ちゃんは俺のことが好き、嫌いじゃない、好き、嫌いじゃ、あ、いたっ!」


朝の誰もいない教室にて。教卓においてあった花瓶にささっていた花を拝借して、窓際の誰かの席に座り乙女チックにその花で花占いをしていたら、脇腹を蹴られた。しかも結構痛い。誰だよ、俺の花占いを邪魔するヤツはと思って横を向くと、そこには呆れたような顔をした可愛い可愛い女の子が立っていた。そう、俺の大好きな彼女(になってもらう予定)のちゃん。花占いで気持ちが知りたかった張本人である


「何でアンタが花占いなんて朝っぱらからしてるのよ。しかも花占いになってないし」
「おはよー!ちゃーん」
「寄るな、変態」


こんな朝っぱらから2人っきりという美味しいシチュエーションに対して歓喜のあまり、腕を組みながら馬鹿を見るような目で俺を見下ろすちゃんに花占いを中断し抱きつこうとしたら、そっこー本日二度目の蹴りを食らう。プラス蹴られたその反動で窓ガラスに頭を思いっきりぶつけた。もちろんガラスは割れなかったからご安心を。ちゃんは優しいからきっと加減してくれたんだ


「それにしても何やってんのよ。これ、あたしが持ってきた花なのよ。せっかく後で職員室に持っていこうと思ったのに」
「え!ちゃん!誰にあげようと思ったの、この花」
「加納先生だけど」


普通に答えるちゃんをよそに、俺はショックを受けた。例えるなら隕石が地球に落ちて思いっきり大きな穴ができた感じのその衝撃に思わず俺はもう一度立ってちゃんの肩を掴んだ。ちゃんはめんどくさそうな顔をしていたが、俺はきわめて真剣にちゃんに尋ねる


ちゃん、もしかして加納センセが好きだったの!」
「......アンタ、めんどくさい男ね」
「なっ、否定しないってことは事実!?」
「あー言わなかったら良かった」
「ちょ、ちゃん考え直して!加納センセよりも俺の方が絶対カッコイイじゃん!」
「うわっ、ナルシスト」
「しかも俺の方が絶対にちゃんのこと幸せにできるって」
「だから、どさくさに紛れて抱きつこうとしないでよっ」


二度あることは三度ある。つまり本日ちゃんから3発目の蹴りを食らったということだ。3発目は今までと痛みが比じゃなかったから俺は思わず天に昇りそうになった。ああ、ちゃん、力を上げたんだね。俺を殴るためだけに力を上げたなんて俺は嬉しいよ。俺の為、なんて響きが良いんだろう

そう感動に浸ってたら、いつの間にかちゃんは姿を消していた。もしかしてもう加納センセとこ行っちゃった?俺はそう思って教卓の方に目をやるとちゃんが加納センセにあげると言っていた花(プラス花瓶)が消えていた。......くそー、加納センセにやられた。ちゃんって加納センセみたいなダンディな人がタイプなのかな?確かに加納センセは女子たちに人気あるけど











「俺の方がカッコイイじゃんね」
「俺に言うなよ」


納得がいかなかったので親友の南君に相談してみた。南君は今日は日直なので日誌を書きながら冷たい反応を示す。ちえ、親友が相談してるのに少しくらい親身になってくれても良いよね


「ちなみにお前のは相談じゃなくて自己主張だから」
「あ、もしかして心の声が出てた?」
「思いっきり声に出してたぞ」


いけないいけない。それはちょっと気をつけようっと。後々厄介なことになるかもだからね


「つーかお前、懲りずによくやるよな」
「懲りない懲りない。だって絶対ちゃんは俺に惚れてるもん」
「うわ、究極のポジティブ体質だな」


南君は日誌を書く手を止めて、感心したように俺に言う。懲りる...?いやー懲りない懲りない。だってちゃんが力を上げるのは俺の為なんだからね。俺はにへらと笑って否定した。そう、俺の長所はどんなときもポジティブなこと!でも、本当に脈ありだとは思うんだよね、うん

俺の言葉を聞いて、どっからそんな自信が沸いてくるのか分かんねえ、と呆れたように言いながら南君はまた日誌を書き出した。南君は丁寧な字ですらすら書いていく。南君と喋ることしか特に何もない暇人な俺はそれを目で追っていた。すると、頭をすぱーんと誰かに叩かれた


「わ、痛ーッ!誰!?ってちゃんじゃん!俺に会いに来てく」
「南、黒板消すの終わったよ。あと、辞書。次いるんでしょ」
「あ、か。ありがとな」


誰かと思って見てみれば、俺の愛しのちゃんじゃないですか。さっき俺を殴ったときに使われた凶器である辞書を持って、俺の近くに立っている。成る程、どーりで痛かった訳ね。それほどちゃんの愛がこもってるってわけだ

でも、つれないちゃんは俺を素無視して南君に話し掛ける。そして先ほどの凶器を南君に渡した。南君も俺には決して見せないようなスマイルでそれを受け取った。何、これ


「何だよう、南君のクセにちゃんから辞書借りて」
「その言い方こそ何だよ」
「アンタ、あたしが話し掛けた男にいちいち突っかかるのやめなさいよ」
「なっ、ちゃん!もしかして本当に好きなのは加納先生じゃなくて南君?!」
「...どーしてそうなるのよ」
「あ、良かった。いくらなんでも南君はないかー」
「おいっ」


うん、良かった良かった。さすがに南君はないか。超が何個もついても足りないくらいいいヤツだけどいいヤツで終わりそうだし。俺はほっと安心した。ということで、よーし、ここはちゃんにデートのお誘いをしてみるべきだよね。頑張れ、俺!


「って、あれ?ちゃんは?」
「教室出てったぞ」
「うそーっ?!せっかくデートのお誘いしようと思ったのにー」
「お前、今日部活あるのに何だと思ってんだよ」










ちゃんをデートに誘えなかったため、強制的に南君によって部活に参加させられた。準備体操してテニスしてミーティングで南君の話を聞き流して。そんなこんなで俺が帰宅を許された時にはもう辺りは真っ暗だった。俺は着替えて、南君に鍵よろしくと強制的に頼み、だるそうに鞄を持ちながら校門を出ようとした....そのとき俺のセンサーが急に反応しだす。これはもしかして...


ちゃん!」
「うわ、かなり気配消して歩いてたのに何で分かったの?」
「俺、ちゃんには敏感だから」
「意味分かんない」


がばっと振り向くと、ちゃんが本気で驚いたような顔をして立っていた。ちゃんも鞄持ってるし、きっと今帰ろうとしてるところなんだろう。俺がちゃんに近寄っていくと、ちゃんはうざそうな顔をした。うんうん、俺の愛はうざいくらい大きいことを分かってくれてるってことだよね


「っていうか、何で遅くまで残ってたの?」
「友達と野球部見てた」
「え!浮気?!」
「......やってらんないわ」


そう言ってちゃんは俺を置いてさっさと歩き出した。ああ、つれないなあ。っていうか冗談なのに。だって、ちゃんが好きなのはこの俺だから浮気だなんてありえないしね。でもちゃんのご機嫌を損ねてしまったというのは事実なので、俺はちゃんを追いかけてフォローした


「ゴメンゴメン。冗談だって。そんな怒らないでよー」
「......」
「大丈夫!俺、ちゃんと分かってるって!それに、俺だってちゃん一筋だし」


どさくさに紛れて言ってみたかったセリフを言ってみた。まあ本当のことだしね。俺、本気でちゃん一筋だから。これ譲れない。1億円あげるって言われたって絶対に強調するから

その言葉は少し効果あったようで、ちゃんは俺の顔を見た。そして、はあとため息をついた。おお、 許してくれたんだね。ちゃん


「愛し」
「つーか、アンタ。その言葉誰にでも言ってんの?」


とか思ってたら、ちゃんから痛恨の一言。...ぶっちゃけよくそんなこと言われます、ハイ。何か、俺男女問わず喋りまくっちゃうから軽い男だと思われてるんだよね。勝手に10股かけてるとか言われてるんだよね。ああ、悲し。そんなのは真っ赤な嘘で、10股どころか、正式にたった1人の大好きな人と交際できてないという、実は純情ボーイなんだよ、俺

というわけで


「とんでもない!どっからそんな噂が出てきたの」
「や、見た目から」
「がーん」


ちゃんにそう即答されて、俺の頭に岩が落ちてきた(想像上)あれだけ愛を主張してるのに、よりにもよってちゃんに信じてもらえてないなんて......!何だかショックだ。とてつもなくショックだ。俺はがっくし肩を落とした


「傷ついた?」
「深く傷ついた」


ちゃんが楽しそうに俺に聞いてくるのに対し、今度は俺が即答。うう、本当に深く傷ついちゃったよ!俺!滅多に落ち込まない俺がこんなにも落ち込んじゃってるよ。だって胃袋重いもん。何か鉛を体の中に取り込んでる感じ。うん、いい例えだ。まさにそんなか

........

...............え?


「え」


突然腕を掴まれ少し傾いた時に不意に頬に感じた熱。それは一瞬のことだった。俺は今さっき熱を感じた頬を思わず手で押さえ、変な声を出す。そしてちゃんの方を見てみたら、ちゃんは少し笑って「お詫びね」とだけ一言言って、スタスタと俺を置いて歩いていった

.....今の何だったんだろ

俺は呆然と頬を手で押さえ、ちゃんの遠ざかる背中を見ながら立ち尽くしていた。思考回路がショートするってこういうことを言うんだなとぼんやり思ってると、ちゃんは俺の方を振り返る。そして腰に手を当て、盛大にため息をついたかと思うと、ちゃんはこちらの方に歩いてきた


「何ぼさっとしてんのよ」
「...え、あ、うん」
「...そんなに驚かなくてもいいじゃない」
「まあ、そうだよね。でも、何か」
「何よ、アンタはもう知ってんでしょ」


一瞬何のことだかわかんなかったけど、すぐにピンときた。不敵に笑うちゃんの言うとおり、俺は知っている。俺はそれを聞いてとたんに超ハッピーな気持ちになって、先行くちゃんの元へ駆けていった。周りはもう暗いけど、俺の幸せオーラで明るくして見せようじゃないか。ああ、やっと来たよ、俺の春。ナイストゥミートゥースプリング。俺はお前を待っていた

ねえ、南君。やっぱり俺の直感は正しかったよ。そうだよね、そうそう。ありえないんだよ、そもそもさーちゃんが俺以外の誰を好きになるっていうんだよ


ちゃーん、愛してるよー!」
「やめて。恥ずかしいから」
「かーわーい」
「抱きつこうとするな、この変態」



愛してるぜマイハニー



愛してるから触れたくなるもんなんですよ。分かって、マイハニー




数年前に書いていたのが見つかったのでこの機会にUPしてみました。キヨって最終的にポジティブであってほしい。冷たくされるほど燃え上がるっていうか...別にキヨがMだとか一言も言ってませんが(ぇ)
20070618→修正:20090228


( ねー今度の日曜日俺とデートしようよー。いいでしょ? )