「え〜続いてのニュースです。先日、来日した央国星のハタ皇子ですが、新設された大江戸動物園を訪れ〜」


今日は仕事もなくて休日(と本人が言ってるのだから休日だからね。信じてね。働いてないとかそんなんじゃないよ)特にやることはなく、新八君と一緒にモップがけをしてるんだけど、何気なしについていたテレビに目をやれば個性的な顔をした天人がコアラを抱いてご満悦そうにしているのが映っていた。央国星...どこかはよく分かんないけど動物好きな皇子がいるもんなんだね、と別に意味もなくあたしはそれを口にしたら、新八君は何故か苦笑していた


「...どうしたの?新八君」
「いや、あのバカ皇子と以前ちょっとあったんですよ」


そう言ってモップがけする手を止め、新八君はソファーで昼間からジャンプを顔に乗せて眠っている(ように思われる)銀さんに話し掛けた


「銀さん、銀さん。あの動物好きのバカ皇子、またこっちに来てたんスね」
「また...ってことはあの皇子、前にも来てたんだ?あとちょっと気になるのが、バカ皇子って何?ハタ皇子だよね?」
「本当バカなんですよ。会えば分かりますって。それにしても銀さん、ちょっと...きいてます?」


へえ、バカなのかあの皇子と思いつつちらっと銀さんの方に目をやれば銀さんはさっきまでかいてなかったのにいびきをかきだした。...新八君、たぶんこれはきいてないよと言おうとしたその時、ガラリとドアが開く。あ、買い物に行ってた神楽ちゃんが帰ってきた


「ただいまヨ〜」
「あ、おかえり」
「おかえり、神楽ちゃん」
「トイレットペーパー買ってきてくれた?」
「はいヨ」


モップをおいて新八君が神楽ちゃんの方に寄って、それから神楽ちゃんに今日特売だったトイレットペーパーを買ってきてくれたかと問うと、神楽ちゃんははいと新八君の差し出した手にトイレットペーパーを一つ置いた。あたしはそこで瞬時に理解できるほど、この万事屋に馴染めた気がする。うん。......また何か違うものを買ったんだね、神楽ちゃん


「...神楽ちゃん、あのさァ...普通何ロールか入ったやつ買ってくるんじゃないの。これじゃあ誰かがおなか壊したら対応しきれないよ」
「便所紙くらいでガタガタうるさいアル。姑か、お前!世の中には新聞紙をトイレットペーパーと呼んで暮らす貧しい侍だっているアル」
そんな過激派いないよ。誰にきいたの?」
「銀ちゃんが言ってたヨ」


新八君の言葉に神楽ちゃんは逆ギレ気味に言ってから言い合いが続く中、あたしは特に気にせずそれを聞いていた。だって、神楽ちゃんが買い物言った時にこんなことはよくあることだし。たぶん大方酢昆布に使ったんだとあたしは推測してるんだけど...って...あれれ?

カラン

あたしは持っていたモップを思わず落としてしまった。だって...あれえ?え、でも...ええ?ちょ、あたし夢見ちゃってるのかな?新八君と神楽ちゃんの向こうに何か大きな犬がいるよ?え、ぬいぐるみ?もしかして神楽ちゃんは酢昆布じゃなくて、この犬をトイレットペーパーの代わりに買っちゃったとか?え、あの正直今あたし頭混乱してるんですけど


「ダメだよ、あの人の言うこと信じちゃ、ん?」


あたしは自分の頬をぐいーっと引っ張ってみた。...痛い。これは夢じゃないんだよね。じゃあ、この犬は何だろうと考えていたら、新八君も何か違和感を感じたのか大きな犬の方を見る。それから定番のリアクションをとった


「ぎゃああああああああなにコレェェェェ!!」
「表に落ちてたアル。カワイイでしょ?」


新八君が驚きを隠せず動揺しているのに対して、神楽ちゃんは犬に近寄りその巨大犬の顎辺りを撫でながらそう平然と言った。犬は神楽ちゃんに撫でられて目を閉じて気持ち良さそうにしてる...ってことはこれは生きてるの?生き物なの?ぬいぐるみじゃないの?


「落ちてたじゃねーよ。お前拾ってくんならせめてみたいに名称わかるもん拾ってこいや」
事実かもしんないですけど、その言い方間違ってません?
「定春」
今つけたろ!明らかに今つけたろ!!
「これ...首輪に挟まってたヨ」


さっきまでソファーで寝ていたかと思ってた銀さんがあたしの隣に立って、頭を掻きながら巨大犬を見やり言った言葉に対してあたしはツッコミを入れたものの、それをフォローすることなく神楽ちゃんは巨大犬を『定春』と間髪入れず答えた。ちなみにそれに突っ込んだのは新八君(ちょっと出遅れちゃったよ)そんな新八君に神楽ちゃんは手紙のようなものを差し出し、それを新八君が受け取って内容を読み出した


「えーと...万事屋さんへ。申し訳ありませんがウチのペットもらってください」


...んー要するにこの犬は飼い主に捨てられたってことなのかな?まあ、まだウチにもらってくれるよう頼む辺りはやっぱり申し訳ないと思ってるんだろうね。けど、どうして飼えなくなったのかな?と手紙の続きを待ったが、新八君は手紙を見つめたままでそれ以上言おうとしない


「......それだけか?」
「(笑)と書いてあります」


しばらく待って、銀さんが新八君に聞いたところ新八君は正直に話す。...ってか、(笑)って。何でそこで笑うのさ?笑う必要あるの?


「笑えるかァァァァァァ!!(怒)」
「うわっ」
「ちょ、銀さん落ち着いて」


(笑)に対して(怒)った銀さんは新八君が持っていた手紙を思いっきり手で破りつけた。いや、怒る気持ちもよく分かるけどさ。確かに笑えないけど、まあ落ち着きましょうよと思って銀さんを宥めたけど効果はなく、銀さんは巨大犬の顔を撫でている神楽ちゃんに叫ぶように言った


「要するに捨ててっただけじゃねーか!!万事屋つったってなァボランティアじゃねーんだよ!!捨てて来い!!」
「嫌アル!!こんな寒空の下放っぽいたら死んでしまうヨ!!」


そんな銀さんの言葉に神楽ちゃんは負けじと言い返す。まあ、神楽ちゃんの気持ちも分からなくはないんだよね。そう思うと神楽ちゃんって優しいよなあとつくづく思う。犬と同じレベルは何か嫌だけど、あたしをここに置いてくれと頼んでくれたのも神楽ちゃんだし。...本当、いい子だよなあ


「大丈夫だよ、オメー。定春なら1人でもやっていけるさ」
アンタ、定春の何を知ってんの!?
っていうか1人じゃ無理だから、飼い主が定春をウチにもらってくれって頼んでるんでしょーが
「わかってくれるよな。定は...」


そう言って銀さんが定春を撫でようと手を伸ばしたそのとき


「「「あ」」」
「..いや、あの銀さん大丈夫ですかァァ!?」


気づけば銀さんの頭は定春の口の中だった(言い方おかしいかもだけどごめん。それしか言えない)





第七訓 捨て犬を拾えるような優しい心を忘れてはならない





「定春〜!!こっち来るアルよ〜!!」


というわけで(どういうわけなのかはつっこまないでね。空気読んで)場所は公園に移動。あたしは定春と追いかけっこをして楽しんでいる神楽ちゃんを眺めていた。いやあ、神楽ちゃん元気だなあ。しかもものすごく楽しそう。こうやってはしゃいでる神楽ちゃんを見てると、何か微笑ましいね。元気な女の子は可愛いと思う。まあ、それはともかく


「......いや〜スッカリなついちゃって。ほほえましい限りだね、新八君」
「そーっスね。女の子にはやっぱり大きな犬が似合いますよ、銀さん」
「...あのー2人とも大丈夫ですか?そんな遠い目をして」


あたしの横にあるベンチに座っている銀さんと新八君をどうにかしなきゃいけない。さっきから2人ともぼんやりした目でどこか遠いところを見てる気がする。...まあ、無理もない。定春に噛まれたりして2人とも心身共々疲れてきってるんだね。新八君なんて半ミイラ化だし、銀さんも頭やら腕やらを噛まれて包帯を巻いている。まあ、あたしはというと何でか知らないけど定春に噛みつかれず無傷でこうピンピンしてるわけなんだけども


「僕らにはなんでなつかないんだろうか、新八君」
「なんとか捨てようとしているのが野生の感で分かるんですよ、銀さん」
「なんでアイツにはなつくんだろう、新八君」
「なついてはいませんよ、銀さん。襲われてるけど神楽ちゃんがものともしてないんですよ、銀さん」
「なるほどそーなのか、新八君」


まあ確かに明らか定春が神楽ちゃんに襲いかかろうとしているけれど、楽しそうに笑いながら「じゃれるな、じゃれるな」といい、神楽ちゃんは定春の顔を手で抑えている。新八君の言う通り、神楽ちゃんがものともしてないだけだ。見るからに決してなついてるわけではない


「じゃあなんでは噛まれないのだろうか、新八君」
「それは僕にも分かりませんよ、銀さん。オスなんですかね?」
「なるほど、だとしたら定春は随分趣味が悪い
「口塞いでやりましょうか」


定春が何であたしに噛み付かないのかは分からないけれど趣味が悪いって何なのさとあたしが笑顔で手をグーの形にしたら、銀さんは「何でもありません」と黙りこむ。何でもないならいいんだけど、と思っていると、そこにさっきまで定春と遊んでいた神楽ちゃんが駆け寄ってきて、銀さんの隣に座った


「楽しそーだな、オイ」
「ウン、私動物好きネ」


隣に座った神楽ちゃんに銀さんが話し掛けると、神楽ちゃんは楽しそうな顔でそう言った。うん、確かに神楽ちゃんは動物好きそう、なんか。ってか無邪気で可愛いなあとつい思ってしまうよ


「女の子はみんなカワイイもの好きヨ。そこに理由イラナイ」
「そうだよね、神楽ちゃん」
...アレ、カワイイか?


神楽ちゃんの可愛らしい言葉にあたしはうんうんと頷いていると、銀さんはしばらく間を空けて言う。定春はサイズが大きいだけで見た目は可愛いですよとそれに対して答えようと思ったんだけど、その前にドドドドッと何か音がしてるのが気になり、その方を見てみると定春がこちらに向かって突撃しようと走ってきていた。...うーん、確かに今は可愛いとは言いがたいかもしれない


「カワイイヨ!こんなに動物になつかれたの初めて」
神楽ちゃん、いい加減気づいたら?
「って、わ!ちょ、神楽ちゃん大丈夫?!」


銀さんと新八君が立ち上がり、少しベンチから遠ざかった瞬間に定春がベンチに座っている神楽ちゃんごと突進して吹っ飛ばしてしまった。新八君の言うとおり、はたして神楽ちゃんが定春になつかれているのか疑問を感じるものの、とりあえずあたしは神楽ちゃんが怪我をしてないかどうか心配だったが、どうやら神楽ちゃんは大丈夫のようだ。むくっと起き上がり、傘を持ち直して神楽ちゃんが勢いよくこちらに走ってきたかと思えば、定春の顎を思いっきり蹴りながら昔話を始めた


「私、昔ペット飼ってたことアル。定春一号」


そして何故か俯き、悲しそうな表情をして話を繋げる


「ごっさ可愛かった定春一号。私もごっさ可愛がったネ。定春一号、外で飼ってたんだけどある日私どーしても一緒に寝たくて親に内緒で抱いて眠ったネ」
「神楽ちゃん...」
「そしたら思いの他寝苦しくて悪夢見たヨ。散々うなされて起きたら定春...カッチコッチになってたアル」
「「......」」
「うう、そんなことが...」
「って何でお前泣いてんのー?!」


神楽ちゃんの目にうっすらと涙が浮かび、それを拭う姿を見てたら...うう、あたし思わずもらい泣きしちゃったよ。ああ、神楽ちゃんの過去にそんなことがあったなんて...。可愛がってたペットが死んだらそりゃ悲しいよね、うん


「あれから私動物に触れるの自ら禁じたネ。力のコントロール下手な私じゃみんな不幸にしてしまう」


神楽ちゃんはそう言って、定春に近づき頭を優しく撫でる。神楽ちゃんの定春を見る目はとても優しいものだった


「でも、この定春なら私とでもつり合いがとれるかもしれない...コレ、神様のプレゼントアルきっと...」


そう純粋に信じる神楽ちゃんを見て、銀さんも新八君もそしてあたしも何も言えなくなった。やっぱり神楽ちゃんは本当に優しい女の子だと思う。力のコントロールが苦手なせいで、好きな動物に触れることも我慢して。本当は触りたくて仕方がないのに、手を伸ばすのを堪えて、ただ遠くで見てることしかできなかったんだね。そんな神楽ちゃんにとって、確かに異常にでかい定春がぴったりだと思うよ


「あ、酢昆布きれてるの忘れてたネ。ちょっと買ってくるヨ。定春のことヨロシクアル」
「オイ、ちょっとまっ...」


なんて思ったら、神楽ちゃんは表情をころっと変えて酢昆布へと話を持っていった。...本当好きなんだね。銀さんが止めようとしたのも聞いてないよ。酢昆布しか見えてないよ。...まあ、いっか。ちょっとだけだし、定春の面倒見てやるかと思ってあたしが定春の方を振り返った瞬間、いかに自分の考えが甘いことに気づいた

定春、すごく遊んで欲しそうな顔してるんですけど



「...あ、あの定春、えとってああああ定春待ってー!!!!」


「「ぎゃあああああああ!!!」」



あたしはおそるおそる定春に話し掛けると、定春は待ちきれんばかりに飛び出し、銀さんと新八君を追いかけ始めた。2人は悲鳴をあげて公園の外へと逃げる。あたしはというと、いきなり暴れ出した定春を追いかけていた。っていうか2人とも外に出たらヤバイんじゃないの?定春、この外出したら大変なことになるんじゃないの?ああ、ヤバイ。大変なことになってきたよ、コレ

とそのとき甲高いブレーキ音と何かがぶつかった大きな音が聞こえた


「銀さん!新八君!大丈夫ですか?!」


あたしは急いで公園の外に出てみると、前の道路に2人が無残にも倒れていて定春もぐったりしているのが見えた。え、何事?と視線を移すと黒い車と天人が2人ほどいる。もしかして銀さんと新八君と定春は車にはねられちゃったの?...っていうか、この天人見たことある。この人...バカ皇子だ。あたしは文句の一つでも言ってやろうと思って、バカ皇子の方に歩み寄った


「ちょっと何するんですか?貴方達!」
「ん?こっ...これはなんということだ]
「本当ですよ!人と犬をはねてただで済むと思ってるんですか?!」
「どうされた皇子、タイムマシンが見つかりましたか!!」
ちげェェェクソジジィ!!
タイムマシンがあるわけないでしょ、クソジジィ!!つーか話聞いてます?
「これを見よ!!これは...狗神!?なぜこのような珍種が...じぃ縄はあるか!?」
「人の存在無視しないで下さい。バカ皇子!」
「むっ、バカ皇子ではないハタ皇子だ」
「悪口しか聞こえんのか、この耳は!」


なんて言い合いしてる場合じゃない。とにかく銀さんと新八君は大丈夫かな?と思って、二人の方を見ると銀さんの手がかすかに動いた気がしたので銀さんはとりあえず生きてると安心しながら、あたしは新八君の横に膝をつき、新八君に声をかけてみたが、返事はない。...こりゃマズイ。早く救急車呼ばなきゃ。あ、でもあたしケータイ持ってないから公衆電話探さなくちゃ。公衆電話ってどこ?

っていうかアンタら定春に何してんの!?


「こんなことしていいんですか?私ら、ただのチンピラですな」
「これは保護だ。こんな貴重の生物を野放しにはできん!」
「ちょっとうちの定春に何てことしてるんですか!?」


ふと気づくと、定春は黒い車の上に乗せられていてバカ皇子の従者であるじぃが縄で定春を車にくくりつけていた。あたしがそう叫ぶと、バカ皇子は「早く行くぞ」とじぃを促し、車に乗り込もうとしているところを止めようとしたが間に合わずあたしの目の前で車のドアが閉まる。それと同時に車が発進した


「定春返してくださいよ!」


あたしは何も考えず車を追いかけ、その車に飛び乗ろうとしたが急に頭に重みがかかったため重心が前へと移動し、あたしはバランスを保てずそのまま前に倒れこむ。痛い。腕擦りむいたんですけど!一体何?!と思って頭を上げてみてみると、銀さんが定春の横にいた(つまり車の上に乗っていた)そしてあたしに向かって叫ぶ


、こっちは俺が何とかするから新八を頼む!」
「ええ、銀さん大丈夫ですか?!っていうか、今人を踏み台にしたでしょ?!


それに対する返事はなく、車はあたしから遠ざかっていく。あたしは立ち上がって、ゴミを落としながら新八君の方へ足を動かした。まあ銀さんだったら何とかしてくれるよね、踏み台にしたのは後で責めればいいよね、そんなことを思いながら銀さんに頼まれたため、あたしは新八君を病院に連れて行くことにした


「新八君、大丈夫?」
「...さん?」
「ちょっと待っててね。今から一緒に病院行こ」


それからあたしは近くを通りかかった人に救急車を呼んでもらって、新八君と一緒に救急車に乗って病院に行った。新八君は傷だらけだったが、左足の骨折だけで難を逃れたがとにかく大事をとって入院することになった

で、後から銀さんに聞いた話では、銀さんは定春を無事助け出したらしい。そして定春を万事屋で飼うことを認めたようだ。直接銀さんには聞いてないが、万事屋に戻ると幸せそうな顔をして定春と一緒に眠っている神楽ちゃんの姿があったのが何よりの証拠だ

良かったね、神楽ちゃん






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ヒロインは踏み台にされたことを忘れています。定春が何故ヒロインのことを噛まないのかは分かりません(コラ)意味分からないお話ですが一番空丘がそれをよく分かっているのであまりつっこまないであげてください(切実)




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