例えば、あたしが彼のことが好きだとしたら。大きく鼓動が乱れる理由も分かるし、優しくされたら嬉しいし逆にそっけなくされると傷つくことにも納得できる。彼と一緒にいる時間に幸福を感じることや彼が他の女のコと話していると嫌な気持ちになったりすることも含めて。それは認めざるをえないのだが、だからと言って彼のことが好きだと認めてしまうのは正直嫌だ。何故なら彼は性格はともかく見た目は超SSランクで絶えず女に言い寄られているからで。しかもそれが決まって美人さんや可愛いコばかり。容姿も性格も並なあたしが彼女達を敵に回したとしても勝算は皆無。負けず嫌いなあたしは負けると分かってる勝負は絶対にしないと決めてるのであって、となると彼を好きだと認めるわけにはいかないのだ


「お前、何飲む?」


それなのに一緒にパトロールをすることになったりして、揚句の果てには飲み物を奢ってくれると自販機のあるところにわざわざ寄ってくれるとかいう明日雨どころか飴が降ってきそうなくらい予想外の優しさにどうしてこんなにも無駄にときめいてしまうのでしょうか。あたしがミルクティーと言えば、ちゃっかり1番上の段の右から三番目にあたしのお気に入りのミルクティーがあるのに、んなもんねーよと勝手に抹茶オレのボタンを押すドSな彼が気にならないくらい。あたし抹茶苦手なんだけどと思ったが、あたしに抹茶オレを差し出す沖田隊長があまりにも眩しすぎて、素直にありがとうございますと手を伸ばす。今日はひょいっと避けられることもなくすんなりと受けとることができた。しかも今度は倍返しなという脅迫もない。それに沖田隊長が自分の飲み物を買う様子もない。......え、もしかしてあたしの為にわざわざ自販機寄ってくれたの?と込み上げてくる淡い期待


「飲まねーの?」
「の、飲みますっ」


それに加えて初めて奢ってくれたことに対する感動に泣きそうになったけど、あたしの顔を覗き込むように尋ねる沖田隊長があまりに煌めきすぎて逆に涙は出なかった。急いでストローをセットし、抹茶が苦手だということを忘れて一口。沖田隊長に見られてるおかげで抹茶の味に悲鳴をあげている場合ではない。それどころか独特の渋い甘みがとてもおいしく感じられるのは沖田隊長が横にいるから?どうやら沖田隊長と一緒にいると気だけじゃなくて味覚も変わってしまうらしい。恐ろしい沖田隊長マジック


「何ニヤニヤしてるんでィ」
「え!」
「間抜け面がさらに間抜けになってんぞ」
「そ、そんなことないですー」


ふい、と顔を反らしたのは別に沖田隊長の言葉にすねたからではなくて、ただ単に沖田隊長がかっこよすぎだから。人のことをけなすときの沖田隊長はどうしてあんなにも生き生きとして無駄に素敵なんだろうか。別にあたしはマゾではないと力の限り主張するけど、そんな時の彼はいつにもなく輝いている。例えば副長をいじってる時とか。そういえば一昨日副長の頭に思いっきり飛行機の模型をぶつけて、キレた副長から逃げているときのあの顔は忘れられないくらい輝いていてヤバイくらいカッコ良かったなぁ。そんなことを思い出しながら抹茶オレをもう一口。やっぱり沖田隊長が横にいたら......うん、いいね。なんて考えてるからニヤケ顔になってしまってるのだろうか。いけないいけない引き締めなきゃ


「つーかそれそんなにうまいわけ?」


と頑張って顔がにやけるのを堪えていたら、持っていた抹茶オレを奪われた。誰に?そりゃもちろん沖田隊長に。あたしから抹茶オレをひったくった沖田隊長は先ほどあたしが使っていたストローに何の躊躇いもなく口をつけるのを見て、思わず思考停止。......ええええちょっと待ってください。これって......これってもしかして、いやもしかしなくても、と頭の中でパニックになっていたので、正直沖田隊長の唇を凝視していたのに気付いていなかった。甘ェ、そう一言だけ呟き、ストローから口を離した沖田隊長はあたしの顔を見て少し眉を潜める


「何でィ、そんなに飲んでねーよ。ほら」


あたしが自分の抹茶オレが少なくなると目で訴えていると捉えた沖田隊長はすんなりあたしに抹茶オレを返す。少しほっとしたような、でも賎しいコって思われるのも嫌だなと複雑な気持ちになりながら、それを受け取った。でも......うん、やっぱりそれでいい。一人で勝手にドキドキしているあたしなんて沖田隊長は知らなくていい


「俺が飲んだ後飲めねーってか?」
「いやいや飲めます飲めます飲みます」


違う意味でこのストローじゃ飲めないとを躊躇っていたが、そう言われて勢いに任せてストローに口をつける。これが世間でい、いわゆるかんせつきすというやつですよね。と思ってしまったのは、ただ自分の首を締めるだけ。さっきよりも心臓がバクバクしてるんですけど。ありえないくらい心臓が音を鳴らしてるんですけど。どうにかしてほしいんですけど


「......ってさ」
「は、はいっな、なんですか」


あたしが抹茶オレの味が分からないほど動揺しながら飲んでいる様子を見ていた沖田隊長が口を開く。もしかしてあたしの心臓の音が聞こえたのかと馬鹿なことを本気で思うくらい焦ってしまって思わずどもってしまった。そしていつにもなく沖田隊長がじっとあたしの方を見てくるから...爆発寸前。この人はあたしを殺すつもりなのだろうかと思いきや、ふいと沖田隊長は視線を反らした


「やっぱいいや」
「え、何でですか。気になるんですけど!」
「また今度な」
「今度っていつですか!」
「今度は今度でィ。日本語弱いんじゃねーの、お前」
「いやいやいや沖田隊長、言い出してそれはないですよ」
「何お前、死にてーのか?」


そう言っていつも副長を陥れる策を思いついたときに浮かべる性質の悪い笑みをにやりと浮かべた沖田隊長を見て、何かえげつないことを言われそうだなと直感で思った。具体的に何言われるかは分からないけれどこれは部下の勘。これは聞かない方がいい、むしろ聞いたら...と怖くなってきたあたしはやっぱり遠慮しときますと小声で呟いた。それなのに沖田隊長ってば。そんなあたしを軽く無視して


「可愛いとこあんじゃん、お前」


しょーがねーなと自分が折れてやったように上から目線であたしにこう言い出すもんだから、本当どうしようかと思う。この人、間違いなくドSだ。あたしを殺そうとしているに違いない。しかも沖田隊長はあたしに聞こえないようにあえてぼそっと言ったんだろうけど、地獄耳のあたしには聞こえちゃったからね。「好きな男と間接ちゅーしただけであたふたしてるなんてよ」って。え、何確信犯?知っててあたしの抹茶オレに口をつけたわけ?それにあたし、沖田隊長のことが好きだと公言したことない以前に認めてませんよ?こんなドSで確信犯な沖田隊長、誰が好きだと...


、屯所戻んぞ」


......いや、もう潔く認めます。だってこんな無邪気に笑うなんて反則だよ。あたしギャップにめっぽう弱い女なんですけど。それに何であえてこの場で名前呼びなの?......あーもう!



やばいくらい沖田隊長が好きだ




ハローマイラブ
あたし、恋をしています
  




間接キスとか夢小説の定番なのにうちのサイトに置いていないことに気づいたので総悟君で書いてみました。彼は確信犯だと空丘は思ってます(偏見)ちなみに空丘は抹茶系好きです(だから何)




(  何か好きだと認めたら、ますますカッコよく見えてきたんですけど  )