Lovely gemstone
最近、桂ことヅラは手土産を持参して万事屋に顔を出す。指名手配中の野郎が下手に出歩くなよという俺の優しい忠告も無視だ。今日も土産にんまい棒サラミ味を50本ほどもってやってきた。ちなみに今も俺の目の前に座って、空になった湯飲みに茶を注ごうとしている。って、オイ待てコラ
「おい、ヅラ」
「ヅラじゃない。桂だ」
「そんなことはどうでもいい。お前...」
「何だ?」
「湯のみが逆だ。そんなんじゃ、お前ェ手に茶がかかっちまうぞ」
あ、とマヌケな声を出し、ヅラは自分に持っている湯のみをマジマジと見た。明らかに茶を入れる気がないだろと思わずにいられなかったが、本人はどうやら気づいてなかったらしい。本当だ、と驚いたように言いながら(俺の方が驚くっつーの)湯のみをきちんと元に戻し、本来の使い道に直す。本当に何がしたいんだ、コイツ。って、オイ待てやコラ
「おい、ヅラ」
「ヅラじゃない。桂だ」
「そんなことはどうでもいいから。何、お前わざとやってんの?俺にそんなにつっこまれたいの?」
「何を言っている」
「お前、急須の注ぎ口を持ってどうする。お前ェマジで入れる気ねーだろ?」
あ、と再びマヌケな声を出し、ヅラは自分の持っている急須をマジマジと見た。明らかに茶を入れる気がないだろと完璧に思ったが、本人はまたしてもどうやら無意識のうちの行動だったらしい。本当だ、とさらに驚いたように言いながら(俺の方が何倍も驚くっつーの)急須を一旦置いて、本来注ぐべき注ぎ口から手を離し、本来持つべき取っ手を持った。...ヤツが一般人ではないことは知っていたが(指名手配中だという意味ではなく、頭の中身の話である)本当に何がしたいんだ、コイツ。って、
「オイィィィィ!!お前、明らか茶ァ入れる気ねーだろォォ!!!」
「え...うわ、あちっ」
オイオイオイ、何してんだよ。明らか湯のみに茶に入れるというより、机に茶をかけてどうするんだよ。俺は机においてあったふきんを零した箇所に投げつけ、すまないと言いながらヅラが慌てて茶をそのふきんでふいている。あーあ、勿体ねェな勿体ねェよ。茶、いくらすると思ってんだよこの馬鹿ヅラが
「...そういや、銀時。今日はお前以外に誰もいないのか?」
「お前、気づくの遅くね?遅いだろ、明らか」
「他の連中はどうした?」
零した茶を拭きながら、ヅラはふと気づいたように何気なく聞いてきた。今頃気づいたのかよ、と俺が思ったのは言うまでもなく、思わずツッコんでしまったのだが、ヅラはさらりと流して我を通す。俺は一瞬殴ってやりたい気持ちに駆られたが、ビークールと自分に言い聞かせて、質問に答えてやった
「新八は...あの、誰だっけな...ああ、そうお通とかいう女のライブに行っちまった。んで、神楽は定春の散歩がてらどっかで道草食ってるだろ?あとは買いも゛?!」
せっかく答えてやってるというのに、何故だか分からないがいきなりヅラにふきんを顔に投げつけられた。生温く、茶の匂いのするそれを顔から引っ剥がし、俺はヅラに怒鳴る
「って、何すんだよ?!人が喋っている間は静かに聞けって母親に習わなかっただろ!」
「その名を口にするな」
「......あ?」
しかし怒鳴りつける俺にびびることもなく、ヅラは低い声でそう言ったものだから怒りが削がれてしまった。何言ってんだ、コイツ。その名を口にするな?何だそりゃ
「誰の名だ?新八か?」
とりあえず最初に新八の名を挙げてみたが、ヅラは平然と湯飲みに茶を入れ直していたので、おそらく新八ではないだろう
「神楽か?」
次に神楽の名を挙げてみても、ヅラは平然と茶をズズッと飲んでいた。...ってか、何かムカツクのはどうしてなのか。糖分が足りねェよ、ったく
「じゃー。ってお前、きったねェな!!」
最後にの名を挙げてみたところ、ヅラは飲んでいた茶をお約束のように噴き出した。幸い俺にかからなかったから良かったものの、かかってたら瞬殺モノだぞオイ。...まあそれはともかく、口にされたくない名前ってのことか。何で...って、もしかして
「おい、ヅラ」
「ヅラじゃない。桂だ」
「しつけーな、お前。つーかの名前を口にするなってどいうこと?」
そんな予感はしたが、こんな堅物に限ってそんなことはあるめェと思ったが念のために聞いてみた。ま、ありえねー話だけど一応な。というわけで、ヅラ。分かりやすく簡潔に答えろコノヤロー
「その名を聞いただけで、不可解な現象が起こるからだ」
簡潔に答えやがってどうもありがとうコノヤロー。湯のみを机に置いて平然と答えやがった、コイツ。オイオイ、ありえねー話だと思ってたがもしかしてもしかするとありえるのかよ。イヤイヤイヤ、まさかな。...でも、一応確かめておくか、一応な
「おい、それってもしかして胸が締め付けられるーとかいわゆる思春期のアレか?」
「アレとは何だ?......胸が締め付けられるのは確かだがな」
「えぇェェェェェ?!まじでか?!」
「ああ、後は急に顔が熱くなったり、あの娘のことしか考えられなくなったり...」
オイオイオイオイオイ、ありえちゃったじゃねーか。っていうか、おめー真顔でよくそんなこと言えるな。もしかして酔ってんのか?...いや、酔ってはない。じゃあ何で素面でそんなことァ言えるんだ?普通素面じゃ言えねーよ、んなこと。......と、いうことは?
「お前、まさか気づいてねーの?」
「!貴様、俺の病気を知ってるのか?」
「病気じゃねーよ。......いや、ある意味病気だが」
「俺は何の病に侵されているんだ?!答えろ、銀時!俺には国を救うという大仕事があるんだ!」
「それマジで言ってんの?それマジボケ?俺、どうツッコめばいいわけ?」
「貴様、ふざけるな!俺は真剣だ!」
「おめーこそふざけてるじゃねーかよォォォ!!!!何が真剣だボケェェェェ!!!」
机をバンと思いっきり叩いて、ヅラは立ち上がって俺に向かって叫ぶように言うもんだから、どうしようかと思ってとりあえず茶化してみたところ、ヅラが馬鹿なことをほざいたので俺も俺とて言い返す。ってか、マジで頭空だな、コイツ。俺が呆れたのは言うまでもない。おめーの病は国を救えなくなるとかそういうことじゃねーよ。マジで気づいてねーのか、このヅラ小太郎
「...お前さ」
「何だ」
「の名前出しただけでよォ」
「その名は口にするなと言ったはずだ」
「いいから黙って聞けコノヤロー。いいか?アイツの名前を聞いただけで胸が締め付けられるとか、顔が熱くなったりとかするんだろ?」
「ああ」
「......それってただ単におめーがに惚れてるだけだろ?」
「何っ!」
俺が確信をつくと、ヅラはまるでいきなり雷を落とされたかのように驚いた(いや、実際そんな反応されて驚くのは俺の方なんだけど)ってか、マジで気づいてなかったよ、コイツ。何でそんな簡単なこともわかんねーんだよ。それって完璧思春期の醍醐味、恋じゃねーかよ
「そういえば...そうかもしれない」
「真剣な顔して言うな。つーか気づくのが遅ェ」
しばらく口を閉ざし、考え込んでいたヅラがやっと喋ったかと思えばこんな言葉。真顔で言うもんだから思わずツッコんじまったじゃねーかコノヤロー。そういや、さっきから俺ツッコミキャラじゃね?ツッコミしかやってなくね?
「ただいま帰りましたー!」
そんなことを思っていたその時。玄関のドアが開く音がして次に明るく朗らかな声が聞こえてきた。噂の張本人が帰ってきたようだ。ヅラはその声を聞き、ピシッと背筋を伸ばし、顔を引きつらせた。オイ、いい大人が惚れた女の声聞いただけで緊張してんじゃねーよ。これじゃ思春期の中学生じゃねーか
「銀さーん、聞いてください!八百屋のおばさんがご好意でじゃがいも一袋くれたんですよ。...って、あれ?桂さん、来てたんですね。こんにちわ」
「......」
ついさっきまで俺達が話していた内容を知らないは、八百屋のおばさんにじゃがいも一袋もらってご機嫌のようだった。じゃん、と袋の中からじゃがいもを取り出して俺に見せようとしたが、その前にヅラがいることに気づいたようで、は軽く笑って挨拶をした。見た目は大人、精神は思春期の中学生のヅラの返事はない
「......オイオイ、おめーいい大人が縮こまってんじゃねーよ。挨拶ぐらいしろっつーの。せっかくがしてんだろ?」
ったく、さっきの話をした後だからガラにもなく緊張してるのか?情けねー、好きな女に挨拶されたぐらいで。かと思いきや、はあと俺がため息を吐いたのと同時にヅラは立ち上がった(実は一回立った後さりげなく座っていた)それからくるりと方向転換して、の方にづかづかと歩み寄っていく。それからガシッとの手を掴み、両手で包み込む。はいきなりのヅラの行動に目を丸くした
「?桂さん」
「」
「はい?」
「俺はお前に惚れているようだ」
「...え?え?ほ、掘れ?」
「好きだ」
「はぁ?!なっ、何ですかいきなり」
「さっき銀時に言われて気づいたのだ。俺はに惚れていると」
「ちょ、な、何?え、銀さーん!どういうことですかー!」
「俺に聞くな、ボケ。つーかイチャつくんなら外でやっておくんなまし」
「ちょ、意味分からないんですけど...」
「そうか、邪魔したな。行くぞ、」
「な、え、どこ行くんですか?ちょ、銀さーん!桂さんが変ですよー!」
「ヅラは元から変だ。気にするな」
助けを求めるようには俺を呼んだが、そんなことおかまいなしといったヅラに連行されていた。の抵抗も空しく、ガラガラとドアが開き、ガラガラとドアが閉まった音がしたので、ようやく静かになったとほっとため息をつき、ジャンプでも読むかと俺は平穏を楽しむことに決めた。あ、言っとくけど俺んち放任主義だからそこんとこよろしく
...つーか、どーりでヅラが万事屋に顔出すわけだ
銀さん視点の桂さんのお話。限りなく馬鹿な桂さんが好きなのですよ(空丘が)とりあえず激しくくだらない話を書きたかった(コラ)
20071004
(...っていうか、桂さん。あたしのこと好き、ってどういうことですか?)