こんなの少女漫画だけかと思ってた





ここまで自分をドキドキさせる人に会ったことないんですけど




あたしが大好きな少女漫画で超イケメン(死語)な男の子がヒロインの女の子を好きになって何かとつきまとっているお話がある。女の子は最初はげんなりしていたけれど、気付いたらその男の子が好きで好きで仕方がなかったという王道ラブストーリー。それを読んで、もしあたしがそのヒロインの女の子だったらいいのになぁとか今から思えば馬鹿なことを本気で思ったりしていた。むしろそんなカッコイイ男の子に言い寄られるなんて大歓迎だ。キザな台詞もそんなカッコイイ男の子になら一度でいいから言われてみたい。......とつい先日までそう考えていたが


「こんなところで会うとはやはり俺達は運命で結ばれてるんだな」
「......」


実際はすごく反応に困ることが判明して、初めのげんなりしていたヒロインの気持ちがものすごく分かる。今日はお妙ちゃんの家で色々女の子ならではのお喋りして、そろそろ夕飯の準備しなきゃということでお妙ちゃんにまたねと挨拶をして家を出たら、何故かそこには桂さんがいて。あたしを見るなりずかずかと近寄ってあたしの手を握り、真顔でそう言った。確かに桂さんは男の人の割には綺麗で整った顔立ちをしていてカッコイイと思うし、カッコイイ人にキザな台詞を言われたいと思っていたあたしだけど何て返したらいいのか分からない。とにかく掴まれている手から伝わってくる桂さんの温かい体温がこれ以上あたしの中に入ってくるのを阻止しようと必死だった


「......あの桂さんはどうしてここに?」


なのでスルーして話題を変えてみた。桂さんがパッとあたしの手を離してくれたので少しほっとしながらその問いの答えを待つ


「偶然だ。決してがここにいると銀時に聞いてが出て来るまで待ってたとかじゃなくて、本当に偶然通り掛かっただけだ」
「......」


......そうか、銀さんにあたしがここにいるって聞いたんだ。桂さんはまだ「本当にたまたま通り掛かっただけだ」と言い続けていたが、桂さんが嘘をつくのが下手なおかげで偶然ではないことを理解したがとりあえずそうなんですかと言っておいた。......銀さん、何で教えちゃうの?そりゃ銀さんにとっては面白いかもしれないけど...もう少しあたしのことを考えてくれてもいいと思う


「夜道は危ないから万事屋まで俺がついていこう」
「......はぁ」


確かに少し薄暗いがまだ明るい方だけどなぁと思ったけれど、桂さんがあたしの肩に腕を回して促してきたので断れるはずなく頷く。それからあたしの歩調に合わせて歩いてくれる桂さんの手が肩に乗せられてるから無駄に緊張する。......ていうか近くないですか?


「あ、あの......」
「どうかしたのか?」
「...いや、何でもないです」


少し不思議そうな顔をした桂さんからやや目線を反らして、やっぱり無理だと心の中で呟く。近すぎる、なんて言えない。桂さんはこう......有無を言わせない人っていうか...や、いい人なの。本当にいい人なんだけど


、楽しかったか?」
「あ、はい!楽しかったです」
「そうか、それは良かった」


あたしがそう言うと、何故か嬉しそうに小さく笑いかけてくれる桂さんはとても綺麗で、思わずドキッとしてしまった自分に酷く驚いた。今までは癒されてきたのに、今は少し違う。何だかくすぐったい。それは時々桂さんの綺麗で長い髪が時々頬を掠めていくからなのか


「カーツラァァァァ!!!!!」

些細な沈黙が流れようとしたが遠くの方からパトカーの警報の音が耳に入ってきたのに加えてその時いきなりこんな声が後ろから聞こえてきたので思わず後ろを振り向くと黒い服を着ている男の人がこちらにバズーカといういかにも平和を乱す武器を向けていて、その男の人の後ろには同じく黒い服を着た人がたくさんいた。サイレンの音が近くなる


「......これってもしかして」


真撰組ですよね?

と言う間もなく桂さんは舌打ちをしてあたしの手を掴んで走り出した。桂さんの引っ張る力は強く、今までにないほどあたしの足は早く動く。でも逃げなきゃヤバイ。桂さんは優しくていい人だけど見かけによらず指名手配犯なのだ。ここで捕まったら非常にマズイことになる


「ったく真撰組の奴。俺との時間を邪魔しよって。せっかく二人きりでいい雰囲気だったのに」
「桂さん、何でそんな余裕なんですか?!」


普段運動不足のあたしは正直すでにしんどくて、そう真顔で言える余裕な桂さんが信じられなかった。まぁ桂さんは慣れっこなんだろうけどあたしは初めてだよ。こうやって警察に追い掛けられるのなんて


「チッ」


後ろの状況を確認するベく桂さんはちらりと後ろを向いて顔色を変えた。え、何がと違うことを考えていたからかあたしは桂さんが足を止めたのをすぐ理解できず、桂さんに思いっきりぶつかってしまった。と同時に腰を掴まれたような気がして身体が浮いた

ドカーン

するとすさまじい爆発音が直接的に耳に入ってきて、鼓膜が震えすぎて痛い。それに微妙に生温く火薬の臭いがあたりを充満していて、視界を遮る煙が目に染みる。噎せてコホコホと咳を数回。煙がだんだん薄れて、視界が段々くっきりしてきたとき先程の風景と何か違うと違和感を感じ、そういえば地面の感触が違うことに気付く

.........あれ?何であたし


「民家の屋根の上に...?」
!!」


考えている間もなく桂さんに腕を引っ張られ、また身体が浮いたと感じたと同時に目の前の世界が下にズレる


「俺にしっかり捕まっておけ」


そう言われていきなり身体が揺れたので、何かに捕まろうとあたしは桂さんの首に腕を回してしがみつく......ん?桂さんの首に腕を回すって......


「ええええ桂さん!?」
「何だ?」
「いや、あのあたし......」


言ってみれば今は桂さんにいわゆるお姫様抱っこされている状態。あたしを抱えながら器用に屋根の上を走り、軽々と民家から民家へと飛び移る桂さんに降ろしてください、自分で走れますと言おうとしたがよくよく考えてみると、屋根の上を桂さんのように上手く走れるわけがないし、ましてや民家から民家へ飛び移るなんて不可能だ。ぐっとその言葉を飲み込んであたしは尋ねた


「あ、あたし重くないですか??」


......そう、実は1番気になっているのは上手く走れないとかじゃなくて自分の体重だった。とてもじゃないけど自分の体重を口に出してなんか言えない、それほどヤバイわけで。桂さんは男の人にしては華奢だから腕の骨が折れてしまうんじゃないかなぁと心配で


「何をこれしき。もっと重たくても受け止めてやる」
「え」
の愛なら重たくても問題はない」
「や、あたしの愛じゃなくてた......」


桂さんが余裕そうな顔をしたので案外桂さんって力あるんだなぁと軽く感動してたんだけど......いつからあたしの愛の話になったんだろう?激しく疑問を抱きつつ、否定した時に思わず体重という単語を口に出しそうになったのを押さえる。たぶん完璧に口にしたらあたしのハートはズタズタだ。桂さんはしばらく何のことだか分からないように不思議そうな表情をしていたが、突然思い当たったように言う


「ああ、気にするな。お前は全然重くない」
「......すみません」


何だか申し訳なくなって謝りつつも桂さんの言葉を聞いてほっとした自分がいたのは確かだった。......気を遣ってくれた桂さんは本当に優しい人です


「着いた。降りるぞ」


そんなこんなでいつの間にか万事屋にたどり着いたみたいで、桂さんはあたしを抱えたまま屋根から飛び降り、器用に玄関に着地した。そして、そっとあたしを降ろしてくれた。地面が足に着いた感じが伝わってきて安堵感を抱いたのは言うまでもない


「巻き込んですまなかったな」
「い、いえ、こちらこそありがとうございました......送ってくれて」


桂さんが申し訳なさそうに謝ってくれたのに対してあたしは思いっきり手を振ってお礼を言う。今回足を引っ張ったのは明らかあたしなのに、桂さんはそんなあたしを見捨てずにここまで連れて来てくれて。ありがとうございますという感謝の気持ちが伝わればいいなとあたしは桂さんを真っ直ぐに見た。すると桂さんはほっとしたように微笑んだ


「......ありがとう。やはり俺はに惚れて良かった」
「いや、あの、そ、それは」


いきなり爆弾きました。や、それって良いの?ていうかあたしにそんなこと言わなくてもいいのでは?...あー何かすごく恥ずかしいんですけど......!!

あたしは桂さんの言葉にかなり動揺してしまって気付かなかった。あたしに向かって伸びてくる手を。それに気付いたのはその手があたしの頬に触れたときで気付くのが遅かった


「またな、はにぃ」


手が触れた反対の頬に何か柔らかいものが触れた後に耳元でそう呟かれる。吐息がかかってくすぐったいのと同時に頬に触れた感触を思いだし、羞恥心が込み上げてくる。あたしは噴火した


「かかかかか桂さんんん!?!?!?」


あたしが変な叫び声を上げた時桂さんはすでにいなかった。大方また屋根に登って自宅へと帰られたのだろう

......ていうか何でさよならのキス的なものを?しかもはにぃって何?ハニーのことでしょ?何でそんな平仮名発音なんですか


「〜〜〜〜〜っ」


ツッコミたいことは山ほどあったけどとりあえず1番ツッコミたいのはドキドキしている自分だった



テキーラに恋をして

( ああ、顔が熱い。本気で燃えそう )


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皆様、叫んでいただけたでしょうか?(間違ってる)絶対桂さんはこんなこと言わないけど言いそう(どっちやねん)ハニーを平仮名発音する桂さんが書きたかっただけなんです