そもそも人を好きになるってどういうことなの





貴方はどうしてそんなに真っ直ぐなのか聞いていいですか




よく考えてみればあたしは恋をしたことがない。この歳にもなってと思われるだろうが、過去を振り返ってみても恋をKOIとあえてローマ字で書くとしたらkの縦線の半分すら満たないくらい始まってないわけで。そりゃ万事屋のみんなは大好き。銀さんも神楽ちゃんも新八君も好きだけど、そういう好きじゃないと思う。要するに恋ではないという話

...なんて今ちょっと恋愛ドラマを見てて思っただけです。ちなみに今日の万事屋のお仕事は銀さん以外ないので、神楽ちゃんと新八君の三人でのんびりソファーに座ってくつろいでいたりして。やることがないのでどうしてもお煎餅に手を伸ばす、すなわち間食がやめられない訳です。次回の予告を見ながらあたしはいけないと思いつつ、気付いたら手にお煎餅を持ってるんです。......ああ、ダメだよねあたし


ってヅラのことが好きアルか?」


ドラマのエンディングが流れ始めた時に一緒に見ていた神楽ちゃんがいきなりあたしの心を読んだようなことをさらりと聞いてのけたので、あたしは食べていたお煎餅を喉に詰まらせる。思わずゴホゴホとむせていると大丈夫ですかと隣に座ってた優しい新八君が背中を摩ってくれた。あたしは涙目になりながらもちゃんと飲み込む。神楽ちゃんはそんなあたしを余所にお煎餅を一口で食べていた


「......いきなり何、神楽ちゃん。そんなわけないじゃないっ」
「ということはヅラの一方的片思いってことになるネ」
「いや、そんな大層な」
「だけど桂さんの好意は明らかですよ。さんのことが好きで仕方がない、みたいな」
「いやいやいや、ていうかやめよーよその話」


何故か神楽ちゃんも新八君も楽しそうに言うもんだから、あたしは何だか恥ずかしくなって照れ隠しにリモコンをテレビに向けて電源を切りながらその話を強制終了させる。二人ともそういう話題が好きなのか、えーとつまらなさそうな顔をしたのを見て、あたしは念押しをするように「とにかく違うからね」と二人に主張した。神楽ちゃんがつまんないとボソッと呟いたのが聞こえたのはあえてスルー。本当、違うからね。桂さんは好きだけど、そういう好きじゃないと思う。それは真剣な話で、桂さんへの『好き』は銀さん達と似てる気がするから

そうだよ、と自分に言い聞かせながら残りのお煎餅を口に入れる。するとピンポーンと玄関のチャイムがなったので出なきゃと立ち上がったが、新八君の方が一足早く、はーいと返事をしながらバタバタと玄関の方へ言ってくれたので、あたしは新八君に任せてまた座り直した。あーいうのは新八の仕事アルと毒舌な神楽ちゃんに苦笑していると


さん、桂さんがいらっしゃいましたよ」


ドキリ。新八君が口にした名前に。......ていうか桂さん、また来られたんですか。最近万事屋に顔を出す率が高くなってる気がするんですけど...!噂をすればとニヤニヤ笑う神楽ちゃんにとりあえず「本当に違うからね」と何が違うのかは正直自分でも分からなかったがとりあえず三度目の否定をしておいた


、元気していたか?」


ああ、ダメだ。桂さんが新八君の後につづいてひょっこり顔を出しただけで。心臓がバクバクいってる。昨日もその前の日もそのまた前の日も会ったじゃないですかというツッコミをする余裕すらなくなるくらいに


「ゆっくりして行って下さいね、桂さん。僕は今日買い出し当番なんで行ってきますんで」
「ああ」
「え、新八君?」
「私、近所のガキと遊ぶ約束してたの思い出したヨ。ちょっくら行ってくるから留守番頼むネ」
「ええええ神楽ちゃんまで。ちょっと待ってよ!!」


じゃー行ってきまーすと元気よく言う二人にあたしの声が届くはずもなくガラガラとドアが閉まる音がする。......ああ、何で二人とも行っちゃうの。どうしてあたしと桂さんを二人きりにさせるかな......!


「と、とりあえず座ってください」


未だ二人が台風が去ったように出て行ったことに対してポカーンとしてる桂さんに座るように促したあたしは桂さんがソファーに座ったのを見て、立ち上がる。それにつられて桂さんがあたしを見上げた時にちょうど目が合ってしまって色々と大変です、あたし。色々ともたなくて不自然に目を反らしてしまった


「あ、お、お茶入れますんで」
「いや、いい」
「でも」
「そんな気を遣わなくていい。座ってくれ」
「......はい」


逃げる口実がなくなったあたしが桂さんに逆らえるわけもなく、またソファーに腰を下ろした。気まずくて桂さんの顔が真っすぐに見れないし、沈黙が尚更気まずすぎる。治まれ、あたしの心臓という願いに反して鼓動が速くなるばかり



「は、はい......」


桂さんに名前を呼ばれるとどうしても構えてしまう自分がいる。銀さんや神楽ちゃん、新八君に名前を呼ばれても別にどうもしないのにそうなるのは桂さんだけだ。何でだろう、誰か教えてください。かなり切実なんですけど


「今日もお前に会いたくなった」
「(え、いきなりですか!)」
「何故だと思うか?」
「(あたしに聞かないで下さ......!!)」


何故だと聞かれても桂さん自身が分からないんだからあたしが分かるはずない。本当、勘弁してください。......ていうかあたしは自惚れたくないんです。桂さんの気持ちが嘘だとかそんなんじゃなくて、あたしは自惚れる自分が嫌なんです。そこまであたしは


「......大層な人間じゃないですよ」


ぽつりと零した言葉が本音であったことに気付いたのは桂さんが少し驚いたような顔をしたのを見てからだった。だけど後の祭りであたしの言葉はもう消せない。気まずい空気が流れるのはあたしのせいだ。でもこれはずっと前から思っていたことだった


「......すみません」


だから訂正する気にはなれなかったので違う言葉でごまかした。顔もあげられず、あれ、どうしてあたしが謝ってるんだろうとは一切考えない。膝に置いた手をぎゅっと握りしめる。でも無理だ、本音が零れそう


「......いや、。お前の今の本音が聞きたい」


桂さんが静かに言った言葉にそっと顔をあげる。桂さんのそのあたしの心を見透かしているような柔らかな眼差しがあたしのど真ん中を射抜く。真剣だけど優しさが滲み出てる桂さんに今ならあたしが何言ってもいいような気がして、気付けば口にしてた


「......あたし、全然可愛くないし、別に何の取り柄もないですよ」


さすがに本音は目を見て言えなかったけれど、あたしは別に特に可愛いってわけじゃないし、料理もできないし、何の才能もない。それに比べて、桂さんは空気読めないけどそれをカバーできるほど素敵な人だ。好きだと言われる前は本気で尊敬してたし、今ではガラガラとそのイメージが崩れたわけですけどそれでも尊敬は消えていない


「.......桂さんがどうしてあたしにそう言ってくれるのか分からない......です」


言ってしまった、一番の本音。そんな素敵な人がどうしてあたしなんかを好きになるのかあたしには全然分からないんだよ。あたしのどこに桂さんが好きになってくれる要素があるの?桂さんにはもっと素敵な人の方がお似合いだと思う。あたしなんかじゃ無理だ


「......


桂さんはあたしの本音にどう思うのだろう、何だか今更怖くなって桂さんの顔が見れない。、もう一度名前を呼ばれる。どうしよう、あげた方がいいのかな。でも、と迷っていると三度目が聞こえる。......さすがに三回も呼んでくれたのであげなきゃ、そう思ってあたしは恐る恐る顔をあげ.........

ん?


「えええええどこからそんなお面を?!」


顔をあげ、桂さんを見て驚くのは正直自分でも無理はないと思う。そして何か脱力してしまった。だって何か知らないけど桂さんがエリザベスのお面を被っていたのだから。......ていうかそのお面どこで手に入れたんだろうとか何で持ってきてるんだろうとか今の流れでこれはおかしいでしょうとか色々言いたいことはあったけど


「お面じゃない。エリザベスだ」


お面を外した桂さんが真剣にそういうので思わず声をあげて笑ってしまった。ああ、本当におかしい。さっきまでの空気が嘘みたいに和やかなものに変わり、あたしも何だか張り詰めていたものが緩んだような気持ちになる


「......それだ」
「.........何がですか?」


桂さんがさっきのような優しい目をして言ったので、あたしは笑うのをやめて尋ねると、桂さんは微笑んだ。男の人なのに綺麗という形容詞がよく似合う、それくらい綺麗に。心臓がいつもと違う音を立てた気がした


「俺はお前の全部が好きだ」
「え」
「だが特に好きなのは笑っている時だ」


桂さんは言う


「お前ほど笑顔が似合うやつはいない」


......うわー桂さんは大物だ。さらりと言っちゃったんですけど......!またいつもと同じようにドキドキして顔が熱くなってきた。ああ、どうしよう。ものすんごく恥ずかしい、それこそ穴に入りたい気分だ。何て返したらいいのか分からない。ねぇ、こう言うときって何て言ったらいいの?


「......信じてくれるか?」


あたしはその問いに頭を抱えて悩んだ揚句、桂さんがあたしから何気なく目線を反らした時にそれはそれは小さく頷いた...のを桂さんに気づかれてないといい


テキーラに恋をして

( っていうか思ったんですけど釣り合わないとか考えてる時点で... )


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シリアスをぶち壊す桂さんが書きたかったこのお話。桂さんは策略家と見せかけて天然だといいなという妄想込みです。えへ(笑って誤魔化し)