはあたしだけなのかな?
「...バカ野郎。確かに言われてはいねーが、思われて当然だ」
「だけど...!」
「......帰るわ。バラ買ってくんのも忘れちまったし...迷惑かけたな」
丁度銀さんが再び膨らましたガムの風船が割れたとき、おじさんはそう言って立ち上がり、銀さんとあたしに向かってそう言った。......迷惑をかけた、だなんて。確かに最初はそう思ったけど、今は全然迷惑だなんて思ってないよ、あたしはそう言おうとして口を開こうとした
「銀ちゃーん!!ー!!」
と、その時神楽ちゃんがあたし達を呼びながら、こちらに向かって走ってきているのが見えた。どうしたんだろ、と思ってあたしは神楽ちゃんに尋ねる
「どうしたの?神楽ちゃん」
「どした?」
「会場が大変アル。お客さんの1人が暴れ出してポドン発射」
「普通にしゃべれ。訳わかんねーよ」
何かお通ちゃんみたいな語尾にいらっときたのか銀さんは神楽ちゃんの顔をガッと掴んだ。神楽ちゃんはあんまり動じていないようだったけど、とりあえず語尾をつけるのはやめてちゃんと話し出す
「いや、あの会場にですね。天人がいたらしくて。これがまた厄介なことに食恋族...興奮すると好きな相手を捕食するという変態天人なんです」
「え、何それ?!...って、え、おじさん?!」
神楽ちゃんによると、どうやらその変態天人が会場内を暴れ回っているらしいとのことで会場内は今パニックになっているらしい。っていうか、何なのその天人!とあたしが驚いていると、神楽ちゃんの話を聞いたおじさんは一目散に会場へと走っていった。そうか、会場内にはお通ちゃんもいるんだと思い出したのは数秒後で、おじさんに続いた神楽ちゃんにあたしも続こうとしたら腕を掴まれた。誰かと思えば...銀さんだ
「え、何ですか?」
「、お前はちょっと花探して来い」
「はい?」
「頼んだぞ」
そう言って、銀さんはあたしを残して会場へと走っていった。残されたあたしはぽかーんとしてその場に立ち尽くす。何で花なんだろうと思ったけど、さっきのおじさんの話を思い出して、ああそっかと納得する。そうだ、おじさんはお通ちゃんにバラを百万本持っていくって約束したんだった
「けど、バラなんてどこ探してもないって!」
近くに花屋はないかなと考えてみたりもしたけれど、この辺りのことはよく知らないし(もっと言えばそんなお金ないし)だけど、他に花を手に入れる方法って...あるのかな?でも考えてる暇はない。早く探さなきゃ!
「花...花花花......あ..」
きょろきょろ周りを見回していて丁度窓の外へ目を向けたとき、外にある庭にあるものをあたしの目は捉えた。それはバラとは全然程遠くてどこにでも咲いているような花だけど、でも目を惹きつけるような眩しい黄色に、寒さにも負けない強い花
CCCCC
「...銀さん!!」
あたしが会場に行った時にはもうすでに天人は倒されていて、事はもう終わったようだった。あたしは親衛隊の男の人達を押しのけて銀さん達の方に駆け寄り、頼まれていたものを銀さんに差し出した。その正体はタンポポの花だ。いや、頼まれていたものとは違うけど、まあこれで勘弁して欲しいな、みたいな。百万本はさすがに無理だよ、3本しか見つからなかった
「...。でかした」
「え...あ、はい」
「おっさん」
銀さんはそう言って、あたしからタンポポを受け取ったかと思うと、舞台にいる袋を被った男の人(だと思う。体型的に)に向かってそれを投げた。あたしはしばらく考えて、あの袋を被った男の人はおじさんだと理解する(そういや着ている服同じだ)お通ちゃんと奥さんの間にいるおじさんがそれをしっかり受け取ったのを見て、銀さんは背を向けて、あたしや神楽ちゃん、新八君に帰るぞと促しながら言った
「そんなもんしか見つからなかった。百万本には及ばねーが後は愛情でごまかして」
あたし達が外に出てしばらくした後、おじさんも出てきた。おじさんがドアをバタンとドアを閉めたのを見て、銀さんは不敵に笑って言う
「よォ。涙のお別れはすんだか」
そんな銀さんの言葉におじさんは言い返す
「バカヤロー。お別れなんかじゃねェ。また必ず会いにくるさ...今度は胸張ってな」
そう言って袋を取ったおじさんはぼろぼろと泣きながら鼻水も垂らしてそりゃあヒドイ顔をしてたけど、ぎゅっと袋を握り締めるその拳は誓いの拳で、お通ちゃんは顔見たくないなんて思ってなかったんだと安心して、思わず顔が緩んでしまった
...早くお通ちゃんに胸張って会いにいける日が来るといいね、おじさん
⇒05
ヒロインは自分のことをツッコミだと思っているので、これからどんどんツッコむつもりでいます。ツッコミって重要ですよねと空丘もしみじみ思います。
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